本記事は、戦争研究所(ISW)の2023年11月03日付ウクライナ情勢評価報告の一部を抜粋引用したうえで、その箇所を日本語に翻訳したものである。また、使用した地図は、ISW制作地図(インタラクティヴ・マップ含む)とGoogle Maps画像である。ただし、一部、加筆加工してある。
アウジーウカ方面のロシア軍動向
日本語訳:
ロシア軍は11月3日もアウジーウカ周辺で攻勢作戦を続けた。また、同軍がアウジーウカ方面北翼で前進したことが確認されている。11月3日投稿の動画で、撮影地点の特定ができるものによって、ロシア軍がアウジーウカ北方の鉄道線に向かって、クラスノホリウカ(アウジーウカ北方4km)の南西で前進したことが分かる。ウクライナ軍参謀本部の報告によると、ウクライナ軍はアウジーウカ周辺での抵抗を続けており、17回を超えるロシア軍の攻撃を撃退したとのことだ。なお、ロシア軍の攻撃地点は、ステポヴェ(アウジーウカ北方3km)付近、シェヴェルネ(アウジーウカ西方6km)付近、トネンケ(アウジーウカ西方7km)付近、ペルヴォマイシケ(アウジーウカ南西11km)付近だったと報告している。ウクライナ軍タヴリーシク部隊集団報道官オレクサンドル・シュトゥプン大佐はその後に、アウジーウカ周辺で活発な交戦はなかったが、ウクライナ軍はこの地域での「情勢が悪化する」ことを予期していると語った。アウジーウカ市軍政当局の長であるウィタリー・バラバシは、ロシア軍がアウジーウカ内のウクライナ側陣地に激しい砲撃を加えており、この都市の北方と南方で歩兵戦闘が続いていると述べた。ロシア軍事ブロガー・アカウントの一つは、11月3日時点でロシア軍がアウジーウカ南東のどこかの地点で前進していると主張した。11月2日と3日、複数のロシア側情報筋は、ノヴォカリノヴェ(アウジーウカ北西8km)に向かって、ロシア軍がクラスノホリウカの北方及び西方とステポヴェ付近で前進したと主張し、また、ロシア軍がヴェセレ(アウジーウカ北東4km)付近でウクライナ軍防衛網を突き抜けて押し進んだと主張した。複数のロシア軍事ブロガーの主張によると、アウジーウカ・コークス工場付近、アウジーウカの南側及び南西外周部付近、オピトネ(アウジーウカ南方4km)付近で戦闘が続いているという。ロシア軍はアウジーウカ地区での前進予定地点のすぐ後方で、防御陣地の迅速な構築を進めており、そうすることで、ロシア軍は予備戦力をよりすばやく戦闘投入できるようになっていると、ウクライナ人軍事ウォッチャーの一人が指摘している。
ロシア軍がアウジーウカ周辺で3回目となる、より規模の大きな攻撃の準備を進めていることを、ウクライナ当局者とロシア側情報筋の双方が伝えた。バラバシは、ロシア軍がアウジーウカへの第3次大規模攻撃のために兵力と装備を集結させつつあるところだと述べたうえで、同軍はアウジーウカ北のアウジーウカ・コークス工場に攻勢作戦の重点を置くことになる可能性が高いと指摘した。ロシア軍事ブロガー・アカウントの一つは、アウジーウカ周辺のロシア軍は戦術レベルの再編成を行っていると主張し、バラバシ同様、次に可能性のあるロシア軍攻勢作戦の目標としてアウジーウカ・コークス工場を強調してあげた。ここ数日間の豪雨が終わり、アウジーウカ方面の大地が乾いた時点で、ロシア軍はより規模の大きな新規攻勢作戦を開始することになるだろうと、バラバシは述べている。
ヴフレダル方面でのロシア軍動向
日本語訳:
11月2日、ウクライナ軍はヴフレダル付近でのロシア軍機械化部隊による攻撃を撃退した。11月2日公開の動画で、撮影地点の特定ができるものに、ミキリシケ東側外周部でのロシア軍攻撃時に、同軍装甲車両の隊列をウクライナ軍が打撃する様子が映っている。ウクライナ軍が先ごろ、数十両のロシア側軍用車両を破壊し、ヴフレダル付近でのロシア軍の攻撃を食い止めたと、11月3日にシュトゥプンは語った。ウクライナのヴォロディーミル・ゼレンシキー大統領は11月2日に同趣旨の発言をしている。ゼレンシキーによると、ウクライナ軍はおおむねヴフレダル方向でなされたロシア軍の攻撃を撃退し、ロシア軍はその攻撃の間に数十両の軍用車両を失ったとのことだ。