【過去作】三人のへっこき【童話】
むかしむかしのおはなしです。
あるところに、三人のへっこきがおりました。ひとりはへっこきおばあ、もうひとりはへっこきあんちゃ、のこるひとりはへっこきむっすうといいました。
へっこきおばあはミカンが大好きですが、いちいちミカンをひとつずつとるのがめんどくさいという、たいそうななまけものです。そこでにわのミカンの木にしりっぺたむけて、きもののすそをよいしょとめくり、ぷぷぷぷふー!と、へをこきました。するとミカンがたくさんぼたぼたとおちました。
「おおう、これでミカンがたんとくえるわい」
へっこきあんちゃはりょうしです。うみにふねを出してさかなをとるのですが、つりざおもあみもつかいません。ふねの上でふんどしはずしてはまにしりっぺたむけて、ぶっこら! とへをこきます。すると、大きななみが立ってたくさんのさかながはまにうちあげられました。
「よっしゃあ、これで今日のりょうはおわりじゃ」
へっこきむっすうはまだ小さい女の子です。生まれたときおぎゃあとうぶごえをあげるかわりに、ちいさなかわいいおしりから、ぶおう! とへをこきました。それはそれはすごいへで、おさんばさんもへっこきむっすうのおかあもみんなぶっとびました。へっこきむっすうのおとうはいいました。
「やいやい、なんだいやこの子のへは。いえまでぶっとんだだ」
そんな三人のへっこきが、だれがいちばんのへっこきかへっこきくらべをすることになりました。むらのしゅうもけんぶつにきました。さいしょにへっこきおばあがいいました。
「川にはしがなくてみんなくろうしてるら。おらがはしをかけてやる」
へっこきおばあははしのたもとの大きなすぎの木にしりっぺたむけて、きもののすそをよいしょとめくり、ぷぷぷぷふー! と、へをこきました。するとすぎの木はねもとからみしみしとぬけて、どすん、と川の上にたおれました。むらのしゅうはそりゃあもうたまげました。へっこきおばあはだいとくいです。
「どうじゃあ、これではしができただ」
「やいやい、えらいこんじゃ、ありがたいけえが」
それを見たへっこきあんちゃははなでわらいました。
「なんのなんの。おれのへをみてろやあ」
へっこきあんちゃはとなりむらにつづくみちにみんなをつれてゆきました。となりむらは山をこえたむこうで、やまみちをあるいてゆかねばなりませんが、ほそいやまみちに大きな大きないわがどすんとひとつころがっています。いわにじゃまされてせまいところをとおらなくてはならないのでみんなふべんしていました。へっこきあんちゃは、ふんどしはずしておおいわにしりっぺたむけて、ぶっこら! とへをこきました。するとおおいわはごろんとごろがってがけの下へ。むらのしゅうはそりゃあもうたまげました。へっこきあんちゃはだいとくいです。
「どうだやあ、これでみちがひろくなっただ」
「やいやい、えらいこんじゃ、しんど(新道)がえらい広くなっただな」
それを見たへっこきむっすうはにっこりわらいました。
「おら、となりむらに行くみちをつくるだ。みんな山をおりてやあ」
なんだいなあ、とふしぎにおもいながら、むらのしゅうは山をおりました。三人のへっこきも山をおりました。へっこきむっすうはいいました。
「おらのへはすごいで、むらのしゅうもへっこきおばあもへっこきあんちゃも、おらからはなれて、あたまを手でかかえて丸くなっててくれやあ。へっこきあんちゃはとなりむらに伝えてやあ。でないとあぶないで」
みんなは言われたとおりにあたまを手でかかえて丸くなりました。へっこきあんちゃはとなりむらにハトをとばしました。ハトはとなりむらにとんでゆき、「みんなあぶないでまるくなっててやあ!あとはかたすで気にしないでやあ」といいました。それでとなりむらのしゅうも丸くなりました。へっこきむっすうは、きもののすそをちょいとからげて、ちいさなかわいいおしりから、ぶうおおおう!!!とへをこきました。じめんがどおおおんとゆれました。むらのしゅうがおそるおそるかおをあげると、となりむらとのさかいにある山のどてっぱらにおおきなあながあいていました。むらのしゅうと二人のへっこきはそりゃあもうたまげてたまげて声も出ませんでした。
「あのあなをとおってきゃあとなりむらはすぐだ。おらあ、先に行ってかたづけしてくるで。おばあとあんちゃもこいや。ちっとらんごくになったけえが、おらちゃっちゃとかたすで気にせんでやあ」
むらのしゅうもへっこきむっすうのあとをおって、あなをとおってとなりむらにいってみました。となりむらのしゅうも「なにごとだなにごとだ」と大さわぎ。へっこきむっすうのへでとばされてきたつちくれや石をへっこきむっすうとへっこきおばあとへっこきあんちゃががへでぶっとばしてかたづけておりました。あっちでぷぷぷぷふー!、こっちでぶっこら!、あっちこっちでぶおう!ぶおう! 村はたちまちきれいにかたづきました。
「いやはやえらいへっこきだなあ」
それから三人のへっこきのむらととなりむらはらくにいききができるようになり、むらのしゅうはたいへんによろこんだということです。三人のへっこきのおはなしはこれでおしまい。めでたしめでたし。
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幼稚園ですばなししてみた結果わりと受けました。まあおなら話は受けるのです。このお話は『へっこきじっさま一代記』や『へっこきあねさ』の系列のお話ですが、あくまでも私の創作です。おならでトンネル作る話はわたし知りません。みかん落とす話も魚捕る話も知りません。文中の方言は謎適当方言ではなく遠州方言です。「むっすう」は娘のことです。「らんごく」とは散らかってることですが、私のペンネームの由来である「ささほーさ」も散らかってることです。私の祖父はほかに「ふんだらごっこ」という言葉も使いました。遠州弁なぜ散らかってる状態を表す言葉が豊富なの…