Russian Offensive Campaign Assessment, November 20, 2024, ISW ⬇️
ロシア・ウクライナ両軍の戦術的適応と戦術のイノベーション
◆ 戦争研究所(ISW)報告書の一部日本語訳
ロシア軍もウクライナ軍も、2022~2023年冬季以降、作戦レベルの機動戦を好ましいかたちで遂行できずにいる。その原因は、昔ながらのドクトリンがもたらす制約とリソース面での制約にある。しかし、双方ともに戦場において、戦術的な教訓を得ること、戦術を適応させて革新していくことを、互いに続けている。この状況は、現下の戦争がダイナミックな性質を帯びていることを浮き彫りにしている。ウクライナ軍ミサイル・砲兵部隊副司令官セルヒー・ムシエンコ大佐は、ウクライナ・メディア「RBKウクライナ」の11月18日付記事のなかで、ロシア軍が戦線の一部地区で砲弾不足に陥っており、ソヴィエト時代の122mm・130mm榴弾砲を戦場にますます投入していることを伝えた。ムシエンコの指摘によると、ロシア軍は砲兵と指揮組織を戦線上に分散配置し始めたとのことで、その理由は、ある一つの地区に装備を集中させて、ウクライナ側からの攻撃に対する脆弱性を増すことを避けるためであるという。ムシエンコはまた、ロシア軍が攻撃戦術を変えつつあることも指摘した。彼によると、ロシア軍は1~2名というごく少数の兵士を掩蔽された地点まで走らせ、その後、それらの兵士たちを集結させて、連携させたうえで、続く突撃を行わせているとのことだ。ロシア軍はまた、装甲車両・バイク・全地形対応車(ATV)・バギーを使って、ウクライナ側陣地にすばやく接近し、小火器による戦闘に巻き込もうとしていると、ムシエンコは述べている。また、ロシア軍の砲撃における適応に関しても、ムシエンコは指摘している。彼によると、ロシア軍は、偵察用ドローンと同国占領下クリミア駐留のイスカンデル・ミサイル発射部隊で構成される偵察打撃複合体[Reconnaissance-Strike Complex]の編成を進めているとのことだ。この偵察打撃複合体は、ザポリッジャ方面に位置する目標を、20~30分以内に特定し、攻撃できるという。
ニューヨーク・タイムズ(NYT)紙は11月20日にウクライナ軍指揮官の発言を報じており、それによると、ウクライナ軍は、ムシエンコが概説したロシア軍の状況とは対照的に、継続的な砲弾不足に直面しており、その結果、前線でのロシア軍の進撃を抑え込むために、ドローンに極度に依存することがますます増えているとのことだ。なお、ロシア側損失の80%以上が、ドローン攻撃によるものであるという。NYT紙は、ロシア軍が滑空爆弾を用いて、ドローン運用小チームを目標に攻撃してくると、ウクライナ軍ドローン操縦士と同軍の小隊指揮官が語っていることを伝えている。なお、ロシア軍がウクライナ軍陣地に接近して小火器による戦闘を行うのを防ぐために極めて重要なのが、ウクライナ軍の火砲と攻撃型ドローンだと、ムシエンコは指摘している。
ウクライナ軍のドローンを用いた軍事行動は、ロシア軍の機械化機動戦を制約する面で極めて重要な役割を担い続けており、ロシア軍の進撃速度を人力で移動するペースに遅らせ、ウクライナ軍に持続するマンパワー不足を、ロシア軍が全面的に活用することを妨げているという評価分析を、ISWは最近示した。ロシア軍もウクライナ軍も現代の戦場に作戦レベルの機械化機動戦を再導入する方法を見出せていないにもかかわらず、前線での戦闘の進捗度合いは激しいままで、前線は依然として流動的である。両陣営における戦場でのイノベーションと適応は、今後も引き続き現代戦を新たなものにしていくことになるだろう。
※ISWが参照している情報源を確認したい場合は、報告書原文の後注[14]~[17]に記載されたURLにアクセスしてください。
◆ 報告書原文(英文)の日本語訳箇所