その①字幕のユーザーとは?アンケートの結果発表!聞こえない、聞こえにくい人の「字幕」について聞いてみた。
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最近、日本語の映画や演劇などでも字幕付きで楽しめる作品があるのはご存じですか?専用のアプリを使った字幕対応も全国の映画館で展開されています。この状況が浸透していく一方、さまざまな意見を聞くようになりました。このアンケートは、字幕制作会社である私たちが、もっとたくさんの芸術作品を自由に字幕で楽しみたい方の本音を集めたいと思って企画したアンケートです。字幕を求めている方と一緒に、私たちはどんな未来を目指していけるのか、この声を通して考えていきます。
対象者:耳が聞こえない・聞こえにくいひと、字幕が必要なひと
実施方法:インターネット調査
アンケート期間:2021/3/19~2021/4/1(有効回答者数:141)
回答者について
まずは回答者の属性についてまとめます。ひとくちに「聴覚障害」といっても、字幕のニーズは、「聞こえ」や「経験」によって違うためとても重要なファクターとなります。「字幕ユーザー」がどのようなひとなのかをうかがい知ることもできそうです。
1-1 年齢
10歳未満 0人/10代 3人(2.1%)/20代 17人(12.1%)/30代 31人(22%)/40代 47人(33.3%)/50代 33人(23.4%)/60代 9人(6.4%)/70代 1人(0.7%)/80歳以上 0人 20代から50代の方がおよそ90%を占めます。
1-2 性別
女性 106人(75.2%)/男性 33人(23.4%)/ノンバイナリー 1人(0.7%)/性別なし 1人(0.7%)
1-3 お住まいの都道府県
東京都が1番多く43人 (30.5%)、千葉県と神奈川県が17人、大阪府10人、兵庫県8人、愛知県6人 以下、5人以下が北海道、東北地方、岩手県、宮城県、山形県、茨城県、栃木県、群馬県、岐阜県、静岡県、三重県、滋賀県、京都府、奈良県、広島県、徳島県、福岡県、宮崎県、沖縄県と、全国からご回答いただきました。※自由記述のため東京の場合、東京・tokyo・北区などの回答も含みます。
1-4 障害について
難聴者 61人(43.3%)/ろう者 55人(39%)/中途失聴者 16人(11.3%)
それ以外は自由記述で、APD(聴覚情報処理障害)の症状がある方が4人、あと「いろいろ」「脳性麻痺」「聞きづらい」「高音域が聴こえない」と回答された方もいました。「聴覚障害」とひとくちにいっても様々です。
これまでのヒアリングから聞こえの有無や経験によって字幕についてのニーズが違う傾向があるため、アンケート結果の参考にするためひとつ選んでいただきましたが、とらえ方は人によってさまざまであり、明確な属性とはいえない場合もあります。
一般的に補聴器等をつけても音声が判別できない場合を「ろう者」、残存聴力を活用してある程度聞き取れる人を「難聴者」と言っていますが、手話を母語もしくは主なコミュニケーション手段とする人を「ろう者」、音声言語が中心で手話を使わないか補助程度の人を「難聴者」と言うこともあります。(東京都聴覚障害者連盟HP「聴覚障害者とは」より引用)
中途失聴者(ちゅうとしっちょうしゃ)とは、聴覚障害者の一区分で、音声言語獲得後に聴力が下がったり、聴力を失った人のことである。音声言語獲得前の失聴者は、ろう者(又は難聴者)という。(『ウィキペディア(Wikipedia)』より引用)
聴力検査で難聴はないはずなのに、言葉がよく聞き取れない。そのような人たちを、聴覚情報処理障害(APD)と呼び、現代社会にかなり多くの人が同じ症状で悩んでいることが指摘されています。しかし、普通の耳鼻科に行っても、聴力は正常だからと言われ、相手にされません。(聴覚情報処理障害(APD)のサイトより引用)
1-5 聞こえなくなった時期
生まれつき 64人(45.4%)/幼少期~20歳ごろ 48人(34%)/20歳以降 21人(14.9%)
自由記述は「めっちゃ最近一昨年くらい?」「耳は聞こえます(※脳性麻痺の方)」「いつからか分からない」「40歳代」「聞こえにくくなったのは20歳よりすこし前、その後少しずつ聴力が落ち30歳前にほとんどきこえなくなった。」「35歳」「17歳で難聴診断、40代で悪化」「生後3ヶ月」と、多種多様でした。
これも聞こえの有無や経験によって字幕についてのニーズが違う傾向があるため、アンケート結果の参考にするためお聞きしました。
1-6 身体障害者手帳の有無
手帳を持っている方が123人(87.2%)、持っていない方が18人(12.8%)。先ほどいわゆる聴覚障害とされる「ろう者・難聴者・中途失聴者」であると答えた方は計132人なので、最低でも9人は身体障害者手帳を持っていない字幕ユーザーがいるとわかります。
日本の障害程度は世界保健機関(WHO)の基準に比べて大変厳しいものになっています。普通の会話が難しい平均聴力60デシベルの人は障害者手帳を取得できません。(特定非営利活動法人 東京都中途失聴・難聴者協会HP「聞こえない人の福祉 - 聞こえに困っている方へ」より引用)
この方たちが、文化芸術に触れるときどのように字幕を使っているのか、このあとは字幕の経験について聞いています。
2-1. テレビを観るとき、字幕を表示しますか?
「字幕がある番組は必ず表示する」と答えた方は、「常に表示させている」「字幕は常にオンの状態」と回答した方も合わせて127人で90%。ほかに「生放送の遅れ字幕以外は表示させています」「UDトークなど文字変換アプリを活用することも。」という方もいました。
「たまに表示する」と答えた方は、8人。ほとんど難聴者、うち4人は手帳を持っていない方でした。「ほとんど表示させない」はおらず、「表示させない」は2人、いずれもAPDの方でした。
だいたいの方がテレビの字幕を活用しているということがわかりましたが、なかには、「テレビに字幕があると知らなかった」(20代、ろう者)、「ほとんど観なくなった」(10代、障害の回答は「いろいろ」)という方もいらっしゃいました。
総務省がまとめている「令和元年度の字幕放送等の実績」によると
令和元年度の「総放送時間に占める字幕放送時間の割合」は、NHK総合が86.5%(※埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県を放送対象地域とする放送局の実績)、在京キー5局が65.3%(日本テレビ・TBSテレビ・フジテレビ・テレビ朝日・テレビ東京の5局)
生放送や、様々な理由で対応していない番組はいくつかありますが、ほとんどの番組に字幕がついているといえます。
では、映画・演劇はどうでしょう。
3-1 . 映画館で日本映画を日本語字幕付きで観たことはありますか?
「映画館で観たことがある」が108人(76.6%)だったものの、「日本映画に字幕があると知らなかった」が7人(5%)と、テレビより認知度が低いことがうかがえます。
知らなかった方のなかにはAPDの方や手帳を持っていない方も多く、障害団体などに属していないために情報が行き届いていないことも予想されます。聞こえない方向けの字幕つき上映はまだまだ一般社会に浸透していないといえます。
また、「テレビや配信では観たことがあるが、映画館ではない」方が22人(15.6%)でした。
そのほかにも「見たい映画に字幕がついてないので見たことがない」(30代、APD)、「予定が合わずに見に行けたことがない」(30代、ろう者)、「字幕が無い映画館しか近くにない」(30代、難聴者)、「基本…映画館に行きません」(20代、難聴者)という声がありました。
現状、邦画と洋画を合わせて、年間約1200の映画が公開されています。そのなかで、日本映画に字幕を付けて上映する作品は約100作品、10%にも満たない状況です。
すべての映画館で字幕付きが見られるわけではなく、日本映画の字幕版上映を定期的に行っている映画館は一部で、上映も公開中の数日間のみ、ひどいときには朝の回のみ、ということもあります。
一方で、字幕付きを一定期間必ず実施することで聞こえない・聞こえづらいお客様の心をつかんでいる映画館もあります。また、作品側の判断ですべての回を字幕付きにしたり、要望をうけて字幕付き上映の回が増えることもあります。
日本映画の字幕付き上映が少ない原因の一つは、お客さんが少ないことだといわれています。聞こえない・聞こえづらい方にすら知られていない、なんとなくどんなものかわからない、認知度が低い状態では、お客さんも増えません。
私たちがこのアンケートを公開することの目的のひとつも「周知」です。字幕を使う方・使わない方、のみならず、映画館の方、製作の方、使わない一般の方が「字幕」について正しく理解し、「字幕」が当たり前の選択肢になることを目指します。
4-1. 劇場で字幕付きの演劇を観たことがありますか?
「劇場で観たことがある」方が56人(39.7%)、「テレビや配信で観たことはあるが、劇場ではない」が37人(26.2%)
そのほか、経験がある方の個別回答は「料金を払って見るような演劇ではなくて、学生が文化祭などのイベントでやるような演劇でスクリーンに投影された字幕付きで見たことはある。」「字幕付きのオペラなら見たことがある」「あるとは知っていますが、見たい演劇に字幕が付いたことがない。」
「観たことがない」とだけ答えた方が5人。知っている方はの個別回答は「字幕付きの演劇があることは知っているが、見たことはない。」「知っているが、観に行ったことはない。」「そもそもそんな数ないですよね?」
最後に、「字幕付きの演劇があると知らなかった」方が35人(24.8%)、「そもそも演劇を見ない。」「演劇を見たことがない」と答える方もいらっしゃいました。
映画より認知度が低い…!もったいない!!演劇でも字幕付きの活動はどんどん進化して、だれもが情報を取れて、手軽に楽しめるようになっています。以下に、ふたつのサイトを紹介します。ぜひのぞいてみてください!
TA-net(特定非営利活動法人シアター・アクセシビリティ・ネットワーク)「みんなで一緒に舞台を楽しもう!」を合言葉に活動しているNPO法人。聴こえなくても・見えなくても観劇を楽しみたい方と、台本貸出や手話通訳、字幕投影などを担う団体、公演主催者・劇場とをつなぐ活動を幅広く展開しています。アクセシビリティ公演情報サイトでは、全国各地の最新の公演情報が検索できます。
THEATRE for ALL
だれでも、いつでも、どこからでも。ひとりひとりが繋がれる “劇場”。
劇場体験に、アクセシビリティを。それが『THEATRE for ALL』のミッションです。多言語字幕・手話通訳・音声ガイドなど、その人にとってのアクセシビリティを高めた映像を配信。「ラーニング」や「LAB」などで学びの場を生み出しています。
①まとめ
今回は回答者の属性から「字幕ユーザーについて」と「テレビ・映画館・劇場での字幕の経験について」についてのアンケート結果を掲載しました。まだまだ認知度が低いこと、様々なところで様々な取り組みが始まっていることもご紹介しました。次回は「字幕の提供方法について」結果をご報告していきたいと思います!お楽しみに!
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