![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/79664549/rectangle_large_type_2_6e835b95798e22e0fec7cf47da8f28a8.png?width=1200)
※R18注意【有料記事】Die Reise geht weiter.【「堕ちた神父と血の接吻」番外編】
※「堕ちた神父と血の接吻」の後日譚です。念の為ネタバレに気を付けてください。
※こちら、三部作の一話目になります。
それは、廃坑内でヴィルと暮らし始めてから、数ヶ月が経った頃。
私は片腕でシーツを握り締め、身体の底から湧き上がる渇きに耐えていた。
「ぁ……あ、……っ、く……ぅ、うう……」
血が欲しい。血が欲しい。血が欲しい。血が欲しい……
ここまで激しい吸血衝動は久しぶりだった。本能が糧を求め、苦痛が全身を這い回る。
……ヴィルはエルンストの手伝いに出ている。「何かありゃ、すぐに呼びに来ていいんすよ」とは言われているが……
「ぐ……ぅ、ううう……っ」
シーツを握り締めていた手を、ロザリオに伸ばす。
吸血衝動と呼べば深刻な響きだが、言ってしまえば空腹と似たようなものだ。
その程度のことで、呼びつけるわけにもいくまい。
エルンスト宅……つまりは私の実家と、この廃坑の距離はそう遠くはない。
普段であれば、ヴィルは休憩時間のたびに帰って来ては私にしつこく「何もなかった?」「体の調子どう?」などと聞いて再び仕事に戻っていく。
この程度のこと、耐えていればいい。耐えていれば、いずれヴィルは帰ってくる。
「が……っ、ぅぐ、ぁあ、あぁあぁ……!」
しかし、その日に限って、ヴィルはなかなか帰って来なかった。
飢えているから長く感じるのか、本当に時間も経っているのか、自らの感覚が何一つ宛にならない。
「はぁ……っ、は……ぁ……っ、ぁ、ぐ……ぅ、あぁぁぁっ」
肉体が本能に従い、ベッドから降りて地上を目指し始める。
ダメだ。誰かを傷つけてはならない。どれほど飢えていたとしても、ヒトを害するわけにはいかない。
……ああ、そうだ。祖父は動物の血をよく飲んでいた。
糧とするには養分が足りないとはいえ、気休めにはなるはずだ。
幸い、ネズミやコウモリといった類の獣であれば、少し探索すれば見つかるだろう。
逸る感情をどうにか抑え付け、開拓前の洞穴へと向かった。
***
どうにか、酷い飢えを凌ぐことはできた。
再び寝台に身を横たえ、渇きが落ち着くのを待つ。
「……っ、う、んん……っ」
……しかし、どうしたものか。
「そちら」から与えられることも多かったからか、吸血衝動と連動するように……その、何と言うのか……食欲の裏に、また別の欲求が潜んでいるのに気が付いた。
ここから先は
Amazonギフトカード5,000円分が当たる
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?