Russian Offensive Campaign Assessment, October 7, 2024, ISW ⬇️
※記事サムネイル画像:ウクライナ軍参謀本部のFacebook投稿添付画像より
ロシア側石油施設に対するウクライナ軍の攻撃、ほか
◆ 戦争研究所(ISW)報告書の一部日本語訳
ウクライナ軍は10月6日から7日にかけての夜に、ロシア占領下クリミア、フェオドシアにある石油ターミナルを攻撃した。10月7日付ウクライナ軍参謀本部報告によると、ウクライナ軍はロシア占領下フェオドシアの石油ターミナルを攻撃し、その結果、施設の周囲で火災が起きたとのことだ。また、ウクライナ当局が現在、施設に与えたダメージを精査しているところであることも、ウクライナ軍参謀本部は伝えている。ウクライナ軍参謀本部はまた、フェオドシアに被占領下クリミアで最大級の石油ターミナルが存在していることと、ロシアがこのターミナルを用いて、石油から製造される物資をロシア軍に送っていることも伝えた。フェオドシア市占領当局の市長イゴール・トカチェンコは石油貯蔵施設で火災があったことを認めたうえで、そのことで石油流出は起こらなかったと主張した。クリミアに焦点を当てている情報筋の一つは、ロシア軍がフェオドシアの石油ターミナルを守るために、2024年6月にパーンツィリ-S1防空システムを1台、展開させたと主張した。10月7日に公開された動画に、おそらくフェオドシアの石油ターミナルのものだと考えれらる火災の様子が映っている。
ウクライナ最高会議[国会]人権問題全権ドミトロ・ルビネツは10月7日に、ウクライナ人戦争捕虜に対してロシア軍が行う法にもとる虐待や処刑の新たな事案に対して、ウクライナ当局が現在、調査を進めていることを報告した。ロシア軍がドネツィク州ニウ・ヨルク付近で非武装のウクライナ人戦争捕虜3人を拷問したうえで処刑した様子を空から撮影した最近の動画を受けて、ルビネツ全権が国連と赤十字国際委員会に書簡を送ったことを、同氏は伝えた。この動画は10月6日にニウ・ヨルク地域で行動中のウクライナ軍旅団が公開したものだ。この動画によって、ロシア軍統帥部の最上層部が、ウクライナにおけるロシア軍の戦争犯罪を許容している模様であることが浮き彫りにされていると、ルビネツ全権は指摘した。戦争捕虜の待遇に関するジュネーブ条約は、戦争捕虜に対する「身体の切断、残虐行為、拷問」を禁じており、それに加えて、戦争捕虜、あるいは、負傷して明らかに戦闘不能になったとみなされる者を処刑することも禁じている。ウクライナ武力紛争下犯罪対策局のユーリー・ビロウソウ局長は10月4日に、ウクライナ側情報源が記録した証拠によって、ロシア軍が全面侵略開始以降、93人のウクライナ人戦争捕虜を戦場で処刑したことが分かり、記録されている事件の80%が2024年に起きたことが分かると指摘した。ビロウソウ局長は10月5日に、これらの戦争犯罪が組織的なものであり、ロシア当局がこれらの戦争犯罪を明らかに大目に見ていることを指摘している。ISWはウクライナ人戦争捕虜を処刑する映像やそれに関する報告を以前から大きく取りあげており、前線のさまざまな地区でウクライナ人戦争捕虜へのロシア軍による虐待が広がる傾向を確認している。このような行為は、明示的に許可されていないとしても、個々のロシア軍司令官によって許容されており、ロシア軍野戦指揮官たちは虐待行為を罰してこなかった模様だ。
10月7日にロシア国営メディアのインフラに対して「前例のない」サイバー攻撃が行われたことを、ロシア当局が発表した。全ロシア国営テレビ・ラジオ放送会社(VGTRK)は、詳細不明の実行者による「前例のない」攻撃によって、VGTRKのオンライン・サービスが一晩中ハッキングされたことを伝えた。また、政府寄りロシア報道メディア「ガゼータ・ルー」は、この攻撃によって、ロシア国営テレビ・チャンネルの「ロシア1」「ロシア24」「ロシア文化」「カルーセル」の放送が停止し、およそ80局の地方テレビ・ラジオ会社の放送も停止したことを報じた。ガゼータ・ルーは、ロシア情報セキュリティ分野の情報源の見解を引用するかたちで、ウクライナとつながりがあるとされている「sudo rm -RF」というハッカー集団が、今回のサイバー攻撃を実行したと報道した。(このグループの名称はファイル削除を指示するLinuxのコマンド名に由来している)。ウクライナの報道メディア「ススピーリネ」は、独自の情報筋からの話を引用し、「sudo rm -RF」が事件への関与を認めていることを報じ、攻撃によってバックアップ・データすべてが消去されたと、VGTRKの従業員がこぼしていることも報じた。情報セキュリティの専門家はガゼータ・ルーに対して、このハッカーが使ったウィルスは、ただファイルを暗号化してしまうものではなく、ファイルを削除してしまう種類の暗号化ウィルスだった可能性が高いと語り、VGTRKは、これからシステムのバックアップを復元することに加え、脆弱性の穴を閉じることを行う必要があると警告した。なお、VGTRKの主張によると、攻撃されたけれども、VGTRKのシステムは大きな損害を被っておらず、システムは今も通常通り運用されているとのことだ。クレムリンのドミトリー・ペスコフ報道官はVGTRKへの支援を表明し、今回のサイバー攻撃をロシアの重要インフラへの攻撃とみなした。
※ISWが参照している情報源を確認したい場合は、報告書原文の後注[1]~[14]に記載されたURLにアクセスしてください。
◆ 報告書原文(英文)の日本語訳箇所