82(ぱに) / 平々八十二

82(ぱに) / 平々八十二

最近の記事

ライトノベルを中心としたオタク系エンタメの気になる動き、新しい動きなどの「今」をざっくり紹介。

 自分の趣味記事ではライトノベルの歴史や系譜を紹介することが多い。  過去は大事であり、過去の積み重ねが今を作っているわけだが、その「今」についても定期的に発信して行く必要性は感じている。  というわけで、今回は個人的に注目している「ここ数年のライトノベルを中心にした新しい動き」をざっくり簡単にだが拾ってみようと思う。 ○大手出版社の動き  WEB発小説やライト文芸も含んだ広義の動きとして、動きが大きくかつ積極的なのはKADOKAWAだ。  2019年3月にオープンしたサ

    • 熱狂的ファンが生み出す同人活動という世界。『千年戦争アイギス』の同人誌・ファンブックとして熱量がちょっと狂ってる『千年真書』シリーズの紹介。

       『千年戦争アイギス』というゲームを題材にした、『アイギス千年真書(以下:千年真書)』という同人誌(ファンブック)が存在する。  オタクエンタメコンテンツにおいては当たり前ともなった同人というジャンルだが、原則として熱烈なファンが驚異的な情熱を持って行うファン活動であるため、時として驚くようなクオリティのものが出てくる。  そんな、熱いファンが作ったファンブックとしてなんかちょっと凄いことになっている『アイギス千年真書』を紹介したいと思う。  とはいえ、同人誌という性質上既に

      • 鈴蘭の剣・運命の螺旋初期実装全ルートの物語解説とクリア所感(端から端までネタバレあり

        ※2024/9/12追加ルートには触れていません ※端から端まで運命の螺旋のネタバレの塊です  鈴蘭の剣、運命の螺旋の初期実装エンディングをコンプしたので、その内容解説と感想などを書き連ねて行きたいと思います。  基本的に核心に触れるネタバレをしているので了承済みの方だけよろしくお願いします。  画像はなしで文字だけでいきます。 ○騎士諸国連合ルート  俗にいうグロリアルート。だと思って選んでみると、実際のところはグロリアに寄り添おうと思ったらルトフィが俺を選べよと迫って

        • 各記事の目次(ファンタジー論・ラノベ○選・千年戦争アイギス・鈴蘭の剣・スロット記事などなど

          ●ファンタジー論 あるいは ラノベ・ゲームを中心とした記事 ・本格ファンタジーは一度死んだのか? ~広がりすぎた「エンタメ」に潜む、本格ファンタジーという最終幻想~ ・ライトノベルに(ジュブナイル・ヤングアダルト・少年向け・少女向け・青年向け・R-18・新文芸・ライト文芸……)全部含んだら、個人がオールタイムベストを構築することは可能なのかに挑んでみた地獄録 ※暫定○選リストあり ・ライトノベルを中心としたオタク系エンタメの気になる動き、新しい動きなどの「今」をざっくり

          鈴蘭の剣・運命の螺旋という実質コンシューマ系フルプライスSRPG(まじでプレイ無料)世界の紹介

           「鈴蘭の剣」はXD Entertainmentが運営するソーシャルゲームだ。  日本版は2024年8月にリリースされたばかりの作品であり、日本の名作オールドゲームである「タクティクスオウガ」への熱いリスペクトがあるなどで話題になった。  ユーザーによる噂レベルではなく公式がそういった趣旨でのマーケティングを展開し、「タクティクスオウガ」開発者との対談動画なども公開している。  対談動画:  実際に1ヶ月ほど遊んでみて、なるほどこれは『普通のソシャゲではない』という感想に

          鈴蘭の剣・運命の螺旋という実質コンシューマ系フルプライスSRPG(まじでプレイ無料)世界の紹介

          千年戦争アイギスの新規勢がメインストーリーを楽しむための案内所

          はじめに  この記事はDMM提供の『千年戦争アイギス』のストーリーを優先して楽しみたい新規に向けた「メインストーリーへの辿りつき方」への案内記事となります。  メインストーリー解説ではなく「辿りつき方」。どういう意味?  千年戦争アイギスという作品は極めて王道な骨太ファンタジーストーリーが楽しめる名作でありながら、ソシャゲ史上において他に類を見ないほどに「メインストーリーがとっちらかって格納されている」作品です。  公式も頑張っていて一時期よりかなり整理されているのですが

          千年戦争アイギスの新規勢がメインストーリーを楽しむための案内所

          ライトノベルに(ジュブナイル・ヤングアダルト・少年向け・少女向け・青年向け・R-18・新文芸・ライト文芸……)全部含んだら、個人がオールタイムベストを構築することは可能なのかに挑んでみた地獄録 ※暫定○選リストあり

           ライトノベルオールタイムベストを生み出そう! という動きがある。この記事を書き出してもう多少時間が経っているのでSNSでの反応や熱量はもう変化しているかもしれないが、日本百名山や百名城で代表されるように、そういったベスト選出はあらゆるジャンル・コンテンツで人気があるし、見るのも作るのも面白いものだ。  ライトノベルを中心に据えたオタクエンタメ史の探求をライフワークとしている身としては、もちろん食いつく。思春期の頃は最強デッキ作りではないが、読んだ作品のお気に入りランキングと

          ライトノベルに(ジュブナイル・ヤングアダルト・少年向け・少女向け・青年向け・R-18・新文芸・ライト文芸……)全部含んだら、個人がオールタイムベストを構築することは可能なのかに挑んでみた地獄録 ※暫定○選リストあり

          千年戦争アイギス10周年に捧げる、ファミコンSRPG後継者としてのアイギス

           「千年戦争アイギス」ってゲーム、ジャンルはタワーディフェンスでしょと思った方は正しい。合同会社DMM.com (以下:DMM)の提供するブラウザ型ゲームとしてはじまったこの作品は2023年11月で10周年を迎える。ソシャゲ全体の歴史では10年越えの作品は既に複数存在するが、それでもかなりの古参組と言える偉業だ。  私は「千年戦争アイギス」は日本エンタメのファンタジー黄金期、RPG全盛期とそれに付随するSRPGの歴史の系譜に連なる末っ子にして後継者であると考えている。その理由

          千年戦争アイギス10周年に捧げる、ファミコンSRPG後継者としてのアイギス

          ○終章 本格ファンタジー論と本格的なファンタジー愛

           ファンタジーを中心としたエンタメを系譜的に眺めること、あるいはライトノベルを主役にエンタメの歴史を探ることは、もともとライフワーク的趣味ではあった。だが、それを1つの記事としてアウトプットすることはなかなかできずにいた。  その理由として最大だったものが『スタートラインを決めかねる』状態にあったからだ。ライトノベル始祖論のやっかいさは序盤の章の時点で露骨に溢れ出ていたと思うが、どこをスタートにしても何故その作品から語るの? がついて回る。  それがファンタジーというジャンル

          ○終章 本格ファンタジー論と本格的なファンタジー愛

          ○15章 令和エンタメとファンタジー ~パンドラの箱の中に本格は座しているか~

           長い旅も終わりが見えてくると寂しさを感じる。6年前が最近かなどは個人差が大きいだろうが、17~23年を今であるとして、そのトレンドを見ることで旅を終わるとしよう。  まずは小説界の今に渦巻く濁流の中へ、いざ。 ◆なろう系が見分けやすくなった乖離時代?◆ ・2017~19年の小説戦線 「86-エイティシックス-/安里アサト」「戦闘員、派遣します!/暁なつめ」 「スーパーカブ/トネ・コーケン」 「通常攻撃が全体攻撃で二回攻撃のお母さんは好きですか?/井中だちま」 「キミと

          ○15章 令和エンタメとファンタジー ~パンドラの箱の中に本格は座しているか~

          ○14章 アナログゲームのそれから ~ゲームの原点が魅せる底力~

           「ロードス島戦記」と「ドラゴンクエスト」誕生を見るにはTRPG文化の誕生と発展を見る必要があるとし、アナログウォーゲームの系譜も重要であり、「モンスターメーカー」のような存在もその過程で生まれたという話はしてきた。  既に名前を出したものをざっと再確認しておこう。 ◆ファンタジー黄金期前夜のアナログゲー◆ □TRPG ダンジョンズ&ドラゴンズ(1974年) □ゲームブック 火吹山の魔法使い(82年/日本語版85年) パックス砦の囚人(85年) ペーパーアドベンチャー、

          ○14章 アナログゲームのそれから ~ゲームの原点が魅せる底力~

          ○13章 融合する新旧エンタメ ~スマホが全部悪いで済めば楽は楽~

           ライトノベル創世記は何をもってしてライトノベルとするのかが議論として盛り上がった。そしてまた、何をもってしてライトノベルとするのかの見解が一致しない時代がはじまる。  そんな2013年以降の荒波に船を漕ぎ出そう。 ◆右手に現代ラブコメを、左手に異世界転生を◆ ・2013~14年の小説戦線 「エロマンガ先生/伏見つかさ」「安達としまむら/入間人間」 「ネトゲの嫁は女の子じゃないと思った?/聴猫芝居」 「この素晴らしい世界に祝福を!/暁なつめ」「グランクレスト戦記/水野良」

          ○13章 融合する新旧エンタメ ~スマホが全部悪いで済めば楽は楽~

          ○12章 異世界より ~貴方が落したのは左の異世界召喚? 右の異世界転生?~

           異世界召喚・転移もの(※64)も始祖論をやるのは難易度が高いと呼ばれている代物だ。世界各国の神話には神の国や黄泉の国に訪れる物語が定番として存在し、またそちらから人間界に人外がやってくる話も多い。  ここではないどこかへ消えてしまったのだろうというような神隠し的伝承も多く、根源的なルーツはまあそれらなのだろう。  エンタメ文学という側面で源流的代表としてよく挙げられるのは「不思議の国のアリス(1865年)」や「ナルニア国物語(1950年)」あたりだ。  「不思議の国のア

          ○12章 異世界より ~貴方が落したのは左の異世界召喚? 右の異世界転生?~

          ○11章 エンタメ新時代の主役たち ~なろう、歌姫、ソシャゲは何を変えたか~

           06年で時代を止めて過去へ戻るなどするゾーンが長かったため、簡単な時系列としてのエンタメ小説戦線の振り返りをしてしまおう。 ~80年代:ライトノベル前夜。ソノラマ、コバルト、ティーンズハートなど ~94年 :ファンタジー黄金期。ロードス島戦記やスレイヤーズなど ~00年 :ヴァーチャル系萌芽とセカイ系。クリス・クロス、ブギーポップなど ~06年 :シャナ、ハルヒ、とあるなど現代学園もの台頭、WEB出身作品も  圧縮というやつはすればするほどそんなシンプルじゃないだろ感が

          ○11章 エンタメ新時代の主役たち ~なろう、歌姫、ソシャゲは何を変えたか~

          ○10章 和風・学園・ロボ ~それは酢豚のパイナップルか、シャキシャキ野菜か~

           ファンタジー論は色々な軸が跋扈しているという話をひたすらしてきたが、それでもやはり主流派として強いのは中世西洋風ファンタジー至高論だろう。  日本人がイメージする本格的なファンタジーが西洋風メインな理由はここまでの歴史回顧で見えてきていると思う。だが、別にファンタジー黄金期=西洋風一色だったわけではない。和風(東洋風)ファンタジー、学園ファンタジー、ロボット・ファンタジーという概念はファンタジー黄金期の終了を経て出てきたムーブメントというわけでもなく、最初期から普通に存在し

          ○10章 和風・学園・ロボ ~それは酢豚のパイナップルか、シャキシャキ野菜か~

          ○9章 ファンタジー観と郷愁 ~ジブリからダークファンタジーまで~

           「風の谷のナウシカ/宮崎駿:著」は1982年にアニメージュにて連載開始された漫画だ。科学文明が崩壊した後の終末世界を舞台にしたSF・ファンタジー作品であるが、そこだけをとってセカイ系の親玉や始祖だと言われることは基本的にない。  「猿の惑星」などの海外発SFムーブメント作品との関係性を研究する動きはある。  劇場版「風の谷のナウシカ/宮崎駿:監督」は84年に公開されたアニメ映画だ。まず漫画の連載がはじまり、連載しながら(休載を挟みながら)映画製作を行った流れは有名だが、振

          ○9章 ファンタジー観と郷愁 ~ジブリからダークファンタジーまで~