仙石裕美 & 編集Lily

画家仙石裕美と編集者Lilyの交換日記のようなもの。

仙石裕美 & 編集Lily

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マガジン

  • London Story:画家の生活|仙石裕美

    • 6本

    仙石裕美の日記のようなもの

  • Tokyo Story:編集者の生活|編集Lily

    • 8本

    編集Lilyの日記のようなもの

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私たちのこと|絵を描くふたり:仙石裕美&編集Lily

私たちは2012年に出会いました。画家と書籍編集者。偶然机を並べることになったその日から、すでに親友であり、盟友だったのだと思います。 仙石裕美(Hiromi SENGOKU) 画家。 埼玉出身。武蔵野美術大学大学院中退、パリ国立美術学校 (ボザール) 修了後、東京を拠点に個展や国内外グループ展・アートフェアにて作品を発表。2023年~ロンドン在住。制作と発表のほかに絵画講師もします。 ■ HP: Hiromi SENGOKU >>作品集(※ぜひご覧ください) ■ X:

    • “描くことはふたたび愛すること”|Lilyさんの絵画レッスン #04

      Lilyさんの絵画レッスン、初回の桃に続き、2回目のモチーフにはお銚子が選ばれた。白地に藍色の牡丹の絵が入っており、アンティークな風合いで趣がある。これで日本酒を飲んだりするのかな、いいな。 絵画レッスンをしていると、楽しい。多くの人は、レッスンにあたり、好意的に思っているものごとを描く。コンセプチュアルな美術作品などはその限りでないが、絵画技術を習おうという段階で大嫌いなものを描く人は、あまりいない(あるとすれば、心理療法的な何かとか、はたまた呪いの類とか……、ちょっと目

      • 初夏の桃、そこにあなたは何を見たのか|Lilyさんの絵画レッスン #03

        デッサンの初回レッスンに選ばれしモチーフ、それは桃だった。いいですねぇ、桃。まさに旬。 果物や野菜はずっと見ていると不思議なほどに“人”を感じる。美しいにしろ歪であるにしろ、何か特別な思い入れや賞嘆や愛着が湧く。特に日々の生活の中で身近な食べ物などは、そこにその人の日々や人生の、根幹の何かかがいつのまにか投影されてしまうのだろう。絵画のモチーフであれば、描く側もそうであるし、観る側もまた然り。 Lilyさんの桃の制作をオンライン画面越しに見ながら、桃などの果物が描かれたい

        • 榊とお神酒も準備は万全|Lilyさんの絵画レッスン #02

          夏だというのに何とも心躍らない事務作業に翻弄されているうちに、すっかり更新に間が空いてしまった。とは言えその間にも、私は日本を訪れたりLilyさん宅に一家で転がりこんだりして、慌ただしいながらも夏休み的なものを楽しんだのでした。 やっぱりたまには普段の生活の場から離れるって大事だな、視界が変わって頭と身体の中が入れ替わるような気がする。欧米人がヴァカンスに命かけてるのも分かるわ。ということで、またコツコツと更新をしていきたいと思います。 時は遡って、初回はヒアリングから始

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        私たちのこと|絵を描くふたり:仙石裕美&編集Lily

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        記事

          「肌キレイねぇ」の水面下で脚は水を掻いとるんや、のぅ?|絵を描くことで思考する #04

          ストレスかな? と黙殺してきた白髪の増加がまごうことなき加齢のせいであった。悟り、受け入れ、一年が経った。二日酔いは二日どころで済まず、カルビを卒業し、豆腐のポテンシャルの高さを再確認する、夏ーー正々堂々、四十代のセンターを張っている。 体力、容色、やる気、能力、すべてにおいて誤魔化しようなく劣化している。が、唯一、三十代の頃よりも褒められる機会が増えたのがお肌である。肌くらいしか褒めることがなくなったからでは? 皆まで言わんでくださいよ。とはいえ、自分でも以前よりも自分の

          「肌キレイねぇ」の水面下で脚は水を掻いとるんや、のぅ?|絵を描くことで思考する #04

          桃を描いたら成人向けコンテンツに指定された件|絵を描くことで思考する #03

          「で、何を描くか?」という問題である。 「で、何を描くか?」問題はわが日常に唐突に現れ、厳然とそこに在った。 「一対一のレッスンだし、私はLilyさんが描きたいものを描くのがいいと思うんですよ。とはいえ最初だから、大きすぎず、シンプルな形状のものがいいです。たとえば野菜や果実。デラウェアまでいくと複雑で、林檎とか。サイズもそれくらいのものが描きやすいと思います」 前回のプレレッスンの終盤、仙石裕美が私に言った。 描きたいものを描くがよろしいーーこのひと言、たったひと言が

          桃を描いたら成人向けコンテンツに指定された件|絵を描くことで思考する #03

          話そう、私と絵のハナシ|絵を描くことで思考する #02

          裕美師匠との初回レッスンは、プレレッスンのような位置付けだった。今後、じっさいに絵を描いていくにあたって、私がレッスンに求めていることを裕美師匠が時間をかけて引き出してくれるのだ。 その際、「何を習いたいですか?」といった安直な問いは少ない。どちらかといえば、「絵をとおした個人の人生経験」を問うては、前のめりの興味津々で聴いてくれるといった趣で、さながらカウンセリングのセッションだ。 でも、これが、とっても楽しかった。裕美師匠は、もともと鷹揚な人柄で、好奇心旺盛だから、誰

          話そう、私と絵のハナシ|絵を描くことで思考する #02

          聞かせて、あなたと絵のハナシ|Lilyさんの絵画レッスン #01

          Lillyさんのレッスンに際し、実際に制作を始める前に初回ヒアリングを行うことにした。 いつも初回レッスン前にはヒアリングの時間を設けている。制作経験の有無や、どんなタイプの作品が好きで何を習いたいかなどの基本的なことを聞いておくために。 そして今回は、もう少し突っ込んで個人的な美術にまつわる体験や記憶、何をどう感じたかというようなことを書いてもらう質問も盛り込んだ。 制作を始める前に、自身の美術との関わりや体験、感覚といったものに改めて向き合う時間をもってもらいたかっ

          聞かせて、あなたと絵のハナシ|Lilyさんの絵画レッスン #01

          大人になるとは初体験の機会を失うことである|絵を描くことで思考する #01

          30年ぶり、絵を描く目的で鉛筆を手にすることになった。 と言っても、もともと私は「鉛筆超ヘビーユーザー」だ。仕事でゲラに文字を書き入れるときに鉛筆を使っているからだ。BLACKWINGの602が手元にないと、仕事ができない。カポーティもナボコフも愛用した銘品である。『冷血』も『ロリータ』もこの鉛筆から生まれたのかと思うと気分が上がるし、じっさいとびきり書きやすい。家中のシャープペンシルをすべて火に焚べたとて、わが人生にいっぺんの悔いなし、と思い詰めるほどのBLACKWING

          大人になるとは初体験の機会を失うことである|絵を描くことで思考する #01

          豹は虎のイロチってことで|絵を描くことで思考する #00

          「虎がもう、豹になってしもてるやん!」 名古屋城本丸御殿の「竹林豹虎図」のことです。世界観、めっちゃクレイジー。それが最高だった。やあやあ、ここに狩野派あり! キンキラキン(ドヤァ)! という圧にあてられて、刹那、脳がバグを起こしかける。そのなかで得たなけなしの理性的感慨がくだんの言葉です。 徳川家康の命で、江戸期の先端技術を結集して造られたという本丸御殿。入るなり、出端で「竹林豹虎図」を見ることとなります。襖絵です。殿に招かれて尾張藩に来てみたら、「プールつきのマンショ

          豹は虎のイロチってことで|絵を描くことで思考する #00

          東京の書籍編集者とロンドンの画家|Lilyさんの絵画レッスン #00

          ロンドンに移住して半年ちょっと、こちらで第二子が生まれて首もだんだん据わってきた。 以前通りとはまだとてもいかないけれど、制作も少しずつ再開しているし、移住でいったん中断した講師業もまた再開したいな。……そんな風に思っていたところに、編集者のLilyさんから「絵画レッスンを受けてみたい」というお声かけを頂いた。 Lilyさんは、豊富な文学知識とキレッキレに面白い着眼点、そして文学・著者・読者への愛で素晴らしい書籍制作をしている敏腕編集者さんだ。話しているととにかく面白く、

          東京の書籍編集者とロンドンの画家|Lilyさんの絵画レッスン #00