ゾッとした…

正直言うと、あまり本は読まない。専門書や新書の類は、あくまで情報源として読むだけである。とかく純文学に関しては、理系の想像力に欠く脳ミソには、回りくどいその表現が理解しがたい。良さもわからない。

でも、こんな私でもほんの一時、小説家に憧れたこともあり、書いてみたこともある。プロットまではかなり良かったのだが…文章が…。元来飽きやすいため、すぐ挫折した。
文章を仕事にする人を心から尊敬する、本当に。

さて、こんな書くのも読むのも苦手な私でも、必ず読む作家がいる。

芦沢央(あしざわよう)

2012年に野性時代フロンティア文学賞を受賞した、新進気鋭の作家だ。

こちら、私の中高の友人でもある。彼女が小説家を目指していたことも知っていたし、投稿前の作品を読ませてもらったこともある。なので、本当に小説家としてデビューしたときの喜びはひとしおだった。

ただ…なにせ文章嫌いな私。読めるかな?でも、友人の書いたものだし…。

と、当初は再会したときの話のタネのために、と読み始めたら…一気読みしてしまった。こんなこと、ダン・ブラウンの『天使と悪魔』『ダヴィンチ・コード』以来である。

それから、すっかり芦沢央のファンなわけだが、昨年大ヒットした彼女の作品

『火のないところに煙は』

こちらは…本当にやばかった。何がどうやばいかというと、まず字面にゾッとする。次に文章にゾッとする。最後に、本当の意味がわかってゾッとする…最低3回は背筋が凍る感覚をおぼえる。

字面が重要なファクターなので、映像化は難しいかもしれないが、朗読なんかして欲しいなぁ…。

なんて思っていたら、そう考えていたのは私だけではなかった。なんと!本人自ら朗読を買って出たのだ。

『芦沢央×冨安由真 納涼!神楽坂怪談ナイト IN LA KAGU』

上記のイベントは昨年夏に実施された。因みに、コラボレーションした冨安由真も同じく中高の友人である。現実と非現実の間を表現したインスタレーション…と言ってもわからないだろう。観たこちらの感想も交えて説明すると、敢えて怖いと思わせる仕掛けをプログラミングし、意味深な展示物で更に観るものの恐怖感を煽る。平面ではなく、ひとつの空間が展示物なのだ。平たく言えば「リアル過ぎるお化け屋敷…ならぬ部屋」。語弊があるが、恐らく観た人すべてがそう思っているはずだ。

このふたりの世界観が妙にマッチしていると常に思っていたが(実際、芦沢と一緒に冨安の作品を観に行ったところ、恐怖におののくほかのギャラリーを尻目に、芦沢だけはその空間にドップリはまっていた)、まさか本当にふたりがタッグを組むとは思わなかった。これは、友人かどうかは別として、いちファンとして行かなければならんだろう!

そして、当日の夜。この日のために書き下ろした怪談を芦沢が読み上げる。その空間には冨安独特の仕掛けが、随所に施されていた。

つまり…

3Dお化け屋敷!

目、耳、想像力…我々の感覚は殆ど彼女たちの描く「恐怖」に支配された。

夏の涼には、充分すぎるほど…

そして…実はそこそこ敏感な私。見事に当てられて(?!)体調を崩した。どうやら、見えないリアルなものまで呼び込んでしまったようである。

今は寒い時期だが、背筋を更に凍らせたいひとは、是非読んでいただきたい。

芦沢央『火のないところに煙は』(新潮社)

https://www.amazon.co.jp/火のないところに煙は-芦沢-央/dp/4103500824/ref=nodl_

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