上記リンクは、米国議会調査局によるウクライナ軍が抱える問題に関するレポート(“Ukrainian Military Performance and Outlook”, 01.12.2023)です。
ごく短い報告書ですが、ウクライナ軍が抱えている問題、とりわけ人的課題に関して重要な指摘しています。
ここ最近、ウクライナ軍の人的不足(もしくは人的問題)が報じられることが増えてきたように思われますが、この問題は単純な兵力不足という問題に収まるものではありません。
この報告書が指摘するウクライナの問題点は
戦争初期に動員した軍務経験・戦闘経験のある退役兵を消耗してしまったこと
専門的知識・技能を有する下士官団が存在しないこと
訓練された参謀将校が不足していること
にあります。
なお、興味深い指摘として、戦争初期時には、過去に戦闘経験のある兵士の存在が、プロフェッショナルな下士官が少ないことを補っていたという指摘があります。ですが、その経験豊富な兵士も消耗している現在、プロフェッショナルな下士官を育てることの重要性が、ウクライナ軍内で増しています。
このようにウクライナ軍は質の面での人的課題を抱えているわけですが、その課題に戦況がウクライナ軍に与える影響も重なります。報告書は次のように述べています。
さらにウクライナ軍が抱える人的問題は将校にも及んでいます。将校の能力不足は、ウクライナ軍の部隊運用能力に直結します。この点について報告書は次のように指摘します。
なお、指揮の「中央集権」化に関して、報告書は次の指摘もしています。
この報告書では、もちろん人的問題以外に関しても取り上げており、例えば装備に関して、ウクライナの西側供与兵器への過度な依存を取りあげています。ウクライナが国内で兵器生産を増やすことができればよいのですが、当然のことながら困難です。ですので、西側諸国はウクライナへの支援を継続する必要があります。
ですが、仮にウクライナへの兵器支援が順調に進んだとしても、人的な問題が解決しない限り、ウクライナ軍が優位に立つことは難しいでしょう。報告書はウクライナ軍に関して、次のように締め括っています。