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小さいころのトラウマを癒す歯医者の話し

「ヤバい。またむし歯かも。」

約1ヶ月前にそう気がついて、急いで歯医者へ。
それから治療を始め、今日は3回目。やっと型取りが終わったので、次回には新しい被り物を入れてもらって、治療が終わる予定。


それにしても、私はこの歯医者が好きだ。

とくに好きなのは、治療イスから見える小さな窓。
殺風景な治療中の世界から、ちょっと目を横にやると、だいたい窓から青空が見える。今日は雪の降る空がみえた。この歯医者は建物の2階にあるから、見通しがいいのだ。
午後の時間に行くと下校中の小学生の声が聞こえてくる日もあれば、温かい季節には気持ちいい風がそよそよと届く日もある。


いまだに歯医者恐怖症が残っている私にとって、この癒しの窓は相当な心の友。お気に入りになっている。


というのも、遠い昔、物心ついたころに私が通っていた歯医者は、それはそれは恐ろしい場所だった・・・。

むし歯が痛くて泣きながら母に連れて行ってもらった歯医者さん、そこにいたのは鬼先生。

「もっと口を大きく開けて!」

怒鳴るように乱暴に繰り返す先生に、泣きながら治療を受けるわたし。

家に帰ってからも治療したところから血が出続けて止まらない。ずっと泣き続けてた。痛みも、先生に対しての恐怖もマックス。さいあくだった。

小さな頃のむし歯治療の体験がトラウマになって、歯医者恐怖症になる方は少なくないとか。

以来、わたしにとっても歯医者は恐怖のかたまりの場所になり、虫歯ができてもとにかく行くのが嫌で嫌で、ちょー悪化してから泣き泣き歯医者にいって、もちろん重症化。そんなことを繰り返してきた。


ようやく今の歯医者さんに出逢えたのが、20才の頃。それまでいろんな歯医者を転々としていたが、ようやく安心できる場所を見つけた、というのが本音。

お気に入りの窓がある歯医者、ではあるが、本当のお気に入りはやっぱり先生だ。

スピーディでベテランなだけじゃなく、治療に向かう姿勢に好感が持てる。多くを語るわけではないけど、的確で分かりやすい言葉。その言葉や治療する手の動きから温かみがただよってくる。私にとっては恐怖が和らぎ、安心いっぱいの空気感。

そうは言っても、やっぱり治療のたびに身体に力が入って、勝手にカッチーンってなってしまうけど、それも含めて、なんだか居心地よく受け止めてもらえているように感じている。


30代~40代のころは転職や引っ越しなどで、また他の歯医者を転々としたけど、50代になって再び通える距離になったので、帰ってこれた。

最新の機械とか、綺麗な室内とかがあるわけじゃないけど、やっぱり私の歯医者はここだ。長いお付き合いをお願いしたいので、先生にも健康に気を付けてくださいね、と心で思っている。



街には次々と新しいお店とかおしゃれなお店がオープンして、目移りしてしまう。そんな変化に刺激をもらいながら、でも結局は、自分が好きなオーナーさんのもとへ帰る。

いつ行っても安心で、信頼出来て、居心地がいい。そんな場所が私は好きだな。


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