【敗者の街番外編】愛されるにはまだ早い

 ある日、イオリからこんなメールが来た。

『そーいやこの前ホワイトデーだったね。グリゴリーさん、そもそもバレンタインチョコ貰えた?(翻訳:ブライアン)』

 何でも、日本のバレンタインは好きな野郎にチョコを渡す日で、その一ヶ月後がチョコを貰った野郎が三倍返しでお返しをする日なのだとか。

 文化が違ぇよ。いや俺は貰ってないけど、貰えないことがモテない証にはならねぇよ。なんならその日ブライアンがオハギ? ボタモチ? 作ってたから食わせてもらったわ、美味かったしむしろ勝ち組だっつの……みたいなことを送ろうとして、我慢した。

『ブライアンから似たようなモン貰った』

 ……てな感じのことを、ブライアンに訳してもらって送った。
 べ、別に見栄張ったとかそんなんじゃねぇし。色とか似たような感じじゃん?

『へー、良かったじゃん。ちゃんとお返ししなよ』

 そんな文言を翻訳しつつ、ブライアンはちら、と蒼い隻眼をこちらに向けた。
 相変わらず瞳に光はなく、感情は読み取れない。……だけど、何となく期待されているのはわかった。

「……何欲しい?」
「……欲しい……えと……」

 ブライアンはまだ、自分の感情を上手く認識できない。だから、こういう時ほど答えを出すのに時間がかかる。

「グリゴリー、さんの……手作り……欲しい」

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