【「堕ちた神父と血の接吻」番外編】ある兄の追憶
あれは、まだ俺たちがほんのガキの頃だった。
「あにうえ、どこに行かれるのですか」
「山の方。面白そうだろう」
「じいさまに叱られますよ」
コンラートはませたガキでな。元貴族だった母親の真似をしてか、物心ついた時からやけに丁寧な喋り方だった。
「きょうかつされるかも」
「それ、厳しく叱るって意味の言葉じゃねーぞ」
「……! し、知っています! これは、その、たとえばの話です!」
「ほぉー? なんの『例えば』だ? そもそも、正しい意味が分かってるのかね、君ぃー?」
「わ、分かってますから! ちゃんと! あにうえこそ、本当に分かっているかあやしいです!」
とはいえ、中身は年相応だ。まだ意味もわかってねぇような言葉をわざわざ使ったり、背伸びしたがる癖してガキっぽいところはとことんガキだった。
「良い子ぶるなら勝手にしとけ。じーさんのとこで、アリッサ達と遊んでろ」
ここから先は
3,125字
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?