2021年春③ 実家へ
実家についた。ちょうど庭のチューリップが色とりどりに咲き誇っていた。「来ましたよ~~~♪」とドアを開けると、母は両手を広げて私と初めて会う孫を待っていてくれた。その奥から父がやってきた。少しほっそりとした身体ではあるが本当に膵臓癌なのか疑問が残るくらい普通に元気だった。思えば父は3年前の2018年くらいから痩せてきていたけれど、本人は「健康のため」と話していたから私はなんの心配もしていなかった。
父が「これから生徒さんがくるから」といった。教育者である父は、教育に50年携わっていて、現在は頼まれた子を個人指導で自宅で指導していた。父がレッスンの間、私たちは庭で紅茶を飲んでいた。父が指導している声が庭まで聞こえてくる。
私「元気そうなんだけど本当に膵臓癌なのかね?間違いじゃないか?」
母「間違いに感じるね」
私「入院はいつから?」
母「3日後から」
庭にまで聞こえてくるハリのある父の声をきいているのに、その父が3日後に入院なんて信じられない。
母「実は本当はすぐに入院といわれたのだけど、父がレッスンとかあるから少し入院まってくださいと頼んで3日後に入院になったのよ」
・・・・
一瞬会話が途絶えたあと、母は私が抱いている赤ちゃんの名前を何度も呼び「かわい~かわいい~~」と言って話を変えた。
父のレッスンが終わり、改めてリビングルームで再会、実家で家族がそろった。
元気というか普通の状態の父であったが、ゲップがやけに多いのが気になった。ゲップがとまらないね?と尋ねると、止まらない、そして寒い。といった。日差しがたっぷりで薄手の洋服の私とは裏腹に、父は冬用の長袖2枚(ニットのセーター)を着ていたのも気になった。