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忖度

察しの神様

ある星には、「察しの神様」がいた。察しの神様は、人々の心の奥底にある感情を読み取り、相手の立場に立って物事を考えられるようにする能力を持っていた。

ある日、察しの神様は、ある会社にやってきた。その会社では、上司が部下に「察して欲しい」と要求することが多く、部下たちは上司の心の内を常に読もうと必死になっていた。

察しの神様は、ある若者を観察した。若者は、上司のちょっとした言動から、上司が何を望んでいるのかを察しようとしていた。しかし、上司の本当の望みは、若者が自分の考えを率直に述べてくれることだった。若者は、上司の気持ちを察しすぎて、自分の意見を言えなくなっていたのだ。

察しの神様は、若者に語りかけた。「相手の立場に立つことは大切だ。しかし、相手の気持ちを察しすぎるあまり、自分の意見を言えなくなるのは良くない。相手の気持ちを理解した上で、自分の考えを率直に伝えることが、真のコミュニケーションだ」

若者は、察しの神様の言葉を聞き、ハッと気づいた。そして、上司に自分の考えを正直に伝えた。上司は、若者の正直な言葉に感心し、二人の関係はより良好なものとなった。

しかし、別の部署では、察しの神様が恐れていたことが起こっていた。ある社員が、上司の顔色をうかがい、上司の意に沿うように不正な行為を働いたのだ。その社員は、「上司の気持ちを察して行動した」と自己正当化していた。

察しの神様は、嘆息した。「相手の気持ちを察することは、素晴らしいことだ。しかし、自分の価値観を捨てることと、同義ではない。相手の気持ちを察した上で、自分の価値観に基づいて行動することが大切だ」

察しの神様は、人々に「察し」の大切さを教え続けながら、こう考えた。「察し」は、人を繋ぐ素晴らしい力だ。しかし、「察し」が、人を縛りつける力になってしまってはならない。

解説
この物語は、現代社会で問題視されている「忖度」について、ユーモアとSF的な要素を交えて描いたものです。

  • 察しの神様: 少し変わった存在を設定することで、物語にSF的な要素を加えています。

  • 複数の視点: 若者、上司、そして察しの神様という複数の視点から物語を描くことで、多角的な視点から「忖度」について考えさせます。

  • 教訓: 物語の結末で、察しの大切さと同時に、自分の価値観を大切にすることの重要性を示しています。

この物語を通して、読者は「忖度」とは何か、そして「忖度」がもたらす良い面と悪い面について深く考えることができるでしょう。

#パンダ大好きポッさん