生き神様を拝む
鈴木春信画《丁子屋内てう山と巡礼》(1768ー69年頃、ボストン美術館収蔵)
生き神様、生き仏様のように美しい遊女を、巡礼の親子が思わず拝んでしまう図。遊女が遊郭より外を歩くことは機会は滅多になかったとされる。遊女が神々しい存在であったことがわかる。
この絵とよく似た構図が、17世期のイタリアで描かれている。
カラヴァッジョ《ロレートの聖母》(1604年頃、ローマ サンタゴスティーン聖堂)
心に曇りのない民衆は、神々しい女性に手を合わせる。
遊女も聖女も神々しさでは同一の存在であったと思われる。
男性の権力者たちが、一方を遊女として蔑視し、一方を聖なる女性として崇拝の対象とするのだ。