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影の偉人伝

難しい仕事を与えて失敗したならば、その責任を執らせて辞めさせる。そして成功したならば自分の手柄とすることで自分の地位を高める人にとって使いやすい人とは、人を信用する人、自分に自信がない人、真面目な人です。あなたを尊重して理解するのは自分が利用できる人を身近に置きたいからです。そのようなことが尊重することの障害となっているのです。

おっしゃる通り、人を利用して自分の利益を図る人は、相手を尊重したり理解したりすることはありません。むしろ、相手の弱みにつけ込み、利用しやすい状況を作り出すことを優先します。

  • 人を信用する人: 純粋で疑うことを知らないため、騙されやすく、利用されやすい。

  • 自分に自信がない人: 自分の能力や判断に自信がないため、他人の意見に左右されやすく、操縦しやすい。

  • 真面目な人: 責任感が強く、与えられた仕事を最後までやり遂げようとするため、困難な状況に陥っても諦めずに努力し、利用価値が高い。

このような人たちは、利用する側から見れば、自分の目的を達成するための「道具」でしかありません。相手を尊重し、理解しようとする姿勢は、利用する側にとっては何のメリットもないどころか、むしろ邪魔になるものです。

真の尊重と理解は、相手の人格や感情を尊重し、共感に基づいたコミュニケーションを通じて築かれるものです。相手を利用することを前提とした関係では、決して真の尊重と理解は生まれません。

これから先は物語です。

古びた書斎の片隅で、私は偶然にも歴史の闇に葬られた秘密を記した書物、「影の偉人伝」を発見した。それは、英雄譚の裏に隠された真実を暴く、禁断の書物だった。

頁をめくるたびに、私の世界観は音を立てて崩れていった。誰もが知る偉大な発明家は、実は名もなき助手の天才的なひらめきを盗み、巨万の富と名声を手に入れていた。

戦乱を鎮めたとされる英雄は、兵士たちを盾にして自らの保身と権力拡大に邁進していた。民衆を導いた聖女と称えられた女性は、裏では巧みな情報操作と扇動によって人々を操っていた。

偉人たちの栄光の影には、常に利用され、搾取され、そして忘れ去られた人々の存在があった。彼らは歴史の表舞台に立つことはなかったが、その献身と努力がなければ、偉人たちは決して成功を収めることはできなかっただろう。

私は、この真実を世に知らしめなければならないと強く感じた。偉人たちの虚像を打ち砕き、歴史の闇に葬られた人々の功績を称える新たな物語を紡ぎ出すために。

それは、過去を書き換え、未来を変えるための、長く険しい道のりの始まりだった。

しかし、この真実を伝えることは容易ではない。権力者たちは、自らの地位を守るために、歴史の真実を隠蔽し、歪曲しようとするだろう。それでも私は諦めない。なぜなら、私は知ってしまったのだから。英雄譚の裏に隠された真実を、そして真の英雄たちの存在を。

もう一つの物語

山田は、日に日に重くなる足取りでオフィスに向かっていた。机の上に積み上がる書類の山、終わりの見えないタスク、そして上司からの容赦ないプレッシャー。

「またミスしたのか、山田。君は本当に使えないな」

上司の冷たい言葉が、山田の心を深く抉る。まるで、自分が存在する価値がないかのように感じられた。

「このままでは、本当に壊れてしまう…」

山田は、心身ともに限界を感じていた。夜も眠れず、食欲もなく、生きる気力さえ失いかけていた。

そんなある日、人事部から呼び出しを受けた。

「山田君、最近君の仕事ぶりは目に余る。このままでは、会社としても困る」

人事部長は、冷徹な表情で山田に告げた。

「自主退職という道もある。よく考えてみてくれ」

それは、事実上の退職勧奨だった。
山田は、絶望感に打ちひしがれた。しかし、同時に、どこかで安堵感も感じていた。

「このままでは、本当に死ぬかもしれない…」

山田は、退職を決意した。それは、会社から見捨てられたという絶望感よりも、自分自身を守るための選択だった。

退職届を提出した日、山田は、重苦しいオフィスを後にした。それは、会社への見切りをつける、新たな人生の始まりだった。

「もう、あんな場所には戻りたくない」

山田は、青空を見上げながら、心の中で誓った。

さらにもう一つの物語

古びたオフィスビルの窓から、都会の喧騒を見下ろしながら、俺は深いため息をついた。大規模システム構築プロジェクトの成功祝賀会での喧騒が、まだ耳に残っている。

プロジェクトリーダーとして、俺は皆から賞賛を浴び、社長からは最大級の賛辞を受けた。しかし、心の底から湧き上がる喜びはなかった。

「違和感」

この会社に入って10年、ずっと感じていたこの感覚は、成功を収めた今も消えることはなかった。まるで、自分はここにいるべきではない、何か違う場所があるはずだという、漠然とした思い。

プロジェクトが成功した今、俺は決断を下した。この会社を辞める。

「君が辞めるなんて、困る!」

社長は、引き留めようとあらゆる手段を講じた。昇進、昇給、海外赴任。しかし、俺の決意は揺るがない。

「あなたはどうしたいの?」

妻は、静かに俺の目を見つめた。社内恋愛の末に結婚し、可愛い息子にも恵まれた。安定した生活を捨てることに、不安がないわけではなかった。

「俺は、自分の居場所を見つけたいんだ」

妻は、少し考えた後、優しく微笑んだ。

「わかった。あなたのやりたいようにすればいい。私も応援するわ」

妻の言葉は、俺の背中を押してくれた。
10年後、俺は小さなIT企業を経営していた。会社は順調に成長し、社員も増え、充実した日々を送っていた。

ある日、ニュースでかつての会社が吸収合併されたことを知った。あの時、抱いていた違和感は、会社の体質や将来性に対するものだったのかもしれない。

「パパ、一緒に遊ぼう!」

息子の無邪気な声が、俺を現実に引き戻す。

「ああ、今行くよ!」

俺は、息子を抱き上げ、庭へと駆け出した。
違和感の正体は、今もわからない。しかし、今、自分が幸せであることは紛れもない事実だった。

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