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東京大学の小島先生に「マッチング理論」について、マッチングアプリの会社が聞いてみた

 Pairs(ペアーズ)では、AIを駆使しながら高度なマッチングシステムの開発に挑んでいます。より安全で、より良いマッチングを提供するためには、ときにはさまざまな分野の有識者の方からも知見を得ています。今回は、弊社のAll Handsに特別なゲストスピーカーをお招きした様子をお伝えします! 


ペアーズのAll Handsって?

All Hands(全社集会)は2種類で、ペアーズを運営するエウレカ社員だけのものと、日本オフィスで働くMatch Group(MG)Tinder(ティンダー)Hyperconnect(ハイパーコネクト)の社員も参加するMG All Handsがあり、後者は年に2度、夏と冬に開催されます。

1月に今年最初のMG All Handsが実施され、オフィスには約70名が集合し、オンラインからも約50名のグループ社員が参加しました。各事業の責任者からビジネスのアップデートやニュースが共有され、社員は最新の情報をキャッチアップをしました。

今回のAll Handsでは、特別にゲストスピーカーをお招きして、社内向けにご講演をしていただきました。そのスペシャルゲストは、東京大学経済学部教授・東京大学マーケットデザインセンター センター長の小島武仁(こじま ふひと)先生です。

小島先生は、人と人、人とモノ・サービスを適材適所に引き合わせる方法を考える「マッチング理論」の世界的権威で、その理論を応用して社会制度の設計や実装につなげる「マーケットデザイン」を専門に研究されています。

これまでに、研修医のマッチング制度や待機児童問題を改善する具体的な方法などを発明しています。多くの国際的な学術誌に論文を発表し、受賞歴も多数あるなど、グローバルの第一線でご活躍されています。

小島先生をお招きしたきっかけ

2023年に公開された「PIVOT」のYouTubeを、弊社代表の山本が見て、強く印象に残ったそうです。また、社内にも小島先生のファンがいて、「マッチング理論」についても話題になっていました。

小島先生の専門分野は「マッチング」ですが、これまでマッチングアプリ自体の研究はされていませんでした。小島先生をゲストにお招きすることで、他の分野や業界におけるマッチングの応用からどんなことが学べるのか、期待が膨らみます。

「マッチング理論」とは

「マッチング理論」は、人と人(あるいは人とモノ・サービス)を適材適所に引き合わせる方法を考える学問で、世の中のあらゆる事象はマッチングの側面があるそうです。まずは小島先生のご研究から、マッチング理論の知見を活かした、社員と部署それぞれの希望を尊重する配属決定方法についてお話しいただきました。

マッチング理論を用いた最適な社員配属方法

社員の配属には、社員自身の希望と会社や部署のニーズがあります。新卒入社のケースが顕著ですが、配属のマッチングは恋愛のマッチングと違って一斉にマッチングが可能です。

社員にとっても会社にとっても双方に良いマッチング方法とはなんでしょうか?

「新入社員を配属する際に、その社員の希望をなるべく叶えてあげようという社員想いの会社があるとします。社員から『どこに行きたいのか、どこなら行ってもいいのか』という希望を出してもらい、自分が『行ってもいい』と申告したところにマッチされる社員がなるべく多くなるようなルールのもと配属を決めるとします。

このやり方は、必ずしも上手くはいきません。なぜならば、社員が正直な希望を言うとは限らないからです。」

小島先生によると、第一希望から第三希望まで書く人もいれば、第一希望しか書かない人もいます。また、第一希望の部署は人気が高いから、入れそうな部署を本当は第二希望なのに第一希望として書く人も出てきます。

さらに、「ここしか希望しない」と嘘の申告をすれば、より行きたいところに行けると気づく人が出てきます。このように、本当の希望を伝えないのは、社員や部署の責任ではなくルール設計の問題です。

解決方法となるのが「マッチングアルゴリズム」

「なるべく多くの社員を希望部署に配属したい」「なるべく第一希望を尊重してあげたい」という方針が見透かされてしまうと、社員は嘘をつくインセンティブがあると気づいてしまいます。こうしたインセンティブの問題を解決する配属制度を実現するのが「マッチングアルゴリズム」です。

「マッチングアルゴリズムを使うことで、社員は希望順位に関して嘘をついても得をしません。それによって、部署の人気度に対する正確な情報が得られると同時に、制度への信頼性が担保されます。さらに、自らの希望を叶えるために戦略を考えるという無駄な業務がなくなるのです」

熱心にプレゼンする小島先生

結果の公平性や透明性が確保できるため、可能な限り、社員がもっとも希望しているところへ配属されるようになったそうです。

ある事例では、新入社員の配属にマッチングアルゴリズムを用いたことにより、97%の社員が配属に満足しているというアンケート結果が得られたそうです。97%の社員が配属に満足しているとは、驚きですね! 

他にも企業内人事の実装例や、企業との共同研究のほか、転職市場におけるマッチングのための生成AI活用についても、非常にわかりやすくご説明いただきました。

All Handsの様子

この写真からも、社員が興味深く聴いているのがわかりますね。社内からは、マッチング理論の活用によってマッチングした方のその後の満足度についての質問もありました。

エウレカ代表取締役CEOの山本竜馬(写真左)と東京大学教授小島武仁先生

All Hands まとめ

小島先生の研究分野である「マッチング理論」や活用事例に加え、先生が考えるマッチングアプリの課題や可能性についてもお話しいただきました。

小島先生のお話は、全社員がマッチングについていろいろと考える良い刺激になりました。今後も引き続き、学ばせていただきたいと思います。小島先生、貴重なご講演ありがとうございました!

All Handsの後には、マグロの解体ショーが開催され、社員一同で新鮮なお刺身やお寿司をいただきながら、新年会を楽しみました。

鮪達人さんのマグロ解体ショー