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石神井とソメイヨシノ
先日は、コロナが五類になってから初めての花見の季節到来であった。雨や曇りの日が続いたにもかかわらず、石神井池(ボート池)南側の「草地広場」や、三宝寺池側の「野球場(A地区)」の辺りでは、宴が開かれている。公園内に限らず、石神井はいたるところにソメイヨシノの木が植えられ、どこも美しい。
石神井川沿い、南田中の桜は今年も壮観だった。定番は橋の上から撮る写真だろう。川は大規模に掘り下げられているし、水量も少ないから、花筏とまではならなそうだが、川床に近いところも春めいている。
石神井に住み始めた頃、もう少し上流の「蛍橋」や旧石神井団地の辺りの桜もよかった。この辺りは護岸工事に伴う伐採と新しいマンションへの建て替えで様子が変わっている。水害で生活もままならないのは困るが、大体において桜が受ける災難の多くは工事だろう。
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樹木というのは環境次第でいくらでも育つと思っていたが、そうでもないらしい。いろいろ調べると、交配種であるソメイヨシノの寿命は60年くらい。病気になりやすい。今年の桜は思ったよりも遅く咲いたが、樹齢が重なると、花の咲く時期も早くなるという。「最近気候がおかしい」のは確かとしても、桜への影響はさまざま見解があって、咲かなくなるという意見もあれば、だらだら咲いてだらだら散っていくという研究者もいる。都会か山の中か、周囲の環境の違いが大きいと書く本もあった。正確なところはこれから分かってくるはずだ。
地域差や個体差を無視して、仮に桜の寿命を六十年とすると、戦後、都内各地で植えられたソメイヨシノは、もうほとんどが老木ということになってしまう。例えば、石神井川を挟む広大な南田中アパートの最初の建設は1966年である。今のソメイヨシノがいつ植えられたにせよ、この景色のいくつかは、はや老境だ。それも味わいの一つだが、今後の生育が心配になる。
新しくなった「和田堀緑道」を抜けて、石神井川から石神井池(ボート池)のところまで歩いていくと、北側の畔では素敵な桜の景色が続く。池に傾いたソメイヨシノや新緑の柳の姿は撮影にふさわしい。
以前、この辺りは昔ながらの邸宅が建ち並んでいた。今は建て替えが進んでいる。景観に配慮してか、どこも立派で落ち着いた建物ではあるが、新しさが際立つ分、ローカルな雰囲気は後退したと思う。
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以前、石神井池の畔には「ロニオン」という洋風一軒家のイタリア料理店があった。二階のテラス席からは石神井池が見え、特に春は、家族や友人とのランチで重宝していた。一階にもテーブルが出ていて、確かペット同伴も可能だった気がするが、昔のことだから細部の記憶が薄れている。
2014年、ロニオンは「ラ・ガッツァ」という店名に変わった。勤めていたスタッフが経営を引き継いだようで、店が大きく変わった印象はなかったが、正式な店名を「Vinoteca La Gazza」といって、よりワインを充実させた印象がある。ちょうど仕事が忙しい時期で足が遠のいていたのだが、2018年に閉店を知った時は、やはり残念であった。ラ・ガッツァを取り壊した工事現場に、店の飾りの一部が放置されていた様子はよく覚えている。
ここには今、建築家が設計された事務所が建っていて、こちらの建物も素晴らしい。
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翌年、ラ・ガッツァのオーナーは同じ西武池袋線で練馬区の桜台で、「イル・トンシオーネ」というお店を開かれていたようだ。ここからは全く接点がないが、住所を見ると、何十回となく前を通り、看板も視界に入っていた可能性が高い。調べればいくらでも消息が分かったはずなのに悔やまれる。店は昨年7月をもって閉店してしまっていた。
オーナーは現在、東北にいるらしい。震災後、ボランティア活動に参加してきたことをきっかけに移住したと、お店や個人のSNSから知った。(間違いであったらすみません)
ソメイヨシノの話とは全く関係がない話になってしまった。桜の花が咲いたり散ったりを繰り返した、ここ十数年の間の出来事である。
ロニオンのバルコニーから写した写真は、ほとんどが家族か友人こみで、一枚ぐらいちゃんと残しておけばよかった。
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