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わたしは三井寿だったのか

スラムダンクという伝説のバスケ漫画がある。
京都滞在中、アテンドしてくれた友人(昨日の記事にも書いた星見さん)とオタク談義に花が咲くことがあり、「スラムダンクのキャラ(男性)で誰が一番好きだったか」という話になった。

満場一致(2人しかいないが)で「30代の今、一番付き合いたいのはメガネ君だ」という話になった。

わたしは子どもの頃は桜木花道が大好きだった。バカで直情型で実はやる時はやる、主人公タイプの男が好きだったのだ。

「でも今、顔の好みでいえば完全にミッチー」という話をしていたが、何がどうなったのか、友人から「今のあなた自身が完全にミッチー(更生前)じゃないか」と言われた。

この2020年でものすごく実感したのは、
「わたしは漫画を描くのが好き」
「めちゃめちゃ上手くなりたい」
「たくさん漫画が描きたい」
という気持ちがある、ということだ。

なのに思う存分(自分の望むほどは)描けないまま、もう2020年が終わろうとしている。
「いつになったら、『安西先生、マンガが描きたいです……!』て言うんですか」と言われた。

この記事を読んでいる皆さんがスラムダンクを大体知っている前提で話をするが、三井寿はもともとすごくバスケの才能があり、調子に乗ってたらケガして、色々あって挫折して不良になり、結局バスケに戻ってくるキャラクターだ。

2年も不良をやっていたせいで体力がなく、作中で「なぜオレはあんなムダな時間を」と泣くシーンがある。

わたしは今の生き方に後悔はないが、時々自分がメンヘラだった時期や、クリエイターを挫折して恋愛に逃げていた時期を思い出しては「なぜオレはあんなムダな時間を」と思うことがある。
あの時間も必要だったとは思うが、それでも「あの時間さえなければ、今もっと思う通り動けたじゃないか」とか考えてしまうのだ。

彼が入部時に「ポジションはどこでもやれます!」と言っちゃう感じも何かわかる。

わたしはやろうと思えばイタコ絵師になれるので、「これ系で」と言われればどんな画風でも大体描ける。

自分の能力や対応力がけっこう高いことを分かっている。
けどコツコツやって来た同期(ミッチーでいえばゴリ)に抜かれると一気にやる気をなくす。
プライドが高いからだ。

***

9年もイラストレーターをやってきているので、「画力が高くなくても、仕事はもらえるし収入は得られる」ことはとっくに分かっている。プロになる上で重要なのは画力じゃない。

なのにわたしは今、改めて「絵の上手い漫画家になりたい」と思っている。10年前に諦めたことにもう一度向き合うためだ。

「絵の上手いクリエイターになんかならなくていいんだよ」「上手くなくても仕事や金は得られる。それで生き延びられればOK」「漫画なんか趣味でもいいだろ」と言って逃げ続けてきたが、わたしはどう考えても「上手い漫画家」になりたいのだ。

本当はバスケをやりたいのに、ずっと強がって不良をしてしまっていた三井寿と変わらない。

三井寿は、「本気でバスケに取り組みたい自分」から逃げていた。能力もあるのに逃げていた。自分一人の心だけじゃ弱過ぎて、周りの助力でやっと「バスケがしたいです……!」を言えた男だ。
ハア〜〜情けない!

ミッチーのキャラクターを振り返れば振り返るほど、「それ自分じゃね?」と思う。
「自分も情けなくない?」と。

そう考えると、なぜわたしが桜木花道のことが好きなのかも何となくわかる。

桜木はヤンキーからバスケットマンに転向した経緯があるので「そもそも不良に対して恐怖感がない」のかもしれないが、それまで不良として恐れられていた三井寿を軽々しく「ミッチー」と呼べちゃう馴れ馴れしさがある。

桜木花道はバカで距離を詰めるのが早い。素直になれなくて不器用な人間に、そういう人物はありがたいのだ。問題児軍団の一員として、ミッチーと桜木は何だかんだ仲よしだし。

ミッチー目線で桜木が好きだったのか……わたしは……。

三井寿は完全復帰後、恥も外聞も関係なくバスケに取り組む。
わたしも「思い切り好きなことに取り組む」をしたいのに、まだグズグズ動けない部分がある。わたしはいつまで不良とつるんでいる三井寿なのだ。

早く安西先生に「バスケがしたいです……!」と言って髪を切った三井寿になりたい。だって短髪のミッチーの方が好きだし。

どこまでも三井寿の顔面が好きだ。
そういえば声優は置鮎龍太郎さんだった。それはもう声も好きだ。

まとまりがないけど、ごきげんよう、さようなら。

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伊藤巴(ともえ)@漫画家×カウンセラー
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