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~ ライフデザイン特別授業 & ワークショップ ~ 中央大生との対話でわかった若者のリアルな「恋愛」の位置付け

若い世代が自ら結婚や出産、育児をはじめとした人生のライフステージをどのように選択するのか、構想を描くことを「ライフデザイン」と呼びます。近年、このライフデザインについて若年層が主体的に考える場を設ける取り組みが官民で進められています。こども家庭庁の調査によるとマッチングアプリを出会いのきっかけとして結婚した人の割合が4人に1人以上にのぼり、ライフステージの選択肢の一つとして定着している状況において、恋活・婚活マッチングアプリを提供する事業者として若年層がライフデザインをどのように考えているのか、ペアーズは対話する機会を模索していました。


そして2025年1月に、恋愛や結婚をはじめとした家族社会学を専門とする中央大学・山田昌弘教授のご協力のもと、山田ゼミおよび演習の学生と交流の機会をいただき「恋愛や結婚ってなんだろう?ライフデザイン特別授業&ワークショップ」を開催しました。世界16か国で消費者調査を行うMatch Group(以下 マッチ・グループ) リサーチディレクターの工藤彩乃が登壇し、授業形式で日本と海外の恋愛・結婚事情を紹介し、学生と社員らを交えてワークショップを実施しました。

特別授業で学生に伝えた、日本と海外の恋愛・結婚事情

「恋愛や結婚ってなんだろう?ライフデザイン特別授業&ワークショップ」の様子

参加した学生は、恋愛や結婚をはじめとした社会学について山田教授のもとで学んでおり、マッチングアプリ事業者の社会における役割や課題解決に対するアプローチを学ぶ目的で、授業とワークショップに参加しました。

授業でははじめに、日本社会が直面している課題として少子化や未婚化の実情として、ニュースで多く耳にする合計特殊出生率や出生数の数値のほか、完結出生児数や非嫡出子率について説明。夫婦あたりの子供の数はあまり減っておらず、未婚化が少子化の大きな要因の一つであることを話し、結婚に至る過程の「身近な出会いの場」であったお見合い結婚や職場結婚数が近年減少していることが、婚姻数の減少と関わりがある状況が紹介されました。

未婚化が少子化の主因の一つとされている
(出生数&婚姻率 出典元:厚生労働省 令和5年人口動態統計)

婚姻数が減少している実態に反して、多くの人は恋愛やその先の結婚を望んでいます。実際にマッチ・グループが2022年、18〜34歳の独身者(交際相手なし)を対象に調査したところ、7割以上が「異性との何らかの関係性を望んでいる」と回答しました。工藤は「多くの若者が交際したいと考えつつも、実際に(恋愛や結婚に向けた)行動に移していないケースが増えている」と分析しています。

若年層独身者の7割以上が異性と何らかの関係性を望んでいる
(2022年18〜34歳 独身・相手なしを対象にマッチ・グループ自社調査から抜粋)

マッチ・グループがインタビューやデータを通して分析した、交際まで行動に移せない主な要因は「時間やエネルギーを割く余裕がないから」。“失われた30年”という言葉に代表される不況から、将来を悲観して日々の生活に疲れる人が多く、ちょっとした自由時間を作れたとしても、自分を取り戻すための推し活等の息抜きに時間を使うため、やることと楽しめることを両立すると恋愛が入り込む余地がないと工藤は話します。

次に、データやインタビューから導き出した日本と海外の恋愛・結婚観の比較を、学生との質疑を交えながら紹介しました。例えばお相手を選ぶポイントについてタイで調査したところ「年収や性格よりも見た目」という結果が出ており、私たち日本人が重視するポイントと異なります。タイでは古くから女性が家計の担い手であった社会的な背景が関係しており、その影響からお相手に収入や性格を求めず、見た目を重視する傾向に繋がっているようです。日本も今でこそ共働きが当たり前の社会となりつつありますが、一昔前は専業主婦が多く、結婚相手の家庭に入ることが前提だったことから年収や性格を重視していました。こうした社会背景を交えた各国の恋愛・結婚観の比較を説明するたびに、学生は大きく頷いたりメモを取っていました。また事後アンケートでも「日本については多少はわかっていたが、世界の恋愛や結婚に関しては知らないことだらけで刺激的でした」というコメントが寄せられるなど、多くの学生が日本と海外の恋愛・結婚観の比較に満足していたようです。

日本と他国で社会や恋愛・結婚観は大きく異なる
(マッチ・グループ インタビュー自社調査から抜粋)

授業の最後に工藤は「自分自身の好きなものはわかるけど、そんな自分が好きな人がわからずマッチングアプリでも探し方がわからないという恋活・婚活に悩みを持つ若者が多い。その悩みを解決するためにペアーズが調査分析を行い、良い出会いの提供に努めている」と語り、マッチングアプリの社会における存在意義を学生に説明しました。

学生と社員が取り組んだワークショップ

プログラムの後半は、学生とペアーズの社員らを交えて合計25名を6グループに分けて、「あなたの脳内メーカー」「社会課題カードソーティング」「ランプの魔人と魔法の杖」という恋愛をテーマにしたワークショップを開催。両者の交流を通して、学生は恋愛が自身にとってどのような存在なのか客観的に確認し、ペアーズは大学生の“リアル”を学ぶことを目的に実施しました。

学生の脳内は「恋愛」よりも「お金」「バイト」「授業」?

初めに実施した「あなたの脳内メーカー」は、「頭の中を占めていること」について「恋愛」の項目を必ず入れて作成してもらいました。その結果、学生は「お金」「バイト」「授業」「友達」「遊び」等のワードを書き連ね、「恋愛」はそれらと横並びか小さい割合で記載しており、重要度が特に高いわけではない実情が浮き彫りになりました。この大学生の等身大の回答は、先ほどご紹介した「時間やエネルギーを割く余裕がないから」というマッチ・グループの過去の調査ともリンクする結果とも言えるでしょう。

学生の記入例。「恋愛」が占める割合は必ずしも大きくない

一方で学生個人にフォーカスしてみると、ある学生は「恋愛」が「金欠」等と並んで最も大きく脳内を占めていました。理由を尋ねると「恋人と楽しいデート時間を過ごすために、バイトを頑張ってお金を貯めたい」と語り、ペアーズのアプリ内で提供する「本音マッチ」機能の回答データから浮き彫りになった、二人の時間を大切にする新成人の傾向がワークショップでも表れていました。

学生が社会課題と捉える内容は?

続く「社会課題カードソーティング」では、社会課題を書き出した16枚のカードから、学生が「興味・関心がある、気になっている」テーマを直感で選び、社会や大人に求められることを話し合いました。

会話のテーマになった「社会課題カード」の内容

グループごとに取り上げる課題は異なり、さまざまな議論が交わされましたが、社会学のゼミに参加する学生たちらしく「家族の形・あり方や婚姻制度」を取り上げる人も多く目立ちました。ある学生は「最近結婚した身近な大人に、『結婚は恋愛感情だけでするものではない』と話を聞き、恋愛と結婚は別物ということに驚いた」と社員に話し、恋愛や結婚に関する話題が身近になって初めて自分ごととして捉えたエピソードを熱心に語りました。この話を聞いた社員は「恋愛や結婚に関して身近に思ってもらうことが婚姻率の上昇に繋がるのかもしれない」と学生に回答し、ライフデザインについて学ぶ機会を設ける必要性を再認識したようです。

他にも学生から「時代に則した婚姻に関する制度整備が議論半ばであまり進展せず、準ずる制度があっても周りの目などもあり活用が進んでいないように思う」という意見も出ました。また、脳内メーカーで挙げられた「お金」に関連して「日本の政治と経済」に触れる学生も複数名いたことから、自身の身に降りかかる現実と学びの狭間で日々を生きる学生の“リアル”が垣間見えたワークの一つでした。

学生が「理想の恋愛」を実現するために叶えたい願望

最後のワークは理想の恋愛やマッチングアプリ体験を学生に尋ねるものでした。私たちペアーズが日々改善・改良するマッチングアプリ体験を、学生たちとの交流から紐解く目的で実施しましたが、私たちが課題として捉えている内容から示唆に富む回答まで、非常に多くの気づきを学生に与えてもらいました。

理想の恋愛を書き出してもらう「ランプの魔神」のワークでは、社員が魔神となって「理想の恋愛を楽しむために叶えたい願望」等に回答しました。ここでも、これまでのワーク内に聞かれた「金銭面の余裕のなさが恋愛の障壁に繋がっている」という悩みが、複数のグループで聞かれました。その一方で、「魅力的な人間になりたい」「他人からどう見られているか(知りたい)」といった第三者の印象を意識した願望や、「コミュニケーション能力を高めたい」「(恋愛相手に)出会うまでのやり取りが面倒」といった課題を複数の人が上げており、SNS全盛時代らしい若者の悩みを皆抱えていることがわかりました。

学生のシンプルな願望も…

「楽しかった」の声で溢れた特別授業 & ワークショップ

ワークショップを終えた直後、参加した学生が自然に「楽しかった」と社員に話しかけてくれたほか、事後アンケートでもペアーズの社員と交流したことについて、回答者全員が最高評価で「楽しかった」と回答しました。また、「恋愛や結婚に対する自身の意識(マインド)」がイベント前後で変わったか確認したところ、「大きく変わった/やや変わった」が多数を占めました。

恋愛や結婚について授業を受けてワークショップに取り組むことが、社会学を専攻する学生たちの回答といえど少なからずポジティブな影響を与えたことは、大学生と対話できたことを含めてペアーズにとっても大きな気付きとなりました。最後に、学生が授業とワークショップに対して抱いた印象のコメントを公開するとともに、貴重な機会をいただいた中央大学・山田昌弘教授とゼミ生15名の皆さまに改めて感謝を申し上げます。