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※R18注意【有料記事】ある農夫の恋 part.4【「堕ちた神父と血の接吻」番外編】
神父様を初めて抱いた次の日、また、お袋と親父と三人で話し合った。
「オレ、あの人と結婚したい」
本気の想いを、二人に打ち明ける。お袋は「そうかい」とだけ告げてしばし黙り込み、親父は困ったようにお袋の顔を見た。
「そうだねぇ……別に、跡継ぎが欲しいってわけでもなし……」
難しそうに言うお袋に、親父も続ける。
「まあ……先祖代々の土地を耕してるわけでもねぇしなぁ……」
二人ともが複雑そうな顔をし、考えあぐねた様子でいる。
やがてお袋は、念押しするように伝えてきた。
「まず言っておくけど、あんたが好きなだけじゃダメだよ。弱みにつけ込んだり、無理やり縛り付けたりはしてないだろうね?」
「……オレ、そんなに信用ねぇかな?」
「信用はしてるよ。危なっかしいと思ってるだけさ」
「ええー……」
とはいえ、何となく自分でもわかる。
好きって気持ちがどうしようもなく膨らんだ時、何するか分かんねぇってのは、正直なところ否定できない。
……たぶん、人殺しだって、神父様のためならやっちまえるんだと思う。
「……あっしが気にしてるのは、あの人の心だ」
親父の方も腕を組み、苦虫を噛み潰したような顔で語り始めた。
「見るからに弱ってるし、傷付いてる。相当参っちまってるのは見りゃわかる」
「だから、オレが支えにならなきゃ……」
「いいや、そういうことじゃねぇ。今のあの人に、まともな判断はできねぇだろう。言ってる意味はわかるかい?」
「…………」
親父の問いかけには、黙り込むしかなかった。
神父様は、身も心もボロボロにされて、今なお先の見えない絶望の中にいる。
そんな神父様が、オレに求められて拒めるかって言うと、分からない。
あの夜は自分から縋ってきたけど、あんな酷い状態じゃ、縋っちゃいけないものにだって縋り付きかねねぇ。
「惚れてるのはこの際仕方ない。一緒になりたいって気持ちも汲んでやってるつもりさ。でもね、本当に好きなら……本当に大事にしたいなら、待ってやりな」
「ヨハンナの言う通りだよ。求婚するにしても、まずは傷が癒えてからだ」
二人の言葉に静かに頷き、席を立つ。
畑に向かう前に、ドアを開けて神父様の様子を見た。
「……!」
「……ぅ、く……っ、ぅうう……」
神父様は、太陽が苦手だ。
だから、オレらと違って昼に寝て夜に起きる方が楽なはず。……それなのに。
神父様は眠ることなく身体を起こしていた。
肩を震わせ、歯を食いしばって……悲痛な声で、呻き続けている。
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