そんなことって起こるのね

2人目の臨月に入った頃。
「生まれてももって1ヶ月。
ひどい時は誕生死ということもある」と
私に告げたのは
会ったこともない超音波の専門医師。  
突然呼び出されそう言われて、転院されたって勧められ
何がなんだかわからないうちに
予定入院の日が来た。
お先は真っ暗ででも産まなきゃならないこのお腹。
涙はこんなにも出るのかと。
オヤジはすでにやる気まったくなし。
ただ1人ナツキだけは赤ちゃんが病気かもしれないと告げても(さすがに生きてうまれてこないとは言えなかった)
「まだ生まれて来ないとわからないでしょ。病気じゃないかもしれないし。」と言った。わずか4歳。誰よりも肝が座ってる。
その当時、1人者の弟が家に来てくれていた。
ナツキと2人の暮らしは支えになるものの、行き詰まることもあり、弟が来てくれていることは助かった。
無言でファミレスでご飯を食べたなぁ。

生まれる兆候はなく家にいる。
そのわけのわからないとにかく情報的には一個もいいことが載ってない「18トリソミー」とやらは一体なんなんだよ。どうしたいんだよ、どうしてうちの子なんだよ。
なんだっていいよ、命だけは持って行かないで。
目のフォルムは全く原型を留めないくらいに毎日脹れまくってた。

思えば。
あれは普通に血液検査をした。母子手帳の特典でできるやつ。よく覚えてないけど。それで何か結果が出たんだろうな。

9月下旬
ある日名前を名乗らず、女の声でこんな電話があった。
「もうすぐ生まれるね、ダウン症の赤ちゃん」

どこのだれなの?なんでそんなこというの?

オヤジ、大阪出張中、ナツキと2人。

怖くなった私は友人に電話をした。
友人は夫婦で駆けつけてくれると言ったが
大丈夫と断った。

オヤジの女関係を疑った。

そして警察に届け出た。悪質なイタズラ電話として。

病院にも言った。『ダウン症の子が生まれる』電話があり、日本ダウン症協会から冊子まで送られてきてる。
聞けば私を名乗って、ダウン症の子を産むので産む前に情報が知りたいと熱望したとかで前例はあまりないが出産前に送付したと。こんなことするのは病院。だって検査したことも、住所も名前も予定日も知ってるなんてそうとしか思えなかった。

その産院の女院長が超音波を当てた。
「ダウン症の特徴は鼻の穴が上を向いて、目と目の間が開いてるけど、この子は違います。ダウン症ではないわ」

この発言。今思えばとんでもないんですがね。
その時の私は不安爆弾。

でもねダウン症つまり22トリソミーではなかったけど
18トリソミーだったわけで。

私が希望を聞かれなかった「出生前診断」を
していたのではないかと思われます。

後から聞いたら
その時私は誕生日前で34歳。
9月の24日に35歳。
34歳の人にはやらないと女医は断言してたけど
11月の出産時には35歳なわけだから
そんな理由はどう?言い訳よね。

しかしそれから程なく私はこの女医に呼び出され、
冒頭の超音波専門ドクターからの宣告を受けることに。
そして掌返しで「18トリソミー」を宣告されたわけです。

病院は都立病院を選んだ。
大部屋ではなく
妊婦さんと違う婦人科病棟にしてもらった。
個室。

一連のこの話を
これからお世話になる心理士に話す。
半分信じてもらえたようなそうでないような。

色々な処置が
すべてむなしい。
赤ちゃんに会えるならどんなことでも耐えよう

でも耐えたところで生きて生まれて来ないのか。

絶望感しかない。

ずっと寝てなかった。寝てもおきてしまう。
人生で初めて睡眠薬をもらった。

4時間ほど続けて寝たのはきっと
1ヶ月ぶりだったと思う。

オヤジはやる気がなくてまったく名前をつけようとしなかった。

もしも、もしも産声なしなんてことになったら。

考えよう。誰よりも素敵な名前を。

悩んだ結果「真結 (まゆい)」と決めた。  

まっすぐにあなたを中心に人を結びつけられる人間になれるように。

ともだちが言った言葉を思っていた
『アナタが生まれて来るのを待っているよ』

ここ数日の絶望の海に溺れていた私は
すっかり待つことを忘れていた。

そうだ。待ってたんだよ。ずっと待ってたんだよ。
だから早く生まれておいで。

待ってるよ。


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