ハチ公恋物語

 高校2年の時に付き合っていた一つ上の彼氏に、私は8ヶ月もの間放置された過去がある。遠距離をしていて、LINEでのやりとりがメインだったあの頃。確か7月の半ばだった。

 「受験勉強で忙しくなるから、連絡あんまり返せなくなるかも」
 「でも受験終わったら会いに行くから」

 そう言う彼氏に、「頑張ってね」と「待ってる」の二言を返した。


 そうしたら。
 そこからなんと8ヶ月も音信不通になってしまった。

 私はとんでもなく馬鹿なので、大変お利口に待ち続けた。友人も皆優しかったから、誰一人として「自然消滅」とかいう残酷な言葉はかけてこなかった。「ハチ公みたいで泣ける」なんて言われていた。

 試しに「メリクリ!!🎅」と聖なる夜に送ってみたけれど、既読になることは決してなく。「今宵こそは」と、私は毎晩泣き続けていたわけで。

 まあ今は勉強頑張ってるんだもんねとおまじないのように唱えて自分を納得させて、翌年4月に入った時にもう一度連絡を入れた。どうも諦められなかった。

 するとすぐに返事が返ってきたのだ。

 「連絡取らなさすぎて勝手に気まずくなっていた」

 とのことだった。私は家でひっそり涙を流しながら、

 「そっか!!元気でよかった!!」

 あっさりこう許した。嬉しさが勝ってしまった。

 でも結局その後2週間、また彼からの連絡は途絶え

 振られた。

 想定の範囲内ではあった。Twitterのヘッダーは大学で出会ったであろう可愛い女の子達との写真に変わっていた。そんなの、田舎もんで「垢しか入ってません!」みたいな私が勝てるわけなかった。そりゃあこんなやつ用無しだ。

 3年引きずったけれど、それでも彼を恨んだことは一度たりともなく。

 なんなら、この思い出は大体誰に話してもウケるネタで非常に助かっている。

 心底感謝している。ありがとう元カレ。
 
 これが、ハチ公恋物語。

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