朝活俳句アワード2022を読む 第2回 黒岩徳将「ニクい」

友定洸太アワード句鑑賞 黒岩徳将


しりとりに喇叭ふたたび石蕗の花 友定洸太
1回目の「らっぱ」は「しりとり」→「りんご」→「ゴリラ」→「ラッパ」の最短で4ターン目に出てくると推測される。2回目はどのタイミングで「ラッパ」が出現したのか数回シミュレーションしたがなかなか想定できない。ということは結構長くしりとりをやっていることではないか。寒いのに。「石蕗の花」はどうか。取り合わせる季語として寒さの中のほっこりした気分を感じさせる。季語の本意をあぶり出すというよりかは脇役として背景を上手く支えているような感じだ。もちろん、石蕗をぼけーっとみているとなんだかラッパに見えてこないこともない。それも複数だ。一句の中に丁寧に素材や場面を選ばれたこの句の中で最もイイ仕事をしているのは中七の「ふたたび」だと思っていて、中七でふわっと切って季語へと展開するこの間合いこそが句のスタイルを形作った。ニクい句である。

山茶花や雨の染みこむスニーカー 友定洸太
山茶花は散ってもいると解釈した。視点が地面あたりにある。「染み込む」ほど降っているのだと、傘でも防ぎきれないほどの雨なのだろうか。
ちょっと物悲しい景色に対して、「や」の切れ字がやや軽やかに使われている。

プロパンガスボンベごろりと彼岸入り 友定洸太
あのボンベは都市ではない民家に備え付けられているのをよくみるが、「ごろりと」ということは横たわっているのか。危ない気もするが、火を間接的に感じさせるガスボンベと彼岸の繋がりはどうなのだろう。一句の濁音の多さということよりも素材のつながりの方が大事だ。火がないと現代生活はなり立たない。静けさが心地良くもなく気分悪くもない。綺麗でもなく汚くもない。

水筒に波音のして花あやめ 友定洸太
水筒という小さな場所で起こる「波」が、海ではなく池のものだと思うとさもありなんという感じでささやかな美しさを感じる。

ふくらんでそれぞれ夜行バスを待つ 友定洸太
何がふくらむのか?「着膨れて」の変奏としての人間なんだろうが、「ふくらんで」の主体がやや曖昧にされていることが夜の光のぎらぎら感と相まって奇妙だ。旅への期待が膨らむとは読みたくない。

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川嶋ぱんだ
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