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私の好きな冬景色|パラスパレスの ヒト モノ コト#4


冬になるとシベリアからたくさんの白鳥がやってくる、それが私にとって、当たり前の風景でした。

生まれ育った、新潟でのおはなしです。

白鳥というと多くの方は、水面を優雅に泳ぐところを想像すると思います。けれども、私の目に浮かぶのは、群れで田んぼに降り立つ姿です。

冬の田には、きっとおいしいものがあるのでしょう。夢中でエサを探しています。よくよく観察すると、群れの中に見張り番がいて、交代制で首を空に伸ばし、きょろきょろしているのがわかります。

広がる土色のキャンバスの上に、ぽん、ぽん、ぽんとある白いかたまりが、なんとも愛らしく、よく見入っていました。

空を飛ぶ姿もしばしば見かけました。クォークォーと、鳴き声が響く空を見上げると、冷たい風に乗り、白鳥が羽ばたいています。Ⅴ字に隊列を組み、時折強風に煽られながら飛ぶ姿は、とても強く、とても美しいものです。

朝になるとエサを探しに出かけ、夕暮れにねぐらに帰る生活は、当時の私の登下校と重なり、なんだか一緒に過ごしているような存在でした。

あたたかくなると海を渡って行ってしまう白鳥たち。

上京してずいぶんと経ちましたが、今でもふとした時に思い出す、私の好きな冬景色です。


パラスパレス 企画 伊藤



新潟生まれの彼女が、学生時代に制作したテキスタイルの課題。見張り番の白鳥が首をもたげているところが描かれています。




こちらの連載『パラスパレスのヒトコトモノ』は、店頭にてお渡ししているシーズンブックに掲載されています。

スタッフが数珠繋ぎで綴るエッセイです。

冬号のお渡しがはじまりました。ぜひ、おこしくださいませ。


ヒトモノコトのバックナンバーはこちら。


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