ペアーズとの連携協定の効果 〜三重県桑名市SDGs推進課黒田法雄氏〜
三重県桑名市とPairs(ペアーズ)は、「独身男女の出逢いの機会創出等に向けた連携協定」を2022年11月に締結し、1年が経過しました。連携による市民への反響や実施したプログラムについて、桑名市の出会い促進をコーディネートする桑名市SDGs推進課黒田法雄課長にお話を伺いました。
桑名市は、2015年をピークに人口が減少に転じており、2022年2月には14万人を下回っています。出生数も年間1,000人を下回る状況となり、未婚率も男女ともに上昇傾向にあります。こうした課題解決に向けて、「桑名市人口減少対策パッケージ“14万”リバウンドプラン」を打ち出し、若者の考えや気持ちに寄り添った施策を展開するため、共に取り組めるパートナーを探していました。
一方、ペアーズでは、これまでの調査から「自治体の少子化・未婚化の課題解決に向けて、恋人探しのための活動をする人口をいかに増やすかが重要」という知見を得ていました。そこで、新たにペアーズの利用をきっかけとし、恋人探しのための活動をする人を増やすことのできる施策を模索していました。こうした両者の課題と目的が一致したことで、連携協定締結にいたりました。
連携協定とその効果
ーーペアーズとの連携協定は桑名市民にどのように受け入れられているでしょうか。また、自治体職員の皆さまにも若者に関する政策について考え方や視点の変化はありましたか?
社会的な認知の観点から、マッチングアプリ事業者と連携することで市民からご批判をいただくかもしれないという懸念はありましたが、現時点で1件もそういったご意見はきておらず、順調に進んでいます。
むしろ驚いたことに、市内にお住まいの70〜80代の方から「孫も使えるのか」とお問い合わせをいただきました。マッチングアプリに対しては、若い方の認知はもともとあったと思いますが、高齢者層からの受け入れも広がっているようです。マッチングアプリと出会い系は違うといった認識が広がっていることは間違いありません。
連携協定による桑名市職員への影響も大きいです。若者の考えや気持ちに寄り添うような事業施策を考えるというプラスの効果も出てはじめています。積極的に前へ進めるような意識に変化したのではないでしょうか。これは行政として、とても大きな影響と言えます。
ペアーズと実施したイベントについて
ーーこれまでに、トークセッションや恋活・婚活オンラインセミナー、ペアーズコンシェルジュによる恋愛お悩み相談会などのイベントを開催しました。今回の連携協定において、とくにどの取り組みが好評だったでしょうか。
イベントへの参加者には、全体的に好評でした。とくに桑名市の伊藤徳宇(いとうなるたか)市長とペアーズの代表取締役CEO山本竜馬氏とのトークイベントを開催できたことは、大きな意義がありました。代表同士がトークイベントを行うことで、どのような方向に向かうのかという意識をしっかり共有することができました。
イベント後に市民から回答いただいたアンケートで、「桑名市で結婚して子育てをして一生を過ごしたいので、引き続きこうした事業をしていただきたい」という声がありました。これは非常に嬉しかったですね。恋愛お悩み相談会でペアーズコンシェルジュと話をしたという市民の方から、「恋愛の悩みを明快に解決してくれた」という声もいただきました。イベントを実施した甲斐があったと思います。
桑名市のSDGs推進と少子化対策
ーー桑名市の少子化対策活動のSDGsにおける位置付けを教えてください。
私が所属しているSDGs推進課では、若者向けの施策をすべて取りまとめており、人口問題を一番に捉えています。桑名市全体で考えなければいけないのは、SDGsの目標11にある「住み続けられるまちづくりを」です。その根幹となるのが人ですので、人口減少対策を中心に考えています。そのためにも少子化対策は欠かせません。
「10年、20年先も住み続けるまち」、「10年、20年先に誰がこの社会を支えていくのか」を考える視点は重要です。若者や高齢者の気持ちに寄り添いながら、全体を考える視点を持つ必要があります。
ーーこの連携協定を通じて、地域課題解決のため、これまでにどのように貢献できているとお考えでしょうか。
少子化対策を色々な角度から考えると、社会的および文化的な背景が複雑に絡み合って現在の状況になっていると思います。雇用の問題や社会風土の問題などをすべてクリアしていかないと、最終目標である合計特殊出生率を上げていくことにはつながらないと分かりました。これらの課題を解決することができたら、非常に前向きな社会の雰囲気ができてくると思います。連携協定をしたからといってすぐに課題は解決できませんが、解決に向けた一歩となる若者向けの施策を考えること自体が大きなことです。
桑名市とペアーズの取り組みについて、他の自治体からお問い合わせを多くいただいています。みなさんが一番懸念しているのは、社会的な批判ではないでしょうか。「マッチングアプリ=出会い系」というイメージがあるかもしれませんが、先ほどもお話ししたように、一般的にはマッチングアプリと出会い系は違うといった認識が確実に広がっています。
ペアーズとの連携に関する今後の展望
ーー今後、ペアーズとの取り組みに期待することやこれからの課題についてお聞かせください。
オンラインセミナーや相談会を実施したところ、非常に効果があるとわかったので、引き続き実施していきたいと思っています。施策を進めてきたなかで、課題として見えてきたこともあります。それは、20代や30代の結婚をしたいと考えている方に行動していただくために、促していく必要があることです。そのためにはご本人はもちろん、その親御さんにもアプローチをして家族ぐるみで婚活を意識してもらう活動をしたいと思っています。
さらに、地域の事業者とも一緒に連携していきたいと考えています。今回の連携協定に対して、非常に前向きに捉えていただいている事業者も絡めて、トータルパッケージを組みたいと考えています。桑名市には大型アミューズメント施設や由緒ある神社などがありますし、最近は「桑名かき氷街道」などかき氷のイベントも盛り上がっていますので、こうした地域の事業や観光と一緒に連携して取り組むことも大切だと考えています。
少子化対策をはじめ、結婚については桑名市だけで解決できるものではありません。日本全体で考えていかなければならない深刻な課題です。地方自治体のみなさまには、マッチングアプリに対して安全性や効率性についての新たな認識を持っていただければと思います。少子化対策は、さまざまな自治体で取り組んでいかなければいけない課題ですので、一緒にできることがあればぜひお声がけいただければと思います。
桑名市との取り組みについては、こちらのnoteでもご紹介しています。
三重県桑名市 × Pairs(ペアーズ) 出会いの創出に向けて連携協定
三重県桑名市×ペアーズ 出会い創出 協定週間の舞台裏!