NFTに投資要素は不可欠か?
今回は、NFTに投資要素は不可欠か?について、説明します。
結論から言えば、バランス感が肝要。
NFTを利用する以上、投資要素をゼロには難しいですが、非常に小さくすることは可能です。
投資要素を残しつつも、さまざまな環境から、どのようにメッセージングしていくかが重要なポイントだと思います。
NFTの投資要素以外の魅力をアピールしながら、上手なお付き合いをするのが現時点最適解と考えています。
順番に解説しましょう。
NFTの投資性
「NFTの投資要素」は、NFTプロジェクトの取り巻く環境や、関わるポジションによって考え方が違ってくる、非常に悩ましいテーマのひとつです。
NFTは技術特性としてオープンなネット上で”数量を限定できる”ことで、需要と供給のバランスをマネジメントできるため、資産性を帯びさせることが可能です。
リアルな世界でも、似たような事があります。
世界に300足しかない人気ブランドとコラボした限定スニーカーが販売されると、ファンが大行列を作り、需要に対して「供給が足りない」状態になります。
そうなると、二次流通で定価の何倍もの高値(=プレミアム価格)で取引されるようになり、投資対象となります。
このとき、供給量は販売側が決めています。
NFTでもこれと同じようにして、投資性を帯びさせることが可能です。
特にコレクティブルNFTの場合、プロジェクト側の意向によって、予測される需要に対する供給量を制限することで資産性を帯びさせることができます。
しかし、需要を遙かに上回る供給量であれば、投資要素を極小化することも可能ではあります。
例えば、100個の需要しかないのに、1億個を販売するなどをイメージして下さい。
投資要素を小さくすることのリスク
ところが、投資要素を極小化することは、2022年夏時点でNFTプロジェクトを取り巻く”さまざまな環境”から、選択しづらい状況にあります。
なぜなら、コレクティブルNFTを中心とするNFTプロジェクトは、製作にコストがかかるからです。
コレクティブルNFTは、クリエイター個人の力だけで実現されるわけではなく、一定規模のチームや組織が必要で、人件費をはじめあらゆるコストが掛かります。
ひとつのNFTプロジェクトには、開発者/マーケター/法務・税務に詳しい専門家など、さまざまな人々が関わっています。
彼ら全員がボランティアでない限り、NFTプロジェクトの成功の暁には、金銭的リターンを設計しなければなりません。
その時点で、一次販売にしろ二次流通ロイヤリティの売上・収益は最大化されるよう目標が定まります。
もし仮に、資産性を帯びさせず投資要素を極小化したNFTプロジェクトを作った場合(=ミント価格割れ前提)、その売上は、本来の1/10程度にとどまることでしょう。
300ETHの売上期待が30ETHとなってしまうとしたら、プロジェクトを行うための多数の人手に対するコストや金銭的リターンが成り立たないため、常識的に考えて頓挫してしまいます。
なぜ、売上が1/10になるのか?
消費と投資の違いを比較するとわかります。
「紙の本」と「電子書籍」がいずれも2,000円で購入できるとしても、「紙の本」はメルカリで1,800円で転売できるとしたら、実質の消費は200円ということになります。
すると、2,000円までの消費が許容されるなら、転売前提なら10倍の20,000円分を購入できます。
周知の通り、コレクティブルNFTの投資的観点での成功条件は”完売&ミント割れをしないこと”です。
"ミント割れをしない"ということは、すなわち一次販売のNFT購入者の資産が目減りしないことを意味します。
そのため、本来価格の10倍ほどの高価であっても、その投資的観点で成功しそうなNFTプロジェクトを購入するメリットがあるのです。
逆に、投資的観点での成功が期待できない、あるいは極小化する意思があるNFTプロジェクトの場合はどうなるでしょうか。
純粋にその作品・キャラクターの持つ本来的な魅力(価値)だけが価格に反映されることになります。
そうすると、海外含めて大きなセールスを記録するNFTプロジェクトのような跳ね方はしないのです。
購入者層は、投資性を期待している
さらに、現実的に考えておかないといけないのは、購入層の8割は、NFTの資産性を帯びる特性に期待して購入している点です。 NFTの資産性に期待する人たちの中でも粒度はあって、以下のようなイメージでばらけています。
ただ、NFTを購入して資産性を一切気にしない人というのは、現状だと非常に稀な存在でしょう。
▷Aさん
作品/キャラ愛:■■■■■■■■□□:資産性
▷Bさん
作品/キャラ愛:■■■□□□□□□□:資産性
仮に、NFTの資産性を極小化する方針を打ち出すとしたら、需要に対して過度の供給量(NFT販売数)を設定したり、DeFi規模の小さいチェーンを選ぶなどの工夫が必要です。
ただ現実のNFT購入者のほとんどは投資要素を期待している点を鑑みると、販売側の選択肢は次の2つです。
1.NFTとして売らない
2.投資要素を考慮する
このどちらかでしょう。
NFTは、対外的な打ち出し方・アピール方法を工夫することで、投資要素を小さくすることができます。
例えば、フルオンチェーンゲーム銘柄の『Isekai Battle』では、「NFTが資産性が帯びて価値が高まるから、価値があるのだ。」という表現をしませんでした。
こういうセールスの仕方をすると、「NFTの”中身”はどうでもいいから、価値が上がれば良い」という投資者層を強く惹きつけることになってしまいます。
Isekai Battleでは、NFTの「中身」に注目して欲しいと考えました。
なので、次のような打ち出し方をしました。
「これまで遊んできたゲームを思い出せば、新しいハードとソフトを買って仮に5万円かかったとしてゲームを遊んで投資の回収率を気にしたことはないでしょう?」
仮に投資的観点で赤字になったとしても、満足度の高い消費活動を提供する意思を強く示したのです。
投資性をどの程度含ませるかについてはバランス感覚が大切です。
「NFTが資産性が帯びて価値が高まるから、価値があるのだ。」ということに期待する人たちが増えすぎる状態は、危険が伴います。
先の6月に発生した暗号資産銘柄大暴落のように、市況が大きく影響するNFT販売において、NFTプロジェクト自らがアンコントーラブルな領域に足を踏み入れることになりかねません。
実際、市況は山の天気のようにコロコロと変わり、先が読めません。
「価値が上がるから価値が高い」=投資要素を強くアピールしすぎると価格が暴落したときにNFTプロジェクト自体の評価も下がる方向です。
ゲームや作品やキャラクターの「中身」で評価が下がるのであれば、プロジェクト側の責任範囲。
まだ納得感があります。
ここからがもっとも大切なこと
体外的なアナウンスはNFTプロジェクトの「中身」中心に伝えるとしても、NFTの投資要素は考慮するとしたら、プロデュース視点では、NFTプロジェクトとしての投資的観点での成功を着実に目指す必要があります。
一次販売時に「完売&ミント割れをしない」を達成するための工夫、フロア価格を一定高位で維持するための仕組み(複数枚保有/ステーキング/フロアスイープ・ギミック等)はプロデュース力にかかっています。
資産性に期待する人たちが大半の中で、「対応します」の暗黙のメッセージを忍ばせるのです。
NFTの資産性があることでNFTを購入した含み益が次のプロジェクトの購入資金となり、より多くの人たちを呼び寄せて産業が発展していきます。
ミント割れしないことは、数少ないNFT購入者を消費させず、次のNFTプロジェクトへの呼び水に。
私が、キレイゴトではなくすべてのプロジェクトが投資的にも成功してほしい理由が、これです。
※この記事は、パジ(@paji_a)の発言をベースにかねりん(@kanerinx)が編集して記事化しています。
※この記事の元投稿は、HiDΞで連載中のマガジンです。(JPYCの投げ銭も可能)
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