朝活俳句アワード2022を読む 第5回 村蛙「日常から深化する余情」
友定さんの句は、いずれも身近な、ともすればあまりに身近すぎて句材になるかどうかの素材を扱いながらも、季語との取り合わせにより抒情の深い世界が広がっている。
しりとりに喇叭ふたたび石蕗の花 友定洸太
誰にでも覚えのあるような経験から、繰り返される「喇叭」という言葉に状況が少しずつわかってくる。おそらくは語彙の少ない幼児とのしりとり遊び。その二回目の喇叭が響く時、初冬の小さな黄色い花は呼応したようにふと顔を覗かせるのだ。
山茶花や雨の染みこむスニーカー 友定洸太
山茶花は花びらを降るように散らせる、そこから雨へのシークエンスがとても自然で美しいと思った。また、キャンバス生地のスニーカーは濡れると色が変わってしまう。雨粒の模様を、まるで散った山茶花の花びらのように見立てていると感じた。
プロパンガスボンベごろりと彼岸入り 友定洸太
プロパンガスは地方で見られる風景かと思われる。句跨りが文字通りガスボンベの長さを感じさせる。転がされたボンベは、空になって交換を待つばかりなのだろうか。それはまた、同じようにごろりと横になって、何をするでもなく彼岸の入りを待っているという人の姿にも思えてくる。
水筒に波音のして花あやめ 友定洸太
水筒は、当然のことだが中に液体が入っていることで水音を立てる。しかしここで聞こえるのは水どころか波の音なのだ。海が閉じ込められた水筒があるという、途方もない空間の扱い方をしている。下五はこれで合っているのかどうか、それは個人的にはまだよくわからない。
アワードでは文句無しに一番に入れた。このような作者と共に句作できることは幸甚である。
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