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好きなことをして生きる。
「私情は挟むな!」と、ロボットみたいな上司が言う。だが、俺たちは感情の生き物だ。好きなものは好きだし、嫌いなものは嫌い。嬉しい時は笑うし、悲しい時は泣く。憎い奴には腹を立てるし、愛する人には優しくする。
もし、好きで嬉しくて愛でる気持ちだけがあれば、きっと人生はもっとシンプルになる。そう思った男は、ある日突然、会社を辞めた。そして、小さなカフェを開いた。
カフェには、男が好きなものだけを置いた。コーヒー豆は、世界中から取り寄せた最高級のもの。ケーキは、男が子供の頃から大好きな、お母さんの手作りレシピ。
お客さんは、最初は少なかった。だが、男の作るコーヒーとケーキは、本当に美味しかった。そして、男の笑顔は、本当に温かかった。
少しずつ、お客さんは増えていった。そして、カフェは、街の人気スポットになった。男は、毎日、好きなことをして、好きな人たちと過ごした。そして、毎日、心から笑った。
ある日、男は、カフェの常連客に言われた言葉を思い出していた。「好きなことをして生きるには、誰にも好かれていなければなりません」。
男は、その言葉の意味を深く考えたことはなかった。しかし、カフェを経営していく中で、その言葉の意味が少しずつ分かってきたような気がした。
男の作るコーヒーとケーキは、本当に美味しかった。しかし、それだけではない。男の笑顔、男の話し方、男の雰囲気、全てが、お客さんを惹きつけていた。
男は、お客さんの話を真剣に聞き、お客さんの悩みを一緒に考え、お客さんの喜びを一緒に分かち合った。男は、お客さんの一人一人を大切にし、お客さんの一人一人に愛を注いだ。
そして、お客さんも、男を愛してくれた。男の作るコーヒーとケーキを愛し、男の笑顔を愛し、男の人柄を愛してくれた。
男は、誰からも愛される存在になった。そして、男は、好きなことをして生きることを許された。
男は、カフェの窓から外を眺めていた。そこには、ロボットみたいな上司が歩いていた。上司は、相変わらず疲れ切っていて、顔色が悪かった。
しかし、男は、上司を憎むことはなかった。上司もまた、誰かに愛されることを求めている人間なのだと、男は知っていた。
男は、上司にコーヒーとケーキを差し出した。そして、心の中で呟いた。
「私情は挟むな、か。そうだな、そうかもしれない。でも、私情を挟まなければ、人間は、人間でいられないんだ。そして、誰かを愛さなければ、誰かに愛されることもないんだ」
男は、コーヒーを淹れながら、幸せそうに笑った。
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