英単語ターゲット1900(6訂版)
【手に取ったきっかけ】
しばらく前から持っていた。なんと本だけで3冊目である。1冊目は学生時代に購入。1500語で挫折した。当時の版が実家に残っているかもしれない。2冊目はTOEICの勉強に取り組んでいたころ。単語を暗記するなんてもはや無理と諦め、引っ越しの際に「もうええわ」と処分してしまった。ついでに、Nintendo DSもやっていた。そう、ゲームも入れると4回目の購入なのである。しかし、今回は違った。アプリ「ターゲットの友」なるものが登場。これが本当によくできている。本格的に取り組み始めたのが共通テスト100日前だったのだが、なんとすでに3周できている。本との併用がおすすめ。
【構成の変化】
昔の版でもPart1(800語)、Part2(700語)、Part3(400語)の3部構成ではあった。ただ、Partごとに「動詞がひたすら出てくる」「次は名詞」「そして形容詞」…こんな順番だった。しかし、今はPart制度は継続しつつ「100語区切り、Section1〜19」が追加されている。その中で「動詞、名詞、形容詞、前置詞」と並んでいるので、「Sectionごとに読める文章が増える」「1日20個とかでなく、100個単位で何回も取り組もう」がシステムとして実装されている。大変よき。
【例文が面白すぎる】
世相の変化を反映してか、収録単語自体も変わっているのだが、それぞれに付けられる例文も変わった。昔の例文はもっと長かったが、文構造が基本の5文型と中学で習う範囲の文法に沿っている、かつ単語数が少なくほとんどが8語以内。12語を超えるものはパッと見る限り見当たらない。にもかかわらず、内容が面白い。
先日の笑点で欠席の理由(意味不明だった…)を説明する小遊三師匠、そして苦笑する昇太師匠が、ありありと目に浮かぶ、よき例文だ。
え〜っと、お二人はどんな状況なんでしょうか?…まず場面が気になりすぎる。恋愛相談?喧嘩でもしているの?そもそもこの男、一体何をやらかしたんだよ。
SNSで簡単にうわさを広めるなよ!メディアリテラシーはもはや小学校で習う必須事項だよ!
火星の運河に魅せられたものたちの奮闘が目に浮かぶ。「ピチピチの生命体を火星から持って帰りたい」と言ってる研究者さんもいらっしゃいますから。
氷河期世代の労働者に突き刺さる例文だ。2つ目に働いた会社(とある分野に特化した編集プロダクション。あまり書きすぎると社名が特定できてしまいそうだ)のことを思い出した。タイムカードがあったものの、月ごとでの残業代は支払われなかった。半年ごとの人事評価でまとめて支払われると説明され、何もしらなかったピュアな私はたいそうがんばった。なにせ、仕事自体は面白かったから。しかし…月100時間(つまり半年で600時間)の残業代が5万円だった。そして項目には「情熱手当」と書かれていた。「社内で2番目に評価が高いのよ」と言われた。「残業」は「情熱」なのか?何もできない社会人2年目に明らかにキャパオーバーな仕事をさせといて「情熱手当」ってなんよ?心がバキバキに折れた。その後のGWでは「連休期間中、少なくとも3日は出勤してほしい。会社のためにこれから3年は頑張ってほしい」と言われた。sweatshopであることを確信し、速攻で辞表を提出した。こんな会社は存続しないと思っていたが、まだあった。ただ、このsweatshopにいて幸運だったことが一つだけある。1年弱で人脈ができ、その後の人生(デザインの師匠に出会えた!)につながったのだ。
…思わずsweatshopの思い出を語ってしまった。そう、感情を揺さぶられるのである。例えるなら「新明解国語辞典」第4版のような。
【で、肝心の英単語暗記について】
今月、アプリ「ターゲットの友」全国順位で32位につけている。デザインだけでなく、塾講師も生業としている。毎年「単語が覚えられない」と嘆いている高校生たちに、例文を読んで妄想したり、ゲーム形式で楽しんだりしながら学べるこの本の面白さを伝えられればと思う。