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ヨルシカ/春ひさぎ が、小説のなかで流れたら

前曲のハードさを引きつぎながら、ギターの存在感はピアノにチェンジ。脇役となったギタリストは、裏拍にカッティングを入れる。

2回しめからは、ピアノも裏に和音をかさねる。ドラムはスネアのゴーストノートやハイハットのきざみで3連のグルーヴに。

高音から低音までワンフレーズで行き来するAメロ。《どうしたんだいそんな顔してさぁ》に《別にどうともないよ》と一人二役。楽器隊はイントロのプレイを淡々とつづけている。バスドラムの連打がアクセントになる。

Bメロなしでサビに入る。かき鳴らされるギターで空間が埋められる。ダチー、ダチーと、ハイハットをオープン/クローズするフィルインが効果的なキレ。

《詮の無い》という言葉がはっきりと発音される。そんな時代の語彙で歌われているのであれば、数秒まえのあれはーー聴きながしていたがーーやはり《おくんなまし》と言っていたのだろう。

イントロのリフレインにもどると、また淡々とした3連のグルーヴが追究される。裏拍のピアノがメロディアスに上昇していく。

そろそろマンネリへの工夫が必要になってくる。手をあげたのはやはりピアニスト。小節のお尻に派手なオブリガードを入れ、バンド全体がブレイクをもうける。負けじと素早いオブリを入れるギターに、もう一度ピアノが応じる。

2番のサビでも耳に飛びこむ《詮の無い》。バックの演奏にも耳をむけると、歌メロにつかず離れず、舞いおどるギターが聴こえてくる。

流れのままに突入するソロで、さらに躍動するギタリスト。ボリュームをアップして前にでる。一方で、歌メロをなぞるフレーズはオクターブを下げて控えめに。

バンドがブレイクーー伸ばされたギターのトーンがのこるなか、ヴォーカルは静かに《陽炎や》と歌いはじめる。さっきまでのサビのメロディだ。伴奏はジャジーなピアノで、左手はランニングベースで動きまわっている。

歌とピアノがルットゥットゥとユニゾンしたところで、ダチーのフィルイン。バンド全体がもどってのサビへ。やはり聴こえる《詮の無い》。

《愛して欲しいわ》で下るフレーズの先に、バイテンの疾走感。3連はキープされているから、シャッフルのノリで加速していく体感。ギターもテンションを上げ、アグレッシヴな速弾きを差しこむ。

走りながらも裏に和音を入れてグルーヴを高めるピアニスト。派手なフレーズで盛りあがり、やはりもどってくるイントロのリフレインを、かれがひとりで演じて幕をとじた。


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