見出し画像

その③演劇編!理想の字幕提供方法 アンケートの結果発表!聞こえない、聞こえにくい人の「字幕」について聞いてみた。

このページをみていただき、ありがとうございます。
このアンケートは、字幕制作会社である私たちが、もっとたくさんの芸術作品を自由に字幕で楽しみたい方の本音を集めたいと思って企画したアンケートです。字幕を求めている方と一緒に、私たちはどんな未来を目指していけるのか、この声を通して考えていきます。

対象者:耳が聞こえない・聞こえにくいひと、字幕が必要なひと
実施方法:インターネット調査
アンケート期間:2021/3/19~2021/4/1(有効回答者数:141)

その②では映画の「字幕の提供方法について」のアンケート結果を掲載しました。映画の場合はスクリーンに字幕を表示される方法・メガネ型字幕・タブレット型字幕の3種類が主流です。では、演劇はどのような方法があるのでしょうか。

バリアフリー演劇とは

パラブラでは、さまざまな劇団と「バリアフリー演劇」の制作に取り組んできました。

バリアフリー演劇について
私たちがここで使っている『バリアフリー演劇』という名称は新しい造語です。これまでの演劇の舞台を、目が見えない人たちや耳が聞こえない人たちと一緒にみんなで楽しめるように、セリフの字幕表示や音声ガイドを追加したり、更にシナリオや演出にも工夫を加えていこうという新しい試み=ムーブメントのことを指しています。

こういった取り組みに制作として参加する中で、演劇には映画の字幕と別のニーズや提供方法があることがわかりました。まずはその①で紹介した演劇の字幕のアンケートです。

4-1. 劇場で、字幕付きの演劇を観たことがありますか?

画像1

「劇場で観たことがある」方が56人(39.7%)、「テレビや配信で観たことはあるが、劇場ではない」が37人(26.2%)、「字幕付きの演劇があると知らなかった」方が35人(24.8%)と、まだまだ経験者は少ない状況です。

映像の字幕とは違って体験した方は少ないと思います。自分だったらどんな方法で楽しみたいか、一緒に考えてみてください。

4-2. 劇場へ演劇を観に行きました。字幕を自由に選べるならどの方法で楽しみたいですか? 1つだけ選んでください。

A:舞台端に字幕の電光掲示板

④舞台端字幕

B:舞台背景等に字幕投影

⑤舞台背景字幕

C:劇場でメガネ型端末を借りる

②メガネ字幕

D:字幕専用タブレット端末が固定された座席で観る

⑥座席字幕

E:字幕専用タブレット端末を借りる

③タブレット字幕

F:台本を表示できるタブレット端末を借りる

⑦台本タブレット表示

G:事前の紙台本貸し出し

⑧台本貸し出し

結果は、選択した方が多い順に理由を合わせてご紹介します。

画像2

B:舞台背景等に字幕投影・・・74人(52.5%)

⑤舞台背景字幕

「一体感を味わいたい」「できれば前方席に座り臨場感を感じたいので」
「出演者をじっくり見たいため」「動きと共に字幕が見えた方が楽しめる」
というような、一番舞台を自然に感じられるという意見が多かったです。そのほか、「1番視点の移動が少なくて見やすそう」「舞台は薄暗いので、字幕投影の方が見やすい」「映画でもおなじことが言えるが視線はなるべく動かさず、かつ、聞こえる人も関係なく同じものを同じように見て楽しみたい。」というように、この方法が映画のスクリーンに表示される字幕と同じだと感じられる方も。
さらに「舞台背景に投影するのが1番、その舞台の雰囲気を壊さないと思うから」「字幕含めて演出にしてほしい」「一番楽である。さらにセリフが左右に出ると話者がわかりやすいし、視覚的に面白い」と演出としての可能性を感じる方もいらっしゃいました。

C:劇場でメガネ型端末を借りる・・・27人(19.1%)

②メガネ字幕

全て経験あったりしますが一番良かったのは字幕メガネでした。というのも舞台全体が広く、台詞を発している人に向けがちなので字幕メガネでしたら、発している人にちょうど字幕の位置に置けるという点が私としては一番良かったので選びました」「演劇は動きがあるので、視線についてくるメガネ型が見やすいように思うので」「視線の移動が少ない方法がよい。スクリーン投影だと役者とスクリーンとがかなり離れてしまうことがある」「ステージから目を離してもセリフを耳で聞くのと同じように見て内容がわかるから」「オペラグラスで見ようと思うとメガネ端末がベストなのかな、と思いました」その②でまとめた視線移動の利点がここへきて発揮されました。
ほかには、「舞台上の字幕の設置は作品の雰囲気にも影響してしまうので、字幕は字幕でこっそりと見たい」「舞台に字幕が出ると舞台の表現を邪魔してしまいそうなので」「一番見やすく、健聴者にも邪魔にならないのではと思うから」という配慮の意見もありました。

A:舞台端に字幕の電光掲示板・・・19人(13.5%)

④舞台端字幕

単純に「見やすそう」という意見が多かったです。オペラなど外国語の公演でも使われてきた方法のため、経験がある方も多かったです。「その他の方法だと、お芝居や内容に集中できない。目線を動かす作業回数をなるべく減らして鑑賞したい」「皆が楽しめることが大事であり、舞台の端なら気にならない&健聴者へのアピールにもなるため」というような、メガネを選んだ人の配慮に近い意見もありました。

D:字幕専用タブレット端末が固定された座席で観る・・・10人(7.1%)

⑥座席字幕

「内容を知りたいときに、字幕をみたい。また一番楽に見れる方法と思う」「演者の動きを見ていたいから、字幕は見たい時に見られればいい」と、字幕を重視しない意見も。ライトユーザーかと思いきや、手帳を持っている難聴の方でした。固定の字幕端末はすでにサービスを導入している劇場もあるため「前もって予約時に字幕タブレットを借りられるかを聞いてから行く」というろう者もおり、鑑賞方法として浸透していると感じました。

E:字幕専用タブレット端末を借りる・・・6人(4.3%)

③タブレット字幕

自分の好きなようにタブレットを動かしながら舞台の世界を楽しめるから」「舞台の場合は奥行き感を感じられる事はとても重要なので舞台上のどこに字幕をつけたら観やすいかが体験したことがないので分からない」など、1つだけを選ぶ設定のため、固定の字幕端末と票が割れましたが希望を感じる方も多いようです。

F:台本を表示できるタブレット端末を借りる・・・2人(1.4%)

⑦台本タブレット表示

様々な経験をしたなかでこれを選択する方が。「現在は安価なタブレットも多く出ているため、タブレット形式であれば気軽に導入しやすいのではと思う。文字の大きさも気軽に変えたりもできる」たしかに、すでにある台本をタブレットで貸し出すのみ、導入の方法として一番「手軽」なのではないか、という意見でした。

G:事前の紙台本貸し出し・・・0

⑧台本貸し出し

「事前の紙台本貸し出しもいい。以前、歌舞伎を見るときは図書館で本を借りて事前に読んでいきました」と自由記述に書いた方もいましたが、この選択肢を選ぶ方はいませんでした。
一般的に対応される劇団も多い中で、下記のような意見もあり、あまり歓迎されない方法であることがうかがえます。「事前の台本貸し出しは利用したことがあるが台本を読んだところで内容は理解できても(ねたばれ)台詞やアドリブは聴き取れなかったので残念」「その人が楽しめるなら良いと思うが、私自身はあまり事前情報は入れたくないタイプなので次の展開が目に入ってしまう恐れがある方法は避けたいと感じた」

「字幕」はただ台本の台詞を書き起こしているのではなく、表記やタイミングなど演劇の進行にあわせて楽しむための工夫ができます。
「台本」ではなく「字幕」の形を選ぶ方が多いのはそういった背景も影響しているのではないでしょうか。進行に合わせた工夫=同時性が重視されていることがわかりました。

では、最低限、この対応さえあれば演劇を観に行きたい、というラインはどこなのでしょうか。


4-3. この情報保障があれば観に行きたいという対応を教えてください。いくつでも好きなだけチェックしてください。

画像17

人気順はほとんど変わらずでした。やはり、舞台上に字幕が表示される方法の人気がうかがえます。ただ、字幕専用タブレット端末や台本の貸し出しについては1つだと選択しなかったものの、「この情報保障があれば観に行きたい」と思う方は一定数いらっしゃるということがわかりました。

B:舞台背景等に字幕投影・・・118人

A:舞台端に字幕の電光掲示板・・・83人

C:劇場でメガネ型端末を借りる・・・63人

D:字幕専用タブレット端末が固定された座席で観る・・・59人

E:字幕専用タブレット端末を借りる・・・46人

F:台本を表示できるタブレット端末を借りる・・・33人

G:事前の紙台本貸し出し・・・24人

今回は字幕がメインのアンケートでしたが、
字幕以外にも、聞こえない・聞こえづらい方が演劇を楽しむ方法はあります。この選択肢には、舞台手話通訳・ヒアリングループ・振動を感じる装置、などを追加してみました。結果は

・振動を感じる装置…19人
・ヒアリングループ…35人
・舞台手話通訳…43人

これらの対応も、一定のニーズがあることが分かります。
音を「光」や「振動」で届ける様々な機器や、指定された座席にヒアリングループを設置して音声を聞きやすくする方法を用意する映画館や劇場があります。

スピーカーに音を出すかわりに、ループ状の電線に音の電流を流し、磁界として音の信号を空中に出すのがヒアリングループ(磁気誘導ループ、磁気ループ)です。この磁界の音信号は補聴器や人工内耳の「Tモード」あるいは専用受信機で聞くことができます。(東京工業大学 未来産業技術研究所 中村研究室 のHPより)

舞台手話通訳に関しては、その①でも紹介したTA-net(シアター・アクセシビリティ・ネットワーク)さんが動画でも紹介しているように、新たな演劇表現としても注目されています。

その①でお伝えしたとおり回答者の聴こえ方も様々で、補聴器を使っていない方や手話がわからない方もいらっしゃいますが、それぞれの対応にニーズがあり、確実に観に来たいと思う方がいらっしゃると言えます。

③まとめ


今回は「演劇の字幕の提供方法について」についてのアンケート結果を掲載しました。

一番人気は「舞台背景等に字幕投影」
・メガネ型端末は視線移動がスムーズであることから、好意的に思う方も多い。健聴者への配慮の意見も。
・タブレット型は手軽に導入できることからも鑑賞方法として浸透してきており、ある一定のニーズがある。
・「台本」ではなく「字幕」の形を選ぶ方が多いことから、同時性が重視されているとわかる。
・字幕以外にも、聞こえない・聞こえづらい方が演劇を楽しむ方法はあり、多様なニーズがある。

さまざまな方法があることや観客の皆さんがそれぞれに自分の好きな方法を確立していることから、改めて「演劇を観たい」というニーズを感じる結果になりました。
それぞれの作品に合わせた「字幕」の提供方法を選び、それをきちんと告知することで、観客が間違いなく増えるといえるのではないでしょうか。

次回も引き続き、アンケートの結果をご報告していきます。お楽しみに。

いいなと思ったら応援しよう!