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譚月遊生季
2021年8月29日 17:36
ある何の変哲もない日の、珍しくもない夜のことだった。 いつも通りに眠っていた僕は、妙な寝苦しさを感じて目を開けた。「悪い。起こしたか」 凛とした声が響く。 ベッドサイドのわずかな明かりに、血のような赤い髪が照らされていた。「……夢?」 僕の問いに、目の前の彼は静かに首を横に振る。「……顔を、見るだけのつもりだったのだがな」 あの「街」以外では会えるはずのない、僕の大切