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ZERO円の取引

ゼロ円の取引

A氏は、ある会社で働いていた。彼の仕事は、得意先とのやり取りだった。しかし、ある得意先との取引は、彼にとって悩みの種だった。その得意先の担当者は、まるで吸血鬼のように、A氏から無償の労働力を吸い取ろうとしてくるのだ。

「これを頼む」「あれもやってくれ」と、次々と仕事を持ちかけてくる。断ろうものなら、「取引を続けるのは難しい」と、契約打ち切りをちらつかせる。会社にとっては、その得意先は大きな顧客で、取引を続けることで、他の顧客からの信頼を得ていた。そのため、A氏は、上司から「何とかしてくれ」と頼まれ、いつも振り回されていた。

そんなある日、A氏はひらめいた。無料の仕事をさせられている証拠として、納品書を作成することにしたのだ。金額はゼロ円。しかし、これにはある作戦があった。もし、相手が納品書を受け取れば、無料の仕事をしているという事実が白日の下に晒される。相手は、そのプレッシャーから、納品書を受け取らないかもしれない。

案の定、相手は納品書を受け取ろうとしなかった。「これはおかしい」と。A氏は、「では、返品処理させていただきます」と告げた。すると、経理上、不思議なことが起こった。無料の仕事をしたにも関わらず、マイナス粗利が返金され、諸経費が赤字になったのだ。翌月の損益計算書には、売り上げがないのに利益だけが上乗せされていた。まるで、帳簿の上で、お金が勝手に増えたかのようだった。

A氏は、この奇妙な現象に気づき、あることに気がついた。この会社は、まるでパズルのように、数字を巧みに操り、本当の姿を隠しているのではないか、と。ゼロ円の取引は、そのパズルの一片に過ぎなかった。

A氏は、この経験から、会社というものが、いかに複雑で、ときに不透明なものであるかということを学んだ。そして、彼は決意した。このままではいけない。

A氏は、この状況を「ゼロ円の取引」と名付けた。B社との取引は、まるで蜃気楼のように、実体のない利益を生み出していた。

やがて、A氏はB社が他にも同様の不正を行っていることを知った。架空請求、1円見積もり、不正納品…。これらの不正行為は、いずれ明るみに出る時が来るだろう。

A氏は、この「ゼロ円の取引」を星新一のようなショートショートにまとめた。そして、ある雑誌に投稿した。

「もしも、お金を払わずに仕事ができるとしたら、あなたはそれを受け入れますか?」

A氏の短編は、読者の間で大きな話題となった。そして、彼の勇気ある行動によって、B社の不正行為は世に知れ渡ることになった。

後日談

B社は、A氏の告発によって大きなダメージを受け、取引先から次々と見放されていった。A氏の会社は、B社との取引を解消し、新たな道を歩み始めた。

A氏は、この経験を通して、不正を見過ごせないことの大切さを学んだ。そして、自分の行動が社会を変えるきっかけになったことを誇りに思っていた。

教訓

不正は、どんなに巧妙に隠されていても、必ずいつか明るみに出る。不正を見過ごせば、自分だけでなく、社会全体に大きな損害を与えることになる。

正義を貫く勇気を持つことが、いかに重要か。A氏の物語は、私たちにそう教えてくれる。

#パンダ大好きポッさん