中高齢寡婦加算
厚生年金被保険者の夫が死亡したとき妻と子が残されたら遺族基礎年金が支給される可能性がありますが子のない妻(寡婦)のときは遺族厚生年金しか支給されません。そこで登場するのが中高齢寡婦加算です。
条文を読み砕いて要件をみると
遺族厚生年金の受給権者である妻が
①受給権を取得した当時、遺族基礎年金が支給されていない(つまり生計を同じくする子がいない)40歳以上65歳未満
②受給権を取得した当時、遺族基礎年金が支給され(つまり生計を同じくする子がいる)40歳到達した時点で遺族基礎年金の支給を受けている
✅中高齢寡婦加算の額
遺族基礎年金の額に3/4を乗じる
780,900円×改定率×3/4 です。妻の生年月日に差は無く一律の金額です。
遺族厚生年金の受給権者である妻が対象ですが長期要件の遺族厚生年金だと、その額の計算の基礎となる夫の厚生年金保険の被保険者期間の月数が240月以上の被保険者期間がないと支給されません。
それでは過去問です。
解答
問1. ✕ 前段部分の中高齢寡婦加算ですが、要件は「遺族厚生年金の受給権を取得した当時、遺族基礎年金が支給されていない40歳以上65歳未満」です。
被保険者であった夫が死亡していますので遺族厚生年金は妻に支給されますが中高齢寡婦加算は遺族厚生年金の受給権を取得した当時38歳ですので要件に当てはまらず加算されません。後段部分は正しくて妻の死亡に関して夫が遺族厚生年金を受ける場合ですが、夫に関しては死亡当時55歳以上であることが要件ですので遺族厚生年金は受けることができる遺族とはなりません。
問2. 〇 子のない妻が、被保険者である夫の死亡による遺族厚生年金の受給権を取得したときは40歳以上65歳未満でないといけません。
なお子のある妻が、被保険者である夫の死亡による遺族厚生年金の受給権を取得したときは40歳に達した当時当該被保険者若しくは被保険者であつた者の子で遺族基礎年金の遺族の要件に該当するものと生計を同じくするものです。この場合は妻が40歳到達で中高齢寡婦加算の条件を満たしますが遺族基礎年金が支給されている間は支給停止で遺族基礎年金が失権(子が18歳年度末に到達するなど)してから中高齢寡婦加算は加算されます。
問3. ✕ 34歳の妻と15歳の子という事例に置いて子の遺族基礎年金が失権するのは18歳年度末つまり3年後であり、その時に妻は37歳となる。
子のある妻が、被保険者である夫の死亡による遺族厚生年金の受給権を取得したときは40歳に達した当時当該被保険者若しくは被保険者であつた者の子で遺族基礎年金の遺族の要件に該当するものと生計を同じくするものです。
設問の妻は40歳に達した時点で遺族基礎年金の受給権を失権しているので中高齢の寡婦加算は加算されないです。
✅経過的寡婦加算
中高齢寡婦加算が加算される妻が65歳に達すると終了し老齢基礎年金を受給できるようになります。ただ旧法時代は妻は国民年金に加入するのは任意だった為、老齢基礎年金が少なくなる人もいました。そこで中高齢寡婦加算が加算されていた昭和31年4月1日以前生まれの人には65歳以降に経過的寡婦加算が生年月日に応じて加算されます。昭和31年4月1日以前生まれの人は新法施行日の昭和61年4月1日において満30歳以上の人です。60歳に達するまで残り30年未満となり満額の40年は達成できません。つまり30年/40年(中高齢寡婦加算額相当額)は生年月日に応じて経過的寡婦加算が加算されることになりました。
ポイント
・昭和31年4月1日以前生まれの人にしか経過的寡婦加算は加算されない
・妻が障害基礎年金の受給権を有していると支給停止
・夫の死亡について遺族基礎年金の支給を受けることができるとき支給停止
・長期要件の遺族厚生年金だと240月以上の夫の被保険者期間が必要
✅経過的寡婦加算の額
中高齢寡婦加算額-老齢基礎年金満額×妻の生年月日に応じた率
780,900円×改定率×3/4-(780,900円×改定率×0~348/480)
妻の生年月日に応じた率は昭和31年4月1日に近づくほど分子の額が大きくなりますので経過的寡婦加算の額は少なくなります。
解答
問4. ☓ 中高齢寡婦加算には妻の生年月日要件はないが経過的寡婦加算には生年月日の要件があり昭和31年4月1日以前生まれの人にしか経過的寡婦加算は加算されない。
問5. 〇 老齢厚生年金の受給権者が死亡と設問に書かれていますので長期要件だと読み取れます。長期要件だと中高齢寡婦加算も経過的寡婦加算も、その額の計算の基礎となる夫の厚生年金保険の被保険者期間の月数が240月以上の被保険者期間がないといけません。そして生年月日の要件があり昭和31年4月1日以前生まれの妻でした。設問はすべてクリアしています。ただ権利を取得した時点で妻は65歳以上です。中高齢寡婦加算が加算されていなかった妻は経過的寡婦加算は加算されないのでしょうか?これは加算されます。
中高齢寡婦加算が加算されていたことが必須ではないからです。
条文を読み砕くと
①遺族厚生年金の受給権者である妻が、権利を取得した当時65歳以上
➁中高齢寡婦加算額が加算された妻が、65歳に達した時
①に該当します。中高齢寡婦加算が加算されていたことが必須ではないことがわかりましたでしょうか。