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2024 ジャパンC 〜日本競馬の最高峰、そのレース質とは〜



I.まえがき

毎週末欠かさず競馬を観て、賭けて、舞い上がったり、沈んだり。そんな私が競馬に触れるきっかけとなったのが2020年のジャパンC。競馬をあまり知らない私でさえも名前を知っていた、彼のアーモンドアイの引退レース。それまで大学の友人や父親が競馬好きなこともあって、興味こそあれ賭けることはしなかった私だが、最強馬の引退レースと聞いて心が躍ったのだろう。今回は少し賭けてみようかな。そう思い立つと、馬柱やネットでの評判を眺め、初めての競馬予想に取り掛かる。
予想を進めるにつれ、他の出走馬たちのプロフィールも明らかになってゆく。二番人気のコントレイルは無敗の三冠馬で、三番人気のデアリングタクトは無敗の三冠牝馬らしい。敗北を知らない馬が2頭。それにも関わらず一番人気に推されるアーモンドアイとはどれほどまでに強いのか。伝説とも言える三冠馬たちの夢の対決。当時学生だった私は、アルバイト先に向かうまでの道でスマホ越しにその顛末を見届けた。
蓋を開けてみればやはり3強での決着。そして、アーモンドアイは最後まで最強を貫き表舞台を去った。馬券はトリガミに終わったが、このレースは私を競馬沼に陥れるには十分すぎるほどにドラマティックであった。

翌年以降も続くドラマ。三冠馬コントレイルの有終の美、陣営の努力の結晶ヴェラアズールの結実、天才イクイノックスの最強の証明。私にとって、ジャパンCほど胸が高鳴るレースはない。

さて、今年の府中にはどのような感動が待っているのだろうか。

Ⅱ.レース分析

前置きが長くなったが、ここからはいつも通りラップを中心に分析を進めてゆく。

①過去傾向

まずは恒例の、過去5年良馬場平均ラップを御覧いただきたい。

ジャパンC 過去5年(良馬場)平均

前71.6-後71.1 0.5の後傾ラップ。


・・・平均値が参考にならない。細線で各年のラップも示したが、平均と近しいラップを刻んだ年は皆無。いずれの年も極端な前傾か後傾となっているが、平均化するとフラットな折れ線グラフが完成してしまう。
ただ、一見バラバラに見える各年のラップだが、2023のパンサラッサが特徴的な逃げ馬だったことを考慮すれば、基本的には後傾戦と考えてよさそう。

②ラップ特徴

また、ジャパンCのラップにはもう一つ、特徴がある。それは、東京2400m条件下で行われる他のGIレースに比して中盤が締まりやすいというものである。
以下の表を御覧いただきたい。

東京芝2400mGI ラップ占有率比較

これは序盤・中盤・終盤の平均ラップと占有率を表にしたものであるが、太字で示した中盤4Fの占有率に注目されたい。世代限定戦のオークス、ダービーより圧倒的に中盤が締まりやすい傾向にあることが分かる。

レースの格の高さがラップ、延いては全体時計にも顕れている。

②展開予想+適性考察

以上を踏まえて今年の展開予想をしたい。出馬表を眺めて、まず思うのが逃げ馬不在。有力馬の脚質が比較的差しに寄っており、今年も後傾戦はほぼ確定的。

ここで、以下の表を見ていただきたい。

ジャパンC コーナー通過順・上がり3F

この表は良馬場過去5年分のジャパンC3着以内馬について、コーナー通過順と上がり3Fをまとめたものである。

いずれの年も4角4番手以内の馬が馬券になっている。
また、東京芝のレースにしては上がり3位以内の馬券内占有率が高くないことが分かる。
▶︎ジャパンCが後半5F戦となりやすく、上がり3F特化型は適性が若干ずれていることの証左である。

2018のアーモンドアイ、2020の3強、2021のコントレイル、2023のイクイノックスがメンバー中で別格の強さを誇っていた(=上がり上位で当然)ことを考慮すれば、表の見た目以上に道中のポジショニングが重要と言えそう。
これは、中盤が締まりやすいラップ特徴に起因すると考えられる。中盤が締まることにより、隊列はより縦長となる。下級条件ならば、逃げ・先行各馬が垂れて差し有利展開にもなり得るが、GIともなれば前に行く馬の持続力も相当なもの。縦長展開で先行馬に良い脚を使われると追い込み勢は物理的に届かない展開不利を被ることとなる。

逃げ馬不在の今年のジャパンCが上記のように中盤が締まる展開になるのか、という点は考える必要があるが、直線のキレ勝負のみではドウデュースに敵わないことについては各陣営が意識しているだろう。それ故、先行各馬が早めに負荷を掛けていき、前半スロー→後半5F戦となる想定をしたい。

まとめ
・基本的には後傾戦となる。
・後傾戦ではあるが、ジャパンCは中盤ラップが締まり縦長隊列となりやすい。
・今年については前半スロー→後半5F戦となる想定。徐々に隊列が縦長となる。
・縦長隊列となれば後方からの差しは決まりづらいだろう。
▶︎先行ポジションから長く良い脚を使える馬を狙いたい。


Ⅲ.各馬短評

前項において、今年は後傾戦(後半5F戦)となりそうで道中ポジショニングが鍵を握るだろう、という想定までは組み立てた。ここでは、その展開で評価すべきはどの馬なのか、を検討してゆく。評価は「S → A+ → A → B+ → B →C」の6段階で、オッズ期待値も考慮している。


1.ゴリアット(B)

KGVI & QES馬ゴリアット。陣営の盛り上げムーブがとても好き。
10戦して2回しか良馬場を走っていないのもあるが、現状、時計不足感は否めない。日本の馬場・ペースに適応できるかが鍵。
馬場が重くなるなら評価を上げたいが、生憎の晴れ。


2.ブローザホーン(C)

これまでの戦績を見ても明らかなように長距離or道悪の消耗戦がベスト。
前走の敗戦で人気は落ちるだろうが、この舞台では手が出しづらい。


3.ドウデュース(A)

ピッチ走法でコーナリングが上手く、コーナー加速のアドバンテージを発揮できる舞台向き。加速力に優れているが持続力はそこそこ。小回りコースで買いたい馬。

と思っていたのに前走の天皇賞・秋であれほどまでに強い勝ち方をされたので困った。

ただ、前走を精査してみるとこの馬に向いた展開となったのも事実。
ピッチ走法故にスローペースで一瞬のキレを活かしたい本馬にとって、スロー×馬群凝縮3F戦の前走はまさに最適条件。

それでは今回の想定はというと、縦長隊列の5F戦で天皇賞・秋とは異なる。距離延長かつ中盤負荷で脚を使ってしまい直線でのキレは鈍るのではないか。
とは言っても、縦長展開となった昨年のジャパンCで4着なので今回も地力で上位に来られる可能性も否めない。

ただ、追い込みが不利なレースで1番人気なら敢えて買わない選択もアリかなと個人的には思っているが果たして。


4.ジャスティンパレス(A)

「33秒台前半の脚は使えない。昨年の天皇賞・秋で上がり最速で2着に好走したのはステイヤーに向いたレースになったから。」
と思っていたが、スローで後半力の問われた今年の天皇賞・秋でスムーズさを欠きながら33.0の上がりを使われたので評価をアップデートすることに。
距離延長は間違いなくプラス材料。東京コースで必要な脚力も証明済み。コーナリングがあまり上手くはないが、大箱コースの今回はそこまで不安無し。鞍上は安心と信頼のクリスチャン。
元々はそこそこのポジションを取りに行く馬だった上に、この鞍上で内枠なら道中ポジションが後ろすぎることにはならないのでは、という期待も込めての評価。
前走の強い負け方で人気はするだろうが、長く良い脚を使えるタイプで好走は必至か。


5.シュトルーヴェ(A)

JCベストレース記念では33.2、目黒記念では32.9の上がりで差し切り1着。脚力は相当なもの。中盤がそこそこ締まったJCベストレース記念でハイパフォーマンスだったのも良い。宝塚記念は重馬場巧者が上位独占したレースで度外視可能。
東京コースで複数回に渡り、高い打点を示しているにもかかわらずこのオッズ。波乱を演出する可能性は十分にある。


6.ダノンベルーガ(B)

一昨年の天皇賞・秋がベストパフォーマンスでそこから緩やかな下降線を辿っている印象。左回りなのは間違いなく良いが、距離適性的には2000mがベスト舞台だろう。今回は狙える根拠に乏しい気はする。同舞台のダービーで1番人気だったことを考えるとお買い得感はあるが。


7.シンエンペラー(B+)

京都2歳S、ホープフルS、弥生賞ディープインパクト記念と、世代戦の重賞を連続好走したが、今回に直接繋がるラップ質のレースではないためそこまで評価せず。ただ、時計こそ物足りないが後半5F56.8という好ラップを刻んだダービーで3着という打点は心強い。また、先行しようと思えばできるのは強み。
今回も前半スローで後半5F戦となる想定なのでダービーの再現もあるかも。加速に時間がかかるので徐々にペースアップする展開が欲しい。


8.オーギュストロダン(B+)

英国からの刺客オーギュストロダン。欧州馬の来日時は馬場の違いから基本的に軽視するのがポリシーではあるが、本馬は評価したい。

まず評価したいのが英ダービー。オーギュストロダンの後半4F44.14のスピードは日本の高速馬場でも通用するはず。ただ、日本ではあり得ないほどの超ドスロー展開で、決着時計も2:33.88とかなり遅い点には留意が必要ではある。中盤の質が高まるであろう今回はどうか。
それでもBCターフを2:24.30で勝利している点で時計面が補強されることを考えると、他の欧州勢よりは高めに評価したい。

しかし、日本の馬場と欧州の馬場はやはり違うもの。適性がどうかは走ってみなければ分からない。追い切りは東京芝で行ってはいるものの、本気で走っておらず適性が掴みづらい。日本馬にも一線級が揃っている中で人気するようなら個人的には軽視で良いと感じる。


9.チェルヴィニア(S)

新馬戦、未勝利戦、アルテミスSで刻んできたラップを見れば、後傾戦に滅法強いのは明らか。直線で一気のギアチェンジ加速ラップ戦となったオークスでも完勝し、秋華賞も中団から差し脚を伸ばして勝利。桜花賞は怪我休養明け+大外枠で完全度外視。

特筆したいのが秋華賞。3番手以降はスローに見えるが、後半は速い流れだった。その中でポジションを上げていき、最後まで減速せずに差し切ったロングスパート力は今回にも繋がる。

スローなら先行できるのも強みで、好位から持ち味の持続力を発揮できればこのメンバー相手でも通用するはず。


10.ドゥレッツァ(S)

ホンコンJCTの後半5F57.3や菊花賞の後半5F58.6など、高い打点を示し続けてきた馬。今年に入ってから敗戦続きだが、それぞれ敗因は明確。

金鯱賞は休養明け、斤量59キロ、ペースアップ戦、4角出口で外回しと厳しい条件の中で2着。勝ち馬はインを完璧に立ち回った斤量58キロのプログノーシス。スパイラルカーブを考慮すれば通ったコース差はかなり大きく、相手が相手なので0.8差も全く悲観する必要なし。最後まで伸びていたのも好印象。
天皇賞・春は熱中症+レース後故障で完全度外視。
英インターナショナルSは怪我休養明け、初の海外遠征、斤量61キロ、終始外回しで5着なら立派。道中負荷を考慮すれば4着のブルーストッキングと同程度のパフォーマンスだったと言っても過言ではない。上位3頭は斤量57.5の3歳牡馬で4着は凱旋門賞馬。それに続くのが本馬。見た目以上に強かったと認められるレース。

5F戦の打点については言わずもがな、中盤負荷展開への適性も日本海S(中盤占有率33.8%)で示している。

東京の中距離は恐らく最適の舞台。先行でも差しでもハイパフォーマンス。5F戦に強く、中盤負荷展開の打点も十分。仮に中盤弛緩の上がり3F戦となったとしてもホンコンJCTのパフォーマンスから問題なさそう。攻めの前日追いを行い、鞍上には名手ビュイックをお迎えする勝負気配。一発あってもいい。


11.カラテ(C)

加齢もあり、切れる脚が使えなくなっている。と思っていたところに前走の上がり33.1。とは言え全馬が33秒台の脚を使える展開。メンバーレベルも格段に上がる今回はさすがに買いづらい。


12.ソールオリエンス(B)

皐月賞、宝塚記念で披露した重馬場での豪快な差し脚が武器。良馬場でのスピード勝負ではやや分が悪い印象。
とは言え東京コースでの打点は持っており、ダービーでは差の無い2着。前走の天皇賞・秋でも若干の不利を受けながら勝ち馬と0.4差ならそこまでノーチャンスとも言えない。ただ、上記2戦は中盤弛緩型レースで、今回に直接繋がるものではないと判断。


13.ファンタスティックムーン(C)

現状、時計不足感。
陣営は良馬場が合うとの見立てだが、日本の馬場への適性はどうか。
外枠を引いてしまったこともあり、適性未知数ではあるが敬遠したい。


14.スターズオンアース(A+)

1600m〜2500mまでこなすオールラウンダー。ペースが早かろうが遅かろうが内枠だろうが外枠だろうがクッション値が高かろうが低かろうがコースが大箱であろうが小回りであろうが怪我休養明けだろうがお構いなしに好走してくるヤバい馬。初の海外遠征となった前走のドバイSCを除けば全て馬券内の成績を誇る。

とりわけ後半力勝負となる展開が得意な馬。中盤ペースは緩んだほうが良いタイプではあるが、マイルGIに対応できるスピードはあるし、自分でポジションを取りにいける脚もあるので、先行ポジションから長めに脚を使うレースができればチャンスあり。

右にもたれる癖がある馬で外枠はシンプルに不安材料だが、追い切りに川田騎手が乗りに来て感触を既に確かめている点で不安軽減。

休養明けではあるが、鉄砲駆けするタイプで乗り込み量も十分。追い切りの内容も昨年に引けを取らず。間違いなくベスト舞台の今回、臨戦過程と外枠でオッズが下がるなら積極的に狙うべきと判断。


IV.結論

①印

◎10.ドゥレッツァ
◯9.チェルヴィニア
▲14.スターズオンアース
✓4.ジャスティンパレス
✓5.シュトルーヴェ

②買い目

単勝:◎
馬連BOX:◎◯▲
ワイド:◎−◯
3連単:◎→◯⇄▲✓✓(6点)

先行力と持続力が活きそうなドゥレッツァを本命に。
対抗・単穴も同型でチェルヴィニアとスターズオンアースを据える。
3連系の紐は条件好転のジャスティンパレスと、大穴ながら末脚に期待できそうなシュトルーヴェ。

基本的にドゥレッツァを軸に据える馬券。
チェルヴィニアとスターズオンアースの馬連も保険で抑えつつ。

相手強化・適性降下で人気上昇のドウデュースは思い切って軽視。連対されても◎−◯のワイドでカバーする算段。


V.あとがき

私は弱小と揶揄された現4歳世代の牡馬が好きだ。
ダービーのラップが物足りない。古馬混合戦で結果を出せていない。低レベルな世代……。昨年の言われようは散々であった。
しかし、今年に入ってからの4歳牡馬の活躍は目覚ましい。ベラジオオペラの大阪杯制覇、ソールオリエンスの宝塚記念2着、タスティエーラの天皇賞・秋2着、エルトンバローズのマイルCS2着など。挫けずに頑張って結果を出してくれた4歳世代が好きだ。本命のドゥレッツァも4歳牡馬。彼らに続いてドゥレッツァがこの舞台で飛躍してくれたならば、私にとってこれ以上のドラマは無い。

秋の府中に4歳牡馬旋風が吹き荒れることを信じて。


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