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『DAOの考察』NFTJPNのDAO化に向けて

私が発起したプロジェクト『NFTJPN』は、「日本のNFT作品を海外コレクターに購入してもらう」をゴールに据えています。
DAO化を進める時に、NFTJPNに関わる内外の参加者が『DAO』への共通理解があったほうがスムーズに進むと考えています。
「NFTJPNで考える理想的なDAO」について、私の考えを述べます。

拠り所はイーサリアム創業者ヴィタリックの記事。
「中央が自動化された組織」です。 https://blog.ethereum.org/2014/05/06/daos-dacs-das-and-more-an-incomplete-terminology-guide/

結論

結論から書くと、『DAOはそのビジョンの達成において株式会社より優れている組織になっていること』が大切と考えます。
そのビジョンの達成のために、いろいろな組織の形の中から、DAOがもっともうまくいくだろうから『DAOが選択されている』ことが理想的だと思います。

考え方はこんな感じです。

①実現したいビジョンがある(NFTJPNの場合、”海外コレクターに日本のNFT作品を買ってもらう”)

②1人では実現できないので組織化

③組織にはDAO以外にも会社や非営利組織やネットコミュニティなど複数選択肢あり

④そのビジョン実現に最適なチョイス=DAOを選択する

DAOにはメリットもありますが、明らかなデメリットも多く、特に、ブロックチェーンが持つ「非中央集権化」という技術的な特性が発揮されると、これまで中央集権的権限=既得権益を享受していた人たちは、難しい立場に追いやられます。
既存の考えでDAO化するとインセンティブを大きく損なうからです。

NFTJPNを起案した当時、私にはどの組織で進めるか複数の選択肢があり、
①会社
②非営利組織
③ネットコミュニティ
④DAO。

立場的には、①を選択したくなりますが、④DAOを選びたいと考えました。
ブロックチェーン領域であること、実現すれば業界発展に繋がり、多くの共感を集めそうな活動だと思ったからです。

ただし、立ち上げ初期から④DAOを成立させるためには、ビットコインのように10年単位の時間軸を許容するか、グローバルレベルの特別なインフルエンス力や資金力が必須に見えます。
現実的に事例が多くなりそうな、「③ネットコミュニティ→④DAOへ進化」ができたら、今後の知見としても役立つと思いました。

「夢が大きく共感が広く深い」ほどDAOに向いています。

いつまでボランティア活動をつづけるのか?

みんなが期待する夢を実現するときには、経済的合理性もインセンティブとして設計することで、ビジョンの実現がより確度が高まり、スケールが大きくなり、スピーディになります。

ただ、NFTJPNでは、「③ネットコミュニティ」の段階では、金銭的インセンティブの制度設計を敢えてしませんでした。
お金がちらついてしまうと、実際には継続させていくための最小限の費用を賄っているだけだとしても、穿った見方がでてしまう可能性があったからです。

ブロックチェーンのようにオープンになっていないと”誰か特定の人や企業を儲ける仕組み”と見られてしまうリスクや、本当にそういう方向に導かれてしまう可能性が高い。
そのため、Twitter・Googleフォーム・Googleスプレッドシートなどの無料サービスをフル活用して最小コストで運用を開始しました。

得られたスポンサー費用をGAS代などの実費に使う以外は、ここまで参加者の”手弁当”で行ってきています。
ただし、だからといって、いつまでもボランティア的な活動を継続させたいということでもありません。

DAOは、コミュニティの参加者みんなで、経済的インセンティブも得られる、株式会社を超える仕組みです。

これまでのボランティア的なコミュニティに留まらざるを得なかったネットコミュニティを、ブロックチェーン技術で進化させるのです。

LinuxやWkipediaのような「ネット上の世界中のみんなで行うプロジェクト」は、技術的限界から、”株式”のような「金融機能」を使うことができませんでした。
しかし、ブロックチェーンの登場により、ネット上の価値あるデータの流通もなめらかにできます。

この一歩は小さく見えてネットの世界のとてつもない革命です。
なぜなら、これまで国ごとに国家が「株式」という手に取れない概念を法的に担保していたものが、中央集権的な存在なくして、株式に匹敵する「トークン」を組織ごとに生み出すことができ、更にその存在と価値が確かに保てるようになったのですから。

スマートコントラクト(=議決権的な「ガバナンス・トークン」)によって可決と決議されたら、価値のある「暗号資産」が、自動的に特定の企業や個人のウォレットへ自動的に送付することができる。
ブロックチェーン上に改ざんできない形でプログラムが設定できるのです。

グローバルで、匿名で、共通通貨で、議決権を持って、「ヒト・モノ・カネ」といった「共用リソース」を取り扱える画期的な組織、それがDAOです。

大半が失敗するオープンソースプロジェクト

これまでに、ネットを通じ、世界中で様々なオープンソースプロジェクトが作られてきました。
それらは当初、画期的な組織としてもてはやされましたが、実は80%以上は1年以上継続できていません。
それは、”手弁当”の限界を端的に示しているとも言えます。

株式会社の起源

DAOと株式会社の違いについては以前こちらの記事にも書きました。

関連記事:トークンを活用したDAO(自立分散型組織)のメリットと、株式会社のデメリットから考える未来

「株式会社」は、大航海時代の貿易船が起源です。
1602年に設立されたオランダ東インド会社が、継続的な資本を持った最初の株式会社であるとされています。
当時はまだ航海技術が未成熟だったため、船が難破するの事故が多発していました。
ひとたび航海へ出て、無事ならば香辛料などの品物を持ち帰り利益を得ることができますが、沈没して全てがパァになるリスクも高かったのです。
このリスクを分散化し将来価値に出資する仕組みとして、「株式会社」が誕生しました。

現代社会においても、未来は不確定なものです。
特に昨今は時代変化のスピードが加速しているほか、急な災害や戦争が起こったりして、順調だった事業が急激に傾いてしまうこともあります。
株式を用いると、金融機能でリスクヘッジしたり、未来の収益から現在の資本=「カネ」に変換して、成長を早めることができます。

世界各国がなぜ「株式会社」という仕組み(=会社法)を法的に保証し、設計するのでしょうか?
それは、現代社会が持つ技術をベースに考えれば、社会を維持し、経済を発展させるためにもっとも効果的な組織だからです。
国家視点で、国民に自国を発展させるための活動をしてもらうために最良の組織なのです。

世の中を見渡してみると、一定以上の規模の事業やサービスは、ほとんど「株式会社」によってもたらされていることに気付くはずです。
DAOを採用することは、採用する組織にとって、「株式会社」を凌駕するメリットを持ち合わせる必要があるのです。

株式会社の役割をざっくり言えば、組織に紐づく「ヒト・モノ・カネといったリソースをどう分配するか」を中央集権的な”偉い「ヒト」”が意思決定を行い、サービスを発展させビジョンを実現させていくことです。

株式会社のカネ

例えば、ある組織に1億円のキャッシュ=「カネ」があるとします。
これを次のサービス開発に使うのか、社員の給与アップに使うなどを決めるのが、リソース配分の意思決定です。
片方に全額を使ったり、バランス良く配分するのも、”偉い「ヒト」”が決め、ビジョン実現に向け組織を操縦していくのです。

決裁権限は、
社員・・・1万円まで
係長・・・10万円まで
部長・・・100万円まで
役員・・・1,000万円まで
社長・・・1億円まで
取締役会・・・5億円まで
株主総会・・・5億円以上

という感じで、組織への影響度が高いほど、より中央集権的存在=”偉い「ヒト」”へエスカレーションを行っていくのです。

ビジョン実現に近道だからといって、社員が10億円規模の買収を即実行することはできない仕組みです。

「ヒト」や「モノ」も、組織に影響度の高い箇所も同じレイヤー構造で中央集権的に決まります。
例えば、立派なオフィスビル(=モノ)を社員が勝手に売却したり、執行役員という「ヒト」を勝手に社長にもできません。
これは、ピラミッド的構造で、中枢機能を”偉い「ヒト」”が采配しているからです。

なぜ株式会社?

そもそも世界はなぜ、株式会社によって社会や人々の暮らしを豊かに発展できたのでしょうか。

俯瞰してみると、次のような構造だからです。
株式会社
①会社組織を創る
②ヒト・モノ・カネなどの「リソース」を投じてサービスを開発する
③サービスを販売する
④消費者がサービスを購入&利用する
⑤会社に売上/収益が還ってくる
⑥「カネ」などのリソースが増える(ヒト・モノも増加)
⑦リソースの使いみちを中央集権的な”偉い「ヒト」”が決める
⑧より良いサービスを開発する
⑨より良いサービスを提供&販売する
⑩消費者がより良いサービスを購入&利用する

この繰り返しでより良いサービスが世の中に提供されます。
大事なのは、この一連のサイクルでリソースが増えていくためには、組織が提供するサービスが付加価値を帯びてプラスに社会を発展させていることです。
もしここがサイクルを経るたびにマイナスになっていると、「ヒト・モノ・カネ」といったリソースが減っていき、ビジョン実現が叶わなくなっていきます。

NFTJPNなど”手弁当”のネットコミュニティは、組織内に知財やブランドなどの「モノ」は増えていきますが、寄付などの僅かな「カネ」だけだと、適切なインセンティブ設計が困難。
熱量だけで「ヒト」の生活は成り立たず、結果リソースが減る負のスパイラル→長期的に株式会社に差をつけられていきます。

DAOを選択するということは、この大事かつ大半のリソースの意思決定をコミュニティに委ねることで、株式会社以上のリソース増加ペースで循環させていくだろう蓋然性が大切になります。
そのカギを握るのが、組織の中だけでなく外部リソースも巻き込んで連帯できる「中央が自動化された組織」設計です。

「中央が自動化された組織」を読み替えれば、スマートコントラクトによって、ルールやインセンティブが透明化されている組織です。
株式会社は、”偉い「ヒト」”の心=政治や忖度が絡み合った不明瞭な意思決定が起こるため、中央の「ヒト」の器以上の組織にはできませんでした。

DAOは、リソース配分についてコミュニティの意思を直接反映できるスマコンで中央を自動化することで、ルールやインセンティブに協調できる人や企業が自律分散的に関わり出します。

ブロックチェーンは、「カネ」にまつわるルールやインセンティブは透明化し自動執行できます。

DAOはひとつの株式会社の器の中に閉じた組織から、中央が自動化されることによって、周囲に個人から企業まで、あらゆるリソースを束ねることのできるスマコンで表現されたハブと言えます。
そのハブが目指すビジョンが大きいほど、連帯リソースが青天井で増える優位性が出てきます。

DAOが定めた中央の自動化される部分は一度設計されると変更しづらいため、ルールやインセンティブに異論が出て、連帯がかなわない場合、コミュニティが自律的に分裂して派生(=フォーク)や解散が行われます。

株式会社が組織として有利な点

株式会社が組織として有利なのは、
この最も使い勝手の良い経営資源(=「カネ」)が調達しやすい点です。
”株式”という金融機能を使い、未来の収益を現在の「カネ」に換えることができます。
そして、「カネ」から「ヒト」や「モノ」を調達することで、ビジョンを叶えるためのサービス開発やマーケティングにリソースを投じられます。

DAOが画期的な点

DAOが画期的なのは、
ブロックチェーンによって国家が担保していた”株式”の仕組みを超えられる点。
個人であっても大きな後ろ盾なく、グローバル金融市場にアクセスし、リスクマネーを提供してもらうことで、株式以上の「カネ」の調達を可能しているのです。

DAOにおいては、株式会社のように人材登用のハードルを設けないケースが多い。
そのため、世界中から「ヒト」が参加意思するだけで気軽にDAOに参加できます。
その人が提供できる分だけのリソースを少しずつ集めて束ねることができれば、大きな人的資源になりえます。
ただし、フラットな関係のため、管理や強制がしづらいという弱点があります。

人のやる気を引き出す仕組み

その人が「やる気」になるかどうかは、”共感”や”熱量”が大切になります。

DAOで興味深い点の1つは、従来でいう社員・消費者までもが、DAOの一員としてインセンティブが享受される点です。
「ヒト」が最大のパフォーマンスを発揮できるのは、貢献度に応じたインセンティブの設計自体にも影響を及ぼすことができ、かつその制度に納得がある時です。
この点において、DAOは株式会社よりも優れた組織だといえます。

各国の”軍隊”がピラミッド構造でトップダウンでしか採用されないように、明確なゴールがあり、目標を最速で達成するには、必ずしも「自律分散型組織」が最適ではないこともあります。

リソースの中で「モノ」は、その組織の活動によって積み上げてきたり、「カネ」で調達した社会的に価値を持つ資産です。
株式会社でもDAOでも、「モノ」を共用物として定義することで、コミュニティの参加者や外部の企業・人々が利活用でき、ビジョンの達成に向けて有効な手段になりえます

「モノ」の共用化は、ネットコミュニティとの相性も抜群で、Nounsも採用する「CC0」は許諾いらずで商用利用可。
グローバルでの「モノ」の流通を最大化する画期的施策。
DAOに限らずあらゆる組織で、ビジョンの実現に必要であれば選択されるものです。
NFTJPNでも「モノ」の共用化は効果的に活用します

まとめると、組織におけるリソースの共用化について ヒト:人の心は共用化しづらい モノ:共用化は組織によらない カネ:ブロックチェーン活用で共用化できる

組織としてDAOが株式会社を凌駕するには、「カネ」を深堀りすることが重要。

現代の資本主義社会を俯瞰してみると、株式会社という組織それぞれが、「カネ」を投資して人々の生活を豊かにするようなサービスを提供し、消費者がサービスに満足すれば「カネ」がまた組織に戻ってくるサイクルが営まれています

消費者から売り上げた「カネ」は、必要経費を除いて、組織の構成メンバー「ヒト」に還元したり登用したり、「モノ」に換えて次のサービスへの投資サイクルを回して、より大きな組織を作り、ビジョンを実現させていきます

消費者から売り上げた「カネ」は、必要経費を除いて、組織の構成メンバー「ヒト」に還元したり登用したり、「モノ」に換えて次のサービスへの投資サイクルを回して、より大きな組織を作り、ビジョンを実現させていきます

究極のDAO「Nouns DAO」

関連記事:Nouns DAOの凄さを解説 ―究極のNFTコレクション&DAO―

この前提でNounsを眺めると、これまでの株式会社=中央集権的な”偉い「ヒト」”が意思決定を行っていたリソースがどれくらい強大だったかが理解できます。
Nounsが持つ共用リソースを10段階評価で可視化すると、こんな感じでしょう。

Nounsの共用リソース10段階評価
ヒト:□□□□□□□□□□なし(自動)
モノ:■■□□□□□□□□CC0+OSS
カネ:■■■■■■■■■■70億円分のETH+NFT
「■」の部分が「中央が自動化された組織」=DAOとしてコミュニティへ100%共用化されるのです

もしNounsが株式会社だった場合、
ヒト:□□□□□□□□□□なし(自動)
モノ:■■□□□□□□□□CC0+OSS
カネ:■■□□□□□□□□70億円分のETH+NFT
組織がビジョンを実現するための影響度の高い「カネ」の大半を共用化できません。
これが株式会社の限界であり、DAOが勝る部分です。

Nounsは、運営されていくことで蓄積される売上や知財がすべてコミュニティ内外に共用化されている仕組みになっており、中央集権的な”偉い「ヒト」”が存在しないことを突き詰めていることがわかります。
これはコミュニティの意思決定に、全幅の信頼をおいているからこその振る舞いです。

売上から送金まで「カネ」にまつわる意思決定に、人を介在させないのです。

Nounsの創業者たちやNFT保有者たちとのレイヤーは存在するものの、誰でも自律的に参加できるオープンな組織であることを、『ルール』としてスマートコントラクトに表現して示しているのです。
DAOがトラストレスと言われるゆえんです。

お金の流れをトラストレスにする重要性

組織の中央を自動化することで得られるトラストレスのメリットは強大です。
コード検証できていれば、確実に執行される予算・報酬設計=「カネ」のルールに納得でき、世界中の「ヒト」が集う動機になりえるからです。

自動送金がなぜ重要なのでしょうか。
仮に、有意義な企画の提案があったとしてDAOの意思決定によって「可決」されたとします。
ただ、その後のトレジャリーからの送金タスクが自動化されていない場合、もし送金作業を行う「ヒト」が、その企画に反対していたとしたら、送金を止める可能性が出てきます。
DAO内外の参加者や参加企業からするとせっかくコミュニティが賛同=「可決」しても送金がされないリスクがあるなら、一歩ひいてしまいます。
有意義な提案も出したくなくなります。
人の手を介在することで起こる政治や忖度です。
株式会社あるある。
中央が自動化されることでこの問題は起こくなります。

一方で、民主的に決めることが必ずしもベストな選択になりえないことは、民主主義国家 vs 独裁国家との比較で繰り返し議論されてきたことです。
未来を見通せる超優秀なトップが即断即決で決議したほうが、短期的には民主主義的アプローチに勝ることもあるからです。

売上など「カネ」をトレジャリーに100%入れる組織だけがDAOではありません。
組織にとって重要なリソース=ヒト・モノ・カネの”大半”を、人の手を介在せずに、参加者によって決議した意思決定を、自動的に執行できること、これが「中央が自動化された組織」=DAOだと考えます。

例えば、売上を100%トレジャリーに貯めるのではなく、売上の30%分はスマコンで「決まった使いみちに自動的に送金」が行われるような仕組みも、DAOで成立する可能性があります。
DAOでの活動がそのままビジョン実現につながるなら、集まる「ヒト」のモチベーションを引き出せる可能性があるからです。
中央を自動化することで、どれだけDAOコミュニティや内外の参加者を信じかで成功時のスケール感が大きく変わります。
国籍や人種や性別などによらずにフェアで透明化されたインセンティブ設計にどれだけ共感されるかが大事で、それが実現できるビジョンの大きさと深さに繋がってきます。

DAOは、株式会社での"分断"を埋める

株主・経営者<>社員<>ファンといった間に大きな溝があって、それぞれに役割が分断されていたのが株式会社。
DAOは、これらの溝を埋め融合させる仕組み。
ファンが株主であり主体者なので、「自分が好きで使っているサービスの大きな意思決定に参加できる」。
これはまさに理想的なコミュニティの姿です。

DAOをデザインするとき、「カネ」の共用化=組織の心臓部を自動化することは、コミュニティの意思をどれくらい信じることができるかが問われます。
そのビジョンをかなえる時、DAOがベストと確信できるかが重要で、「それって株式会社でも良かったのでは?」と自問し続ける旅なのでしょう。

「自動化する中央」の箇所をどれくらい広げられるかによって、DAOの純度が変わります。
Nounsのように、参加者の意思決定を信じ切った、出せる限りのリソースを提供できるかというスタンスが大切です。
また同時に、本来中央で既得権を取れた”偉い「ヒト」”も、いち参加者レベルに立場を揃えられるかも重要です。

NFTJPNが持っているリソースは、現在、
・スポンサー費用=「カネ」
・ロゴやブランドやクリエイター参加者のデータベース的な「モノ」
・強制はできないもののコミュニティの協力者
があります。
中でも、「カネ」にあたる軍資金が潤沢にあるほうが、ビジョンの実現には素早く到達できるでしょう。

思考実験として、1,000万円の「カネ」と、NFTJPNのロゴがあったときに、DAO内外の参加者や参加企業は、どちらのリソースを活用したほうが、ビジョンの実現に近づけられるか?
という、シンプルな話です。

仮にNFTJPNでなくLouisVuittonやGUCCIのロゴ=「モノ」を使えるとしても、それをうまく活用できる参加者や参加企業はそれほど多くないでしょう。
やはり、あらゆるリソースに交換可能な(例えば1,000万円の)「カネ」が共用化されるインパクトは大きいと考えます。
カネは、万人にとって段違いに扱いやすいのです。

DAOは、あらゆるリソースの中でも最も様々なリソースに交換可能な「カネ」を、
・ブロックチェーンによって、
・グローバルに、
・匿名で、
・共通の暗号資産でみんなで管理し、
・DAO参加者の意思決定に基づいて自動的に送金が行われる、
おそるべき仕組みを備えています。

株式会社ではできなかった、中央の自動化=「カネ」を共用化することで、周りのあらゆる参加者や参加企業からボトムアップ型にビジョンが実現されてしまうことができる、ある意味、公共的な投資ファンドともいえるのです。

「中央が自動」であることは、その組織のインセンティブや報酬や方針などの決まりごとがスマコンに書かれていて、リソース=ヒト・モノ・カネのうち、組織にとってもっともビジョン実現のための影響度が高い「カネ」をどう振り分けるかの意思決定を中央ではなく参加者に委ねることでしょう

最先端の事例・Nounsでは中央が完全に自動化しています。

①毎日オークションでNFT販売
②売上をコミュニティのトレジャリーにプール
③使いみちをNFT1体=1票の決議(誰もが上程できる)
④提案可決で自動的に提案者/提案企業に自動的に送金される
こうしたコア機能がスマコンで自動化されてます。

こうした自動化された決まりごとはスマートコントラクトから検証可能になっており、Nounsを購入した”投資家”として「カネ」の使いみちが、株式会社の「ヒト」に預けることに比べてより明確になります。
いわゆる一般的な株式会社の経営者と社員の上限関係で見れば、いかにフェアかが伝わると思います。

Nounsの売上が100%コミュニティのトレジャリーにプールされることは、創業者たちのDAOへのスタンスを示しています。
OpenSeaのように通常であれば、プラットフォーム手数料X%をトップオフ、というやり方も選択できたからです。
いまプールされている70億円の2%でも、1.4億円の収益になっていました。

ところが、こうした売上や収益が中央に吸われていく構造は、究極的には「DAO」の最大限のスケールを阻害する要因になりえます。
なぜなら、DAO的に働いて売上を高めていったとしても永続的に数%の手数料を創業者たちが先に取得され続ける「中央にいるヒトを優先的に潤い続けさせる構造」だからです。

「中央にヒトがいて売上が一定取られる構造」と「中央が自動で売上が100%コミュニティにプールされる構造」とでは、そのフェアさから、参加者や参加企業の数が格段に変わってくることは確実です。
しかもグローバルに広がりを見せるDAOであればなおさらです。

「中央が自動化されている」メリットは、中央に権限だけでなく収益も優位性を与えない構造を可視化でき、よりグローバルな「ヒト」や「モノ」といったリソースを集めることが可能。
中央が「ヒトの”心”」を通して不透明になると、いつでも政治や忖度によってルールが破られるリスクをはらむのです。

スマコンは、決まり事や権限が透明化し、誰でも検証が可能。
国籍や人種によらずフェアさが永続的に担保されています。
フェアだからこそ、自動化された周りに集まる参加者や参加企業は”本気”で取り組むことができます。
ビットコインやイーサリアムのマイニングを進める個人や企業の視点と同じです。

DAOのコアメンバーの収益について

DAOのコアメンバーたちの収益の設計に目を向けてみましょう。
Nounsは売上の「カネ」を手数料で取らない代わりに、創業者たち10人は、リリースから5年間は毎日世の中に生み出されるNFTのうち、10日に1回=10%分のNFTをもらうことになっています。
つまり、創業者1人あたりで考えると、100日にNFTを1個もらえる計算です。

白紙の状態から企画・制作・開発を進め、初日からDAO化に成功したため、そのリスクは過小評価されがちですが、鳴かず飛ばずの可能性もあるのがこの世界。
そのかけた労力やコストに対するリスクとして、「カネ」でもない100日に1個だけのNFTを5年分ということをどう捉えるかは、参加者次第になります。

Nounsは、自動で動く仕組みとはいえ、株式会社やWeb2.0時代には考えれなかったような低い報酬で、ケーキ屋さんがケーキを作って売ったお金はコミュニティにあずけて、自分は1%分だけのケーキの実物を持ち帰るというようなスタンスで振る舞っているので、異様ともいえるかもしれません。

ただ、こうした参加者と立場を揃えた創業者たちの振る舞いがあったからこそ、1年もしないうちに70億円もの「カネ」が集まり、その「カネ」を有意義に使うDAO成立したため、わずか1%分であっても、その資産価値は巨大です。

率ではなく額を増やす

これこそが、DAOやWeb3での新しい考え方なのだと思います。

Nounsは、中央が自動化された周りに集まる「ヒト」=参加者や参加企業は、初期に立ち上げた創業者たちをリスペクトこそすれ、トレジャリーの使い道についての権限は1NFTあたり1票で立場は揃います。
なによりトップオフで収益を吸われないことで、組織は完全に参加者・参加企業のものとなるわけです。

閉じた枠組みの株式会社で作られるサービスに比べて、初期にリスクを取った創業者たちと比べて、参加者や参加企業が有利なルールであると伝われば、グローバルに集まる「ヒト」がビジョンの実現に途方も無いスピード感とスケールをもたらす可能性が伝わるでしょうか?
課題は大きいにしろ、伸びしろ大!

NFTJPNにおける、理想的なDAOの姿

・株式会社よりもDAOの方がビジョンの実現がかなう
・ブロックチェーンを活用したDAOならではの設計を行う
・スポンサー費用など売上は100%トレジャリーに入れ、DAOならではの「共用リソース」をコミュニティに委ねる

・共用リソースの「モノ」=NFTJPNのロゴやブランド、開発したソースコード等も共用化し、ガバナンス・トークンによる参加者の意思を反映させる
・中央を大きく深く自動化する=スマートコントラクトで予算や許諾の自動的な予算執行や自動送金を行う

・内外の参加者や参加企業がもっとも共感と賛同を得られるようなルールやインセンティブ設計を行う
・日々の活動や月1イベントの運用のスマートコントラクトだけでは表現できない企画や施策は、内外の参加者からの提案と決議・意思にもとづいて、推進者の選定や方針/内容が作っていく
・DAOへの参加や退出は誰の許可も不要
・現状、DAOとしてスケールするためのもっとも大事な「カネ」というリソースの規模が小さすぎるため、現在のネットコミュニティ期間に、さらなる売上/収益を集める企画や施策を試していく
・よりフェアに内外の参加者/参加企業/コミュニティの賛同を得やすくするため、月1イベントのルール(審査員制度含む)やインセンティブ設計や運用部分をdApps化(スマートコントラクト活用)で自動運用される仕組みを作る

NFTJPNがDAO化を目指す方向性としてのベースデザインは以上です。
具体的なDAO化に向けての動き方は、今後、起案者である私に集中している権限の分散化するためにも、すでにDiscord内においてタスクの分解と役割の引き継ぎなどを行っていきます。


※この記事は、パジ(@paji_a)の発言をベースにかねりん(@kanerinx)が編集して記事化しています。
※この記事の元投稿は、HiDΞで連載中のマガジンです。(JPYCの投げ銭も可能)

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