今さら聞けないAGI:LLMsを活用した生涯学習システムの展望
この記事は、人工知能(AI)と機械学習に関心を持つ学者、研究者、そしてAI技術の進化に興味を持つ一般読者を対象に、人工汎用知能(AGI)への道筋としての大規模言語モデル(LLMs)と基礎モデルの重要性を解説します。ここでは、VOYAGER、DEPS、AutoGPTといった先進的なプロジェクトを例に、生涯学習革命におけるこれらの技術の役割と潜在力を掘り下げます。読者は、AGIの実現に向けた最新の研究動向と、それが私たちの未来にどのような影響を及ぼす可能性があるかを理解することができるでしょう。
キーワードのおさらい
この記事では、人工汎用知能(AGI)への道筋を探る中で、大規模言語モデル(LLMs)とその応用に焦点を当てています。LLMを理解する上でのキーワードやコンセプトについても触れています。以下は、この記事で紹介されている主要なキーワードとその説明です。
人工汎用知能(AGI) - 人間が行える任意のタスクを実行できるエージェントの開発を目指すAIの分野。
大規模言語モデル(LLMs) - 大量のデータから学習し、広範なタスクを理解し処理できる能力を持つAIモデル。
生涯学習 - 新しいスキルを継続的に学習し、それらを複合的なタスクに応用するAIの能力。
プランナー - LLMに基づいて、タスクを計画し、実行可能なサブタスクに分割するシステムコンポーネント。
セレクター - サブタスクの中から、最適なものを選択し、実行するための指示を出す部分。
コントローラー - タスクを達成するためのアクションを選択し実行するシステムコンポーネント。
メモリ - 短期記憶と長期記憶を含む、情報の保存と取得の機能。
クリティック - 実行された計画を評価し、改善点をフィードバックするシステムコンポーネント。
ディスクリプター - 環境の状態をテキスト形式に変換し、LLMのプロンプトに組み込む役割。
VOYAGER, DEPS, AutoGPT - LLMsを用いた革新的なプロジェクトや研究の例。
AGIへの道のり
AGIは、人間が行える任意のタスクを実行できるエージェントを目指します。これには、新しいスキルを継続的に学習し、習得したスキルを利用して更に複雑なスキルを速やかに学習する能力が求められます。AGIは、環境との相互作用を通じて失敗から学び、成功するまで続ける必要があります。
LLMsと基礎モデルの役割
LLMsは、巨大なデータセットから学習し、世界の理解と様々なタスクの達成方法を把握します。最近の研究では、LLMsを継続的学習の中核として使用することに重点が置かれています。
システムの構成要素
LLMsに基づく生涯学習システムは、複数の要素から成り立ちます。これには、プランナー、セレクター、コントローラー、メモリ、クリティック、ディスクリプターが含まれます。
プランナー
プランナーは、環境内での生涯学習タスクを組織します。例えば、VOYAGERではGPT-4が使用され、学習進度とエージェントの状態に基づいて難易度を増すタスクを提案します。DEPSでは、CODEX、GPT-4、ChatGPT、GPT-3をプランナーとして使用し、環境の説明を含むプロンプトを提供します。
セレクター
セレクターは、プランナーによって提供されたサブタスクのセットから、最適な次のサブタスクを決定します。これは、主目的とクリティックからの洞察に導かれます。
コントローラー
コントローラーの主な責任は、与えられたタスクを達成するための次のアクションを選択することです。これには、別のLLMやディープラーニングモデルが使用される場合があります。
実装: この役割には、LLMsやディープラーニングモデルが使用されることがあります。コントローラーは、現在のタスクと状態に応じた適切なアクションを生成し、タスクの達成に向けてエージェントを導きます。
メモリ
人間のメモリ機能と同様に、短期記憶と長期記憶が存在します。短期記憶は、学習や推論に使用される情報を一時的に保存します。長期記憶は、長期間にわたって情報を保存し、取り出す機能を持ちます。
短期記憶: 学習や推論に使用される情報を一時的に保存する機能です。
長期記憶: VOYAGERでは、長期記憶は外部ベクトルストアを用いて学習したスキルを保存・取得する役割を担います。これにより、エージェントは過去の経験から学び、将来のタスクに活用できます。
クリティック
クリティックは、実行された計画に対する批評を行い、タスクを達成するための計画の洗練をフィードバックします。これは、報酬信号、現在の軌道、持続的なメモリを用いて、将来の試行のための口頭フィードバックを生成します。
機能: クリティックは報酬信号、現在の軌道、持続的なメモリを使用して、口頭でのフィードバックを生成します。このフィードバックは、エージェントが次の試みでより効果的に行動するための重要なガイドラインとなります。
ディスクリプター
環境の状態やエージェントの状態をテキストに変換し、LLMのプロンプトに組み込む役割を果たします。これにより、テキストベース以外の環境でもLLMsを活用することが可能になります。
役割: ディスクリプターは、テキストベースではない環境の情報をLLMsが理解しやすい形式に変換します。これにより、非テキストベースの環境でもLLMsを効果的に活用することが可能になります。
実験と成果
複数の研究で、LLMsを用いた継続的学習の事例が紹介されています。これらの研究は、AIが人間のように学習し、進化する能力を持つことを示しています。特にVOYAGER、DEPS、AutoGPTは、この分野における重要な進歩を示しています。
VOYAGER
プロジェクトの概要: VOYAGERはGPT-4を使用し、エージェントに対して逐次的かつ複雑なタスクを提案するシステムです。
重要な特徴: このシステムは、エージェントの学習進度と状態に応じて、難易度を増すタスクを自動的に生成します。これにより、エージェントはより効果的に学習し、新しいスキルを獲得することができます。
DEPS
プロジェクトの概要: DEPSは、CODEX、GPT-4、ChatGPT、GPT-3を活用して、複雑な環境でのタスク計画と実行を行うシステムです。
重要な特徴: DEPSシステムは、エージェントが現在の状態に基づいて最も効率的なタスクを選択し、計画を最適化する機能を持っています。
論文:
AutoGPT
プロジェクトの概要: AutoGPTは、GPT-3.5とGPT-4を組み合わせた、より複雑なタスクを解決するための自律型AIエージェントです。
重要な特徴: このシステムはインターネットアクセスを持ち、さまざまなアプリやサービスと対話しながら、人間から与えられた高次元の目標を達成することができます。
これらの研究は、LLMsがどのようにして複雑な環境での学習と問題解決に寄与するかを示しており、AGIへの道のりにおいて重要なマイルストーンを示しています。また、これらのシステムは、自律型AIエージェントが現実世界の多様なタスクに適応し、効果的に行動するための新たな可能性を開拓しています。
課題と展望
LLMsに基づく生涯学習は、環境を正確に理解し、効果的に計画し、批評するLLMsの信頼性に大きく依存しています。しかし、LLMsが事実を作り上げることや、存在しないタスクを割り当てることがあり、これは大きな課題です。また、プランナーやクリティックとしての不正確さや、繰り返しのサイクルに陥る可能性もあります。
総括
AGIへの道はまだ遠いものの、LLMsと基礎モデルはその実現に向けて重要なステップを提供しています。VOYAGER、DEPS、AutoGPTなどの革新的なプロジェクトは、人間のように継続的に学習し、進化するAIの可能性を示しています。これらのプロジェクトは、AIの研究において新たな方向性を示し、将来的にAGIの実現に貢献する可能性があります。しかし、この分野はまだ発展途上であり、多くの課題が残されています。今後の研究により、さらなる進歩が期待されます。
参考
https://arxiv.org/pdf/2305.16291.pdf
https://arxiv.org/pdf/2302.01560.pdf
https://arxiv.org/pdf/2305.15486.pdf
https://arxiv.org/pdf/2209.11302.pdf
https://github.com/Significant-Gravitas/Auto-GPT