見出し画像

2023 有馬記念・展望

暮れの大舞台に相応しい豪華なメンバーが集結。

一年の総決算とも言える本レースは、これまでに扱ってきた予想ファクターをフルに活用して予想をまとめたいと思います。12月に入ってから不調続きですが有馬よければ全てよし、になればいいなと。



I.今回の舞台


①コース形態


中山・芝2500mで行われる。最初のコーナーまでは200m弱と短く、外枠の逃げ・先行馬はポジションを取るために脚を使うことになるので不利。スタンド前の直線を2回走るため、急坂を2回越えるスタミナも問われる。最後の直線は約310mと短めなのが特徴だが、その影響もあってか各馬の仕掛けは早くなりがち。中盤が緩んで後半5F戦になることが多い。

②馬場傾向


例年比で、時計・上がりが出やすい状態。ターコイズSやディセンバーS、グレイトフルSの時計や上がりを比較すると分かりやすい。(馬場状態は2019年や2021年に近そう。)

トラックバイアスは内も外も伸びるフラット馬場な印象。そうであるならば、コース形態的にも内の先行馬が有利そうではある。ただ、後述する理由により外の差し馬にもチャンスがあるのではないかと考える。


II.タイトルホルダーの作り出すペース


①鍵を握るのは


出走メンバーを見渡してみると、今回のペースを握るのは十中八九タイトルホルダー。強力な同型が不在なら、当然本馬のペースメイクを想定して予想を進めたい。タイトルホルダーと言えばハイペース!といったイメージを持っている方も多いかもしれないが本当にそうだろうか。

②タイトルホルダーのラップ分析


ここでは、タイトルホルダーが逃げてペースを握ったレースのラップを分析する。 

レース展開を大雑把に分類すると「スロー戦(遅→遅→速)」、「中緩み戦(速→遅→速)」、「ハイペース戦(速→速→遅)」に分かれるということを前提に以下の表を見ていただきたい。

長距離GI×タイトルホルダー逃げのラップバランス


中盤の占有率が大きければ大きいほど、中盤が緩んでいることを示す。この表に挙げた2つのレースはいずれも中盤が緩んでいることがはっきりと分かる。長距離2戦だけでは根拠として心許ないので、今回と同舞台の有馬記念(2022)と日経賞(2022・2023)も同様に占有率の比較を行ってみる。

中山2500m×タイトルホルダー逃げのラップバランス

いずれも中盤がしっかり緩んでおり、同じようなラップ構成(速→遅→速)となっている。タイトルホルダー自身は持続質の皐月賞や宝塚記念でも強いレースをしたが、本馬が作り出してきたレース質は「ハイペース戦」ではなく「中緩み戦」であると言える。


③今年の有馬記念の展開予想


以上を踏まえて、2023有馬記念は全体的なラップバランスとしては「中緩みからの後半5F戦」となる想定をしたい。ただ、高速馬場であることや、タイトルホルダー陣営はラストランのため後悔の無いレースにしたいという思いがありそうなことなどから、極端に緩むことはなく「速→中→速」の流れになりそう。これに加えて考慮すべきはアイアンバローズ陣営の逃げ示唆だが、テンのスピードが足りておらずスタート直後にハナを奪うことは無さそう。全体的に求められるスピードの質も、ステイヤーズSのそれよりも格段に上がるため、逃げるのは難しいのではないか。ただ、タイトルホルダーが緩めた中盤で一気に先頭を狙う可能性はあるかもしれない。そのような展開になった場合は、よりロングスパート質(後半6〜7F戦)のレースになることが考えられる。(タイトルホルダーの作る展開も元々ロンスパ質なので全体的な展開予想にそこまでの影響はないか。)

ちなみに、中緩みのロンスパ戦になった有馬記念は差しや捲りが馬券に絡みやすい傾向がある。(2012,2020,2022の有馬記念は特に顕著。)これが、内外フラットなトラックバイアスと考える今開催においても展開的には外枠(差し脚質)がやや有利と感じる理由である。

以上から、「速→中→速」のラップバランスを前提に、ロンスパ戦への適性や脚質も考慮して印を組み立てていく。

II.各馬考察


出走各馬についての考察。(S→A→B→C)の4段階評価も載せてみる。

あまり時間が確保できなかったこともあり、簡素なものになっていますがご了承ください。


・1.ソールオリエンス(B)

時計の出る良馬場で速い上がりを出すというよりかは、渋った馬場でバテ差しをした方が相対的に強いタイプ。特に、皐月賞の内容は圧巻で、4角17番手から直線だけで全馬を抜き去る圧倒的パフォーマンス。

ただ、その皐月賞の内容は重馬場ハイペース消耗戦。今回に直接結びつくものではなく、高速馬場の中山で同じ立ち回りをすれば頭までは届かないだろう。その点、ポジションを取る意識の強い川田騎手への乗り替わりは面白いと思う。最内枠ということもあり、やはりある程度前目で運ぶのではないだろうか。
しかし、前目で運ぶとすれば上述の差し勢有利バイアスに逆行することになる。外差しの勢いに飲まれる可能性が高そうで、人気を被るようなら思い切って軽視したい。


・2.シャフリヤール(B)

共同通信杯、毎日杯、ダービー、ジャパンCなど、過去の好走レースを振り返るとハイペースか、後半5F戦のように長く良い脚を使うかといったレース質が多い。中緩みの後半ロンスパ戦自体は合いそう。

ただ、不良馬場や札幌で大きくパフォーマンスを落としていることから、高速馬場とはいえ、冬の中山で狙いたいタイプではない。また、香港ヴァーズの出走取り消しから急遽有馬記念への参戦が決定したという臨戦過程も、このメンバーが相手では大きな枷となりそう。


・3.ホウオウエミーズ(C)

前走の福島記念では綺麗に捲っての勝利。ただ、外差し有利な馬場・展開だったことは考慮する必要がある。小回り向きな印象ではあるが距離はやや長そう。


・4.タイトルホルダー(B)

上述したように、中緩み→終盤ロンスパに持ち込むのが本馬のレース。今回は強力な同型がおらず、自分のレースができそうなのは大きなプラス材料。昨年の有馬記念や今年のオールカマーのように、競りかけられた時に脆さを見せることもある。(オールカマーは状態が万全ではない中で2着好走なので脆さという表現はやや不適かもしれないが。)その点、今回は明らかに目標にされる立場かつ、アイアンバローズの存在もあるので不安ではある。また、上述の差し有利バイアスにも逆行するため、実力は認めつつも馬券的には切って勝負したい。

どのような結果になったとしても自分の競馬に徹して後悔のない引退レースにしてもらいたい。


・5.ドウデュース(S)

京都記念の時から有馬記念に出てきたら買いたいと思っていた馬。かなりピッチ寄りの走法でコーナリング性能を活かせる中山の舞台は確実に向くはず。これまでの打点については周知の通りかつ、天皇賞・秋の予想でも触れているので割愛するが、間違いなくトップクラスの能力の持ち主。

馬体がマイラー寄りで中山2500は合わないというのは分からなくもないが、同じような馬体で出走した京都記念(阪神2200m)であの勝ち方をされた時点で本馬の馬体についてはそこまで気にしないようにしている。むしろ、発達した前肢の筋肉は中山の急坂を苦にしないことの証左ではないだろうか。

秋3戦目で状態がどうかも、ダービーを勝利したときも3戦目だったことを考えれば特に問題なしと見たい。


・6.ディープボンド(B)

本馬はズブく、瞬発力戦には向かないというのが共通認識として出来上がっているし、私もそう思う。ただ、今回は中緩みとはいえロンスパ展開があり得る想定。他のコースに比べて急激にギアが上がることは少なく、本馬のズブさでも対応できる流れになる可能性もある。

ただ、スピードの絶対値でどうしても劣ってしまう。渋った馬場でバテバテの持久戦になるぐらい厳しい展開を想定するなら買いたいが、高速馬場でこのメンバーならさすがにそこまでの展開は想定できず。


・7.アイアンバローズ(C)

ステイヤーズSの逃げ切りが記憶に新しい。このレースは序中盤がかなり緩いペース(アイアンバローズがハナを奪った箇所は速い)で推移し、最後だけ加速するといった「遅→遅→速」型のラップ。ただ、最後の6Fが12.3-12.3-12.2-11.9-11.7-12.0と長距離戦にしてはそこそこのラップを刻んでおり、本馬のスタミナを証明する材料にはなる。

ただ、今回出走の他馬に過去、大きく負けている事実もあり。メンバーレベル的にはここまで印を回す余裕はないかなという印象。


・8.ライラック(B)

内回りコースを使用するエリザベス女王杯で2年連続で好走しており、中山2500mにも適性がありそう。エリ女は昨年が重馬場で、今年も雨の影響が残る良馬場だったことを考えると馬場は渋った方が良いはず。今回は高速馬場の開催のためこの評価で。ただ、調教ではかなりの時計を出しており、もしかしたらある程度の位置を取りに行くつもりなのかもと思ったり。この追い切りで調教後馬体重が前走比プラス10キロというのは魅力的に感じる。


・9.ヒートオンビート(C)

2500mの成績は(1.1.3.1/6)とかなり優秀。メンバーレベル的には馬券内は厳しそうではあるが、得意条件の中緩みロンスパ戦なら人気以上の着順は狙えそう。


・10.ジャスティンパレス(A)

宝塚記念の見解でも触れたが、元々高クッション値向きの馬だと思っていたところに稍重の天皇賞・春の快勝劇。高クッション値に戻った宝塚記念では0.2差の3着好走。前走の天皇賞・秋では9.0と比較的低めなクッション値だったことや中距離への適性などを疑問視して軽視したが2着好走。左回りとはいえプログノーシスを交わした内容は高く評価すべき。

しかし、前走の反動はどうしても不安ではある。天皇賞・秋で同じく後方から差して好走したプログノーシスも、次走の香港カップでは反応がやや鈍かったように映った。(もちろん騎乗・展開次第ではより上位に行ける内容ではあったと思うが。)
一週前・最終とも追い切りの内容は悪くないが、それだけを以って状態が万全とは言い切れない。(個人的には動きが若干重めな印象を受けた。)

ただ、地力が上位なのは間違いなく、距離・コース展開も問題はないはず。昨年の有馬記念は先行勢に厳しい流れだったため度外視で良い。恐らく当日もやや高めとなるクッション値も味方をする。枠も他の人気馬と比べれば悪くなく、状態さえ大丈夫なら好走は必至。


・11.ハーパー(B)

7戦して馬券外が1度(桜花賞4着)のみとかなりの安定感。先行脚質である点もその安定感を強固なものにしている。
前走のエリザベス女王杯ではインをロスなく回り、直線もスムーズで3着。前走以上に強力なメンバーが多く揃っており、厳しいレースになりそう。


・12.ウインマリリン(C)

新馬戦、ミモザ賞、日経賞、オールカマーと、中山で多くの勝ちを挙げており、舞台適性はある。

今年はあまり振るわない印象も、前走のBCF&Mターフではウォームハートとあまり差のない競馬をしており、6歳ながら頑張っている。ドバイSCは適性、札幌記念は馬場・展開、オールカマーは枠順等でそれぞれ言い訳は可能。内枠を引いて完璧な競馬ができれば、、、と思っていたがやや外寄りの枠。個人的に推しているので頑張ってほしい気持ちはあるが。


・13.タスティエーラ(S)

これまでの全成績(3.2.0.1/6)と安定感抜群の本馬。唯一馬券外となった共同通信杯はスロー瞬発力戦での位置取りの差で、悲観する内容ではなかった。

本馬の勝ち切った弥生賞・ダービーはいずれも中緩み戦を先行するレースだった。ソールオリエンスの末脚に屈した皐月賞は、重馬場で「速→中→遅」のハイペース消耗戦を外枠からまともに先行しての結果。菊花賞はやや後方からの競馬になったため、位置取りの差と言える。(勝ち馬のドゥレッツァが強いのは言うまでもない。)周りに馬がいないとソラを使う癖があるので皐月賞・菊花賞はその影響もあったかもしれないが、しっかり追ってくれるムーアJが鞍上なら相性的にも期待できる。

以上のようにクラシック路線で活躍してきた本馬だが、今年の3歳世代のレベルに疑問という見解は散見される。
クラシック三冠レースを一つずつ見ていくと、皐月賞は前半ハイペースだった割に同日2勝クラスと同時計。これだけ聞いてしまうと確かに情けないわけだが、2勝クラスが行われた後、雨が降り更に馬場が悪化していることを考慮すれば当然の結果と言える。ダービーは中緩みしている割に上りの水準が低めでタイムも物足りない。ただ、直線やや強めの向かい風が吹いていた影響は少なからずあったはず。最内やや後方から鋭く伸びてきたベラジオオペラの上がりが33.0で最速なのは馬群で風を凌げていたという側面もありそう。その見方をするならば、直線で早めに抜け出して風を正面から受けながら上がり33.5を出したタスティエーラのパフォーマンスはかなり評価できるものではないだろうか。菊花賞に関してはそもそもタイムも高水準で、有馬記念に即通用するレベルの一戦。
結論、クラシック路線で常に上位争いをしてきたタスティエーラ・ソールオリエンスに関しては、世代レベルを疑問視するという理由のみで軽視するのは些か早計と感じる。斤量アドバンテージの恩恵を最も受けられる時期に世代レベル疑問視によって3歳馬の人気が落ちるようなら、積極的に狙っていきたい。

今回はやや外枠を引いてしまったが、枠並び的にはスタートが良ければそこそこのポジションは取れそう。内にも速い馬がいるので無理に前に行かず中団やや前目から先行勢を交わす競馬が理想。
スタートが決まらずイメージよりも後ろで運ぶことになったとしても、菊花賞のパフォーマンスを見る限りは差してこれそう。

駄目押しをするとすれば、高クッション値にも低クッション値にも強い点。弥生賞ではクッション値10.0で勝ち切っており、高めのクッション値となった今週の中山でも当然期待できる。土曜よりクッション値が下がったとしても新馬戦や共同通信杯、皐月賞のパフォーマンスから心配無用。

一年の総決算たる有馬記念。私はこの馬に本命を打つ。


・14.プラダリア(C)

重馬場が得意なディープインパクト産駒にしては珍しいタイプ。前走の京都大賞典ではイン前有利展開の恩恵を受けたものの勝ち切っており評価したい。ただ、冬の中山と言えども若干高速寄りなこともあって重馬場ほどの負荷はかからないと思うので、今回における評価とは結びつかない。


・15.スルーセブンシーズ(A)

世界最強馬イクイノックスに今年最も迫った馬。凱旋門賞も進路を確保するまでのロスがありながら無敗のエースインパクトに3馬身差4着なら文句無しの好内容。中山での成績がずば抜けて良く、コース相性はメンバー中トップクラスと言える。

また、特に注目したいのが高クッション値での成績。
クッション値9.5以上(4.3.2.0/7)
クッション値9.4以下(0.0.0.3/3)
と、明らかに高クッション値に好走が偏っている。(1着のミモザ賞は重馬場だったため低クッション値でも割引く必要はないかもしれないが。)今回も恐らく高クッション値での開催。グランプリ男池添騎手を背に一発あってもおかしくない条件が揃った。

と思っていたところに外枠ピンク帽。宝塚記念や凱旋門賞のように後ろから進めるのだとすれば、負荷はイメージほど大きくないはずだが決して良い枠ではないことは確か。

また、紫苑Sや中山牝馬S、宝塚記念など重賞で好走した際のラップを見ると、今回想定の中緩みとはややズレる印象。(中盤が速い流れになっている。)

以上から、実力・小回り適性を認めつつも、人気を被るようなら馬券からは切って勝負したい。


・16.スターズオンアース(A)

オークスのように中盤が緩むレースが最も合う馬。それにも関わらず、タイトなラップが刻まれた大阪杯やマイル戦でも好走している地力を評価したい。クッション値も選ばない。

舞台は東京2400mがベストな印象ではある。フェアリーS以来の中山だが、内回りコースの秋華賞・大阪杯で好走したことを考えれば不安視する必要はない。常に後半4Fを高水準のラップで走破する馬なのでロンスパ戦になったとしても持続力を活かせれば。
ヴィクトリアマイルを経て追走力が増し、ポジションを取れるようになったのも心強い。ただ、今回は大外枠を引いてしまったこともありやや後ろからの競馬でも良い気はする。(中盤が緩んだ方が良い本馬の性質的にも)

前走のジャパンCは17番枠から先行ポジションを取り、リバティアイランドと1馬身差の内容で、休み明けを考えたら文句無しのハイパフォーマンス。状態面にも上積みが見込める今回は大外枠でも安易に軽視はできない。


III.印・買い目



◎13.タスティエーラ
○5.ドウデュース
▲16.スターズオンアース
△10.ジャスティンパレス

買い目
・単勝:◎
・馬連:◎-○▲△(3点)
・ワイド:◎-○▲(2点)
・3連単:◎→○▲→○▲△(4点)

最後まで読んでいただきありがとうございました!




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?