Russian Offensive Campaign Assessment, October 11, 2024, ISW ⬇️
クルスク州内でのロシア軍反撃の激化
◆ 戦争研究所(ISW)報告書の一部日本語訳
ロシア軍は10月10日の夜頃以降に、以前から続けているクルスク州からウクライナ軍を追い出すための取り組みを強化した。ロシア軍は最近、クルスク州内でウクライナ軍が形成した突出部の内側へとさらなる前進を続けている。また、同軍はそれと並行して、グルシュコフスキー地区[Glushkovsky Raion]でウクライナ軍が形成した小突出部をほぼ完全に排除した模様だ。入手した情報によると、ロシア軍は10月10日の夜に、グルシュコフスキー地区、コレネフスキー地区[Korenevsky Raion]に位置するウクライナ側主突出部の左翼、スジェンスキー地区[Sudzhansky Raion]に位置するウクライナ側主突出部の右翼において、同時並行的に反撃を激化させたとのことだ。10月10日に公開された撮影地点特定可能な動画によって、ロシア軍が最近、クレミャノエ[Kremyanoye](コレネヴォ[Korenevo]から東の方向)中心部に進出したこと、ゼレニー・シュリャフ[Zeleny Shlyakh](コレネヴォから南東の方向)の北側郊外に進出したこと、リュビモフカ[Lyubimovka](コレネヴォから南東の方向)付近のウクライナ軍展開地点を包囲したことが分かる。ロシア軍事ブロガーの主張によると、コレネフスキー地区で行動中のロシア軍はオルゴフカ[Olgovka](コレネヴォから東の方向)とニジニ・クリン[Nizhny Klin](コレネヴォとリュビモフカから南東の方向)を掌握し、トルスティ・ルグ[Tolsty Lug]とノヴォイワノフカ[Novoivanovka](双方ともにコレネヴォから南東の方向)まで前進したとのことだ。また、ロシア軍が大隊規模の機械化部隊攻撃と主張される攻撃を行い、リュビモフカ付近のウクライナ軍防衛網を突破したと、ロシア軍事ブロガーは主張している。
ロシア軍が最近、この地域で大隊規模の機械化部隊攻撃を実行したこと、あるいは、集落をどれか一つでも奪還したことを裏付ける情報を、ISWは現状、確認していない。ロシア軍がリュビモフカとトルスティ・ルグでウクライナ軍を包囲したと、ロシア軍事ブロガーは広く主張した一方で、ロシア軍がコレネフスキー地区でウクライナ軍を最大で2個大隊、包囲したという見解を示した軍事ブロガーもいる。けれども、クルスク州内でウクライナ軍部隊が一つでも包囲されたことを裏付ける情報を、ISWは確認していない。また、ロシア軍第155海軍歩兵旅団(東部軍管区[EMD]・太平洋艦隊)と第810海軍歩兵旅団(南部軍管区[SMD]・黒海艦隊)の各隷下部隊が、上述のコレネフスキー地区で激しい反撃を遂行していることが伝えられている。
ロシア軍事ブロガーの主張によると、スジャンスキー地区で行動中のロシア軍がマルティノフカ[Martynovka]とミハイロフカ[Mykhailovka](双方ともにスジャ[Sudzha]から北東の方向)の付近でウクライナ軍防衛網を突破したとのことだ。また、ロシア軍事ブロガーは、ロシア軍がマラヤ・ロクニャ[Malaya Loknya](スジャから北の方向)から北の方向で、縦深2km分前進したとも主張した。そして、ロシア軍がプレホヴォ[Plekhovo](スジャから南東の方向)付近のウクライナ軍展開地点を包囲しているとも、ロシア軍事ブロガーは主張している。ロシア軍事ブロガー・アカウントの一つは、第155海軍歩兵旅団隷下部隊がスジャ北西側郊外にまで前進したと主張したが、クレムリンに後援されている有名軍事ブロガーの一人は、この主張を否定した。10月10日夜にこの地域でロシア軍の反撃激化が始まって以降、スジャンスキー地区におけるロシア軍の前進を裏付ける情報を、ISWは確認していない。スジャンスキー地区のおける激しい反撃を遂行している部隊として伝えられているのは、第810海軍歩兵旅団、第40海軍歩兵旅団(EMD・太平洋艦隊)、第11空挺(VDV)旅団、第1220自動車化狙撃連隊(おそらくは動員された部隊)、詳細不明のチェチェン・アフマト部隊の各隷下部隊である。
10月10日と11日にロシア軍がグルシュコフスキー地区の大部分の地域からウクライナ軍を追い出したと、ロシア軍事ブロガーは主張したが、このロシア軍の前進を裏付ける映像・画像情報を、ISWは今のところ確認できていない。ロシア軍事ブロガーによると、グルシュコヴォ[Glushkovo]から南の方向で行動しているロシア軍はヴェセロエ[Veseloye]からウクライナ軍を追い出し、メドヴェジェ[Medvezhye]付近で前進し、スーミ州と接する国境に近づいたということだ。ウクライナ軍が保持できているのは、クラスノオクチャブルスコエ[Krasnooktyabrskoye]付近とノヴィ・プチ[Novy Put]郊外(双方ともにグルシュコヴォから南の方向に位置しており、スーミ州との国境に近い)にあるわずかな陣地のみだと、ロシア軍事ブロガーは主張した。また、グルシュコフスキー地区におけるウクライナ軍攻勢遂行は失敗に終わったと、ロシア軍事ブロガーは宣言している。2024年9月11日にウクライナ軍はグルシュコフスキー地区へ進攻する地上攻撃を始めたが、その前日の2024年9月10日にロシア軍はクルスク州内での反撃を開始している。そして、ウクライナ軍は今までのところ、この地区で大きな足場を築くことができていない状況だ。グルシュコフスキー地区において激しい反撃を遂行していると伝えられている部隊は、ロシア軍第155海軍歩兵旅団、第1434アフマト"チェチェン"連隊、第56VDV連隊(第7VDV師団隷下)、第83VDV旅団、第106VDV師団の各隷下部隊である。
※ISWが参照している情報源を確認したい場合は、報告書原文の後注[1]~[12]に記載されたURLにアクセスしてください。
ロシア軍が反撃を激化させた目的が、2024年秋季と2024~2025年初冬の好ましくない気象条件が戦場での軍の行動を制約してしまう前に、クルスク州からウクライナ軍を押し出そうとすることにある可能性は高い。[. . .]
ロシア軍統帥部が、優先度の高いドネツィク州での攻勢作戦のために自由に使える戦力を確保し、ウクライナ軍の侵攻が惹起した戦域全体にかかる作戦上の圧力を緩和する意図で、クルスク州からウクライナ軍を迅速に押し出そうとしている可能性は高い。[. . .]
◆ 報告書原文(英文)の日本語訳箇所
クルスク州方面 戦況地図(戦争研究所)