【R18小説版】サクラ🌸カナタ #Y01 「通じ合う日(前半)」
※【2019/6/21改稿/最後に画像追加】
シャワールーム。
少し温めの水温で打たれながら、カナタは考え込んでいた。
「(あの子があんなに泣き崩れて取り乱したの、初めてみたな……私が無茶をして、下手したら死んでいたかもしれない、ってのはわかる。……でも、なにか、別のなにかがまだあるような……)」
シャワーを止め、10分ほど前にサクラにぶたれた右の頬に手をあてたまましばらく鏡に映った自分をボンヤリ見つめていた。
「困ったな。初めてあの子の気持ちがわかんなくなっちゃった。これじゃお姉さん失格だ……」
そこまで思い至った途端、ハッとする。切なさと憂いのようなものを湛えたサクラの表情と瞳が思い浮かぶ。
「(……気持ち?そうか。サクラ、ひょっとして――。
なんて向き合おうかな……いや、変に考え込んだらだめだ。彼女はいまそれが言えなくて、とても苦しんでる。なら、ありのまま受け入れる。受け入れられる。私もありのまま本心を伝えればいい)」
シャワールームを出て、タオルで全身くまなく水気を拭き取ると、黒のタンクトップと同色のホットパンツのラフな姿でリビングに戻った。
ソファーにはうずくまったままのサクラがポツンと暗がりに佇んでいる。
「となり、座っていい?」
「……」
息を軽く吐きながらサクラの左側に腰掛けたカナタは、同じように膝を折って寄り添うように縮こまった。お互い視線は合わさないまま、少しの沈黙が流れたあと、意を決して切り出す。
「あのね、ズバリ聞いちゃうけど、サクラって私のこと、すき?
その、親友とかって意味じゃなくってさ、恋愛的な意味で」
その途端、グズっていたサクラが静かになる。
顔を上げ、わずかにグズりながらも、目を丸くして驚きを含んだ表情でカナタを見つめる。
「……どうして、わかったの……?」
「だって私が無事なのわかったのに苦しそうなままなんだもの。ひょっとしたらってね。あとは女の勘」
「そう……なんだ、、、えっと、その……」
ふいに視線をそらしつつも、サクラの表情には一気に生気が戻ってくる。なにかを言いかけるサクラより先にカナタが続ける。
「じゃあ私の気持ちも聞きたいでしょ?安心して。私もサクラのこと、すきだよ。自分ではそれが恋愛感情なのかまで意識したことはなかったけどね」
「迷惑……?」
「んなわけないでしょ。すっごく嬉しいよ、それに安心した!」
「どうして?……」
「私もね、本当はどこかでサクラに嫌われないかって不安だったのかもしれない、ってこと」
「……あんまり喋らない、から……心配、させてごめんね……」
「謝らなくていいよ。私の方こそごめんね、気が付かなくって」
「ううん、大丈夫、だよ……」
また少し沈黙が流れる。しかし今度は一変して2人の間には温かい空気が満ちていた。
「さっきさ、”すき”の意味は意識したことない、みたいに言ったけど、
よくよく考えたら、私は私で、小さい時からずっと施設でサクラと一緒にいて、見守ってて、頭の中はサクラのことしかなかったんだよね。それにサクラはサクラで私のこと”好き”なんでしょ?」
サクラは無言でゆっくりと頷きつつ、視線は自然と反らした先からカナタの表情へと戻っていく。
「それってさ、もう相思相愛ってやつじゃん!」
丸まった体勢のまま明るい口調で微笑みかけるカナタと見つめ合うサクラはその刹那、今まで以上に目を見開きつつも、その表情の内で抑えようのない感情が一気に吹け上がるのを感じていた。自然とカナタの背後から奥の手を包み込むようにして伸び始める腕。互いの顔がいつの間にか今までより更に接近していた。
「……私も、確信……ない……けど……さ……」
「……確かめて、みる?……」
【To be continued.】