※R18注意【「堕ちた神父と血の接吻」番外編】蝶の羽には毒がある
※ヴィルの過去編です。コンラート以外を抱いたことを匂わせるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
19世紀末。ドイツのとある地方。
しばしば領土争いの舞台になる国境を拠点とし、ヨーロッパ各地で盗みを働いた盗賊団がいた。
壊しもする。殺しもする。……だが、筋は通す。
マフィアにも近しい矜恃を持った彼らは、自らを「シュメッターリング盗賊団」と名乗った。
シュメッターリング盗賊団はヴァネッサという名の女盗賊を首領とし、子分たちは彼女を時に女神のように崇め、時に母親のごとく慕ったという。
首領ヴァネッサは、そんな子分たちを「家族」と呼んだ。
ヴァネッサにとって、彼らはみな庇護すべき子どもであり、愛すべき夫だった。
「家族」の結束は血よりも濃く、「親分」の愛は神よりも深い。
それが、シュメッターリング盗賊団の「家訓」だ。
「お前たちは盗み以外ろくにできないクソ野郎どもだ。だが、そんなクソ野郎をアタシは愛してる」
ヴァネッサは頻繁にこう語り、子分たちを鼓舞したという。
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