QRコードで支配された社会
#創作大賞2024 #オールカテゴリ部門
「もしもし、こちら徘徊老人連絡センターです。たった今、○○様のお父様がQRコードを読み取られました。場所は△△公園です。地図を送りますので、お迎えをお願いします」
電話口の女性は、ため息をつきながら受話器を置いた。こんな連絡が一日中ひっきりなしだ。ここ数年、認知症が爆発的に増加し、徘徊老人が社会問題となっていた。
政府は対策として、あらゆる物にQRコードを貼り付けることを義務化した。徘徊老人がQRコードを読み取ると、家族や警察に自動的に連絡が行くシステムだ。
「まったく、お年寄りはQRコードなんて読み取れないだろうに」
女性は、窓の外を眺めた。街はQRコードだらけだ。電柱、道路、ビルの壁、自動運転車、信号機、果ては犬の首輪にまでQRコードが貼られている。
「まるで巨大な迷路みたいね」
女性は、そんなことを考えながら、次の連絡に備えた。
一方、街の外れでは、QRコードに反対する人々が集まっていた。彼らは、QRコードによって管理される社会に嫌気がさし、自由を求めて立ち上がったのだ。
「我々はQRコードの奴隷ではない!」
リーダーの男は、群衆に向かって叫んだ。
「そうだ!そうだ!」
人々は、手に手にQRコードを剥がしたプラカードを掲げ、声を上げた。
彼らの反乱は、小さな火種だったが、やがて大きな炎となって社会を揺るがすことになるだろう。
これは、QRコードに支配された世界で、自由を求めて戦う人々の物語である。