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日本を出て10年、「日本人であるということ」を振り返る
日本をでてかれこれ10年。
日本が、また自分の生まれ故郷が窮屈で仕方がなく、国外へ飛び出したのが10年前。しかし、本当に人生灯台下暗しと言いますが、日本を出て初めて、日本という国のありがたさを感じました。
ブラジル、ドイツで10年のうち半々ほど暮らしてきましたが、差別にあったことは一度たりともありませんでした。ただの一度もです。
むしろ「日本人です」というだけで、好意をあらわにしたり、関心を寄せてくれる人は数知れずいました。特にブラジルは、25万人におよぶ日本人移住者が並々ならぬ努力で築いた信頼と地位のおかげで、親日家が大変多い国です。海外旅行もろくにしたことがなく、おっかなびっくりやってきた当時の自分を、現地の方は温かく迎え入れてくれました。
日本に帰省すると、「日本はもうだめ」「希望がない」などという声を身近な人々からも聞くのですが、他国からみればどっしりとした経済大国であり、エキゾチックな魅力を持つ「行きたくてもなかなかいけない国」であることに変わりはないのです。
信頼を後世へつなげる
だからといって、「恵まれててよかった」という話ではありません。
この世界的信頼を、後世につなげていくにはどうすればよいかを考えるのが、日本人として生きている私たちの役目だと思っています。
国外在住者としていつも心に留めているのは、私は私という個人であると同時に、日本国の代表者であるということです。
別に、大使館や領事館に勤めているわけではありません。
しかし、世界に国という仕切りが存在している限り、他国の人間が私という人間を認識する時、おそらくトップ3に入るのが「日本人」という属性です。
国外で、その国の住人に対して無礼な立ち居振る舞いをすれば、私という人間の評価はもちろん、日本の評価も下がります。逆に、私が誰に対しても公平に接し、勤勉であれば、「やっぱり日本人は礼儀正しくて真面目だね」と、日本の良いイメージをさらに強化していけます。
日本には「旅の恥はかきすて」というようなことわざもありますが、「恥」の中身はよく吟味しなくてはいけないと思うのです。自分がいかに、日本という国に守られているかを、国外に住む時や旅行に行くときは、しっかり認識しておきたいと思っています。
国に守られている証拠の一つが、まさに「世界最強のパスポート」という点でしょう。227の国と地域のうち、191カ国にビザフリーで入国できてしまいます(ヘンリー&パートナーズ社発表グローバルパスポートランキング)。例えば私の友人にエチオピア人がいますが、彼が自国のパスポートで” 顔が利く” のは、わずか40カ国・地域です。世界で活躍したい人材にとっては、このようなことが大きな障壁になってしまいます。
日本人の仕事っぷり
今、私は日系の商社に勤めており、ヨーロッパ各地の取引先やビジネスパートナーと日常的にやり取りをしていますが、正直、日本人の働きっぷりは類をみません。とにかく、「あてにしても大丈夫」という信頼感抜群です。
それも、国外に出てから実感するようになったことです。というのも、ヨーロッパの企業の多くは、「私生活優先」なので、仕事と遊びのメリハリがあるという意味では健全ですが、裏を返すと仕事の比重は低めだからです。担当者が休暇に入ると、2週間ほど案件が停滞してしまうのは日常茶飯事です。普段の業務においても、かゆいところに手が届かないといいますか、何かと中々思うようにはいかないので、一種の「あきらめ」があると、ストレスが少なくてすみますよ、という感じです。
日本人は世界的にみて良質な労働力だと言われますが、それを日々実感しています。
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日本人であることは、世界という舞台で武器になります。
水戸黄門の印籠に少し似ているかも、などと思ったりします。
でも日本人はシャイで、外国人慣れしていないので、外国人を相手にするとひるんでしまったり、逆に日本の常識で判断してしまったりすることもあると思います。それがもったいないので、日本への恩返しと国際化促進のため、本業の傍ら海外進出サポートを始めるに至りました。
日本がもっともっと世界へ出ていくこと、
次世代へ世界からの信頼をつなげていくこと、
そこに貢献することが、私の目標です。