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ミャンマー移民と、現地ワークショップ「作字アート」の可能性
Paint The Worldの田中かのんです。
本日は、来月に控えた3回目のタイでのスタディーツアーの中で開催するワークショップのコラボ対談の記事を掲載します。
ワークショップでは、「MOSAIC The Artworks」と共催という形で「作字アート」「手形アート」を開催します。
ワークショップの内容から、国際協力における活動についてや、今後の活動についてなど幅広くまとめています。
1.Mosaic The Artworksについて
Mosaic The Artworksは、現在代表の鹿島大貴くん(以降鹿島くん)が立ち上げた団体です。
(鹿島くん)
小学生のときにスーダンから来た難民の女の子と出会ったのが国際協力に興味を持ったきっかけです。転校してきてから彼女と仲良くなり、初めてアフリカのことや、スーダンの現状を知りました。しかし、彼女は学校でいじめを受けるようになりました。教師はその子がいじめられているのに気づかず、その現状を見て、「バックグラウンドなど関係なく誰もが受け入れられる教育をつくりたい」「教育全体を変えたい」と強く思うようになりました。
大学に入って、同じ授業の先輩の学生の多くが海外に行っているのを知って、経験値のある人間になりたいなと強く感じるようになりました。
授業で研究していたカンボジアに初めて行って、言語が通じない中でも子どもたちが仲良くしてくれて嬉しかったのを覚えています。その時に、アートやスポーツなどの「共通言語」に興味を持つようになりました。
2回目はカンボジアでのスタディーツアーに参加して、その中でビジネスとしてのカンボジアに対する関わり方を知りました。ボランティアではなかなかやっていけないというのを感じていたからこそ、持続的な関わり方に対して魅力を感じました。
カンボジアの病院で、小児がんの子供たちや手足欠損の子どもたちと絵を描く機会もありました。そこで初めて「共通言語」の中でもアートは特にハンデも上手い下手もなく、すべてが個性として受け入れられ、作品の「よさ」になるということに気付き、アートの魅力を通じて交流だけではなく、その価値を広げていけるような何かを持続的に作っていきたいと感じるようになりました。
こういったことをきっかけに、団体での活動を通じて多くの人にアートの魅力に気づいてもらうきっかけ作りをしています。今はメンバー4人と活動しています。
最近は自分自身でも油絵を始めて、絵心のない自分でも自分を表現できる形としてアートに挑戦していたりもします。
将来的にはビジネスという形で、国際協力とアートを掛け合わせたいと思っています。
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2.作字アートについて
そもそも作字アートとは、単語や文章などの文字をグラフィカルに表現し、文字の造りや形に美しさを見いだすものです。
現地の子どもたちと、意思疎通をとるのは言語的に難しいところがありますが、この作字を通して、交流を図る予定です。
直近でMosaic The Artworksの活動の中で、作字アートに取り組んでいるため、言語が変わっても取り組めるのではないかというところでこの作字アートを現地でのワークショップの内容に選びました。
ツアーの参加者とMosaic The Artworksのメンバーとが、共同で現地の移民学校にてワークショップを開催する予定にしています。
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3.ボランティアとはなにか。
(鹿島くん)
ボランティアは一時的戦力でしかないと思います。もちろん、現地の状況を伝えてそれを発信するからこそ成り立っていることはたくさんあります。私の中ではスタディーツアーは旅行になりかねないとも思っています。というのも、現地の人のためになっているのかどうかは分からないところもあるからです。
日本人のエゴで現地にプランを持って行くのは、現地の人から見たらやらされている感じがありますし、本来は彼らにやりたいことがあって、それをサポートしたり一緒に創っていくのが外部の人間としてのあるべき姿なように思っています。
スタディーツアーも、日常の中の非日常の中にしか過ぎません。自分がやりたいのは、その日常に関わること。現地に行く大学生はこれから色々なキャリアがある中で、国際協力の分野に関わる人は残念ながら結局一握りにしか過ぎません。今自分が休学してこれからの3年間でやろうとしていることは、現地と継続して関わり続けられる方法を見つけることです。正直焦る気持ちも、カンボジアにいるだけなんじゃないかって思う気持ちも出てくるだろうと思いますが。
(田中)
ボランティアは、お金と時間がない限り、継続はできません。
最近人から言われたことで、ずっと自分の中でも腑に落ちてなかったことがあって、それは、今の世の中には、途上国の人をかわいそうだと思ったらいけないみたいな風潮があることです。かわいそうだと思ってはいけないみたいな風潮に対して、1番はじめの初動がかわいそうでもいいんじゃないかと思ったりもしています。これは問題提起みたいな意味で。もちろん、賛否両論あるとは思います。
でも、家族でも友達でもない人のために何かするって、これは難しいことだとも思っています。人は当事者意識を持てないと動けないと思っているので、逆に当事者意識持てたときに始めて動けます。だからこそ、他人と比較してかわいそうと思えたり、自分がこの立場だったら絶対嫌と思えたり、当事者視点で社会に対しての反骨精神のようなものが働いて、取り組めるんだと思っています。もちろん、この人たちがかわいそうだと情けをかけて、上から目線でいるのは、違うとは思いますが。
それよりも、ボランティアでもツアーでも現地に行って、帰った後に、普通に日常生活を送ることがどういうことなのかをもっと考えなければならないと思っています。現地の人たちが時間を作って、お話ししてくれて、自分たちのために協力してくれて。日常に戻って、時間が経てば経つほど、見聞きしたことや、匂いや、味はすぐに忘れてしまいます。残念ながら、この世の中の9割ぐらいが現地に行った後に帰国してこれまでの日常に戻っていってしまうと思っています。それが悪いとか、国際協力に取り組まないとおかしいとかそういうことを言いたいわけではなくて、でも彼らは私たちが衝撃を受けた非日常が日常で、彼らの戻っていく日常が本当にその日常で良いのか。私たちのエゴだから何もしない、彼らが望んでいないから彼らが見たことのない景色であってもその景色の見方も教えないのか、考えてみないといけないと思っています。
使命とか、そんな綺麗な言葉で納められるほど、綺麗に生きてきたわけでも、綺麗な性格をしているわけでも私はありません。しかし、自分が関わりたいと思って、関われる方法を試しているだけなので、自分がこれまでやってきた取り組みに賛否両論あることももちろん承知の上で、それでも行ったら終わりとか、見て終わりとかそんな形にはしたくないなと思っています。
(鹿島くん)
3年って長いようで短い。この3年を休学してカンボジアに渡りたいと思っています。ずっとカンボジアにいるのかどうかは分かりませんが。
でも、第二の家のような場所を創りたいと思っています。何かあったときに立ち寄れる場所です。表現を通して、誰かの新しい人生のきっかけを作るような活動をやっていきたいと思っていて、そのために数多くの人々と出会いたいです。
そういう意味で色々な拠点を持ちながら、これまで出会ってきた人との密な時間も作っていきたいです。
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4.ツアー自体が現地の人たちに何を返せるのか。
(田中)
現地の人たちが言ってくださる、ミャンマーに対して関心を持ってくれるだけで嬉しいとか、わざわざ現地まで来てくれてありがとうとか、その言葉に何か裏があるわけではないと思います。でもそれだけが現地の人に返せている価値だとは思っていないですし、なんならもらっていることの方が圧倒的に多いと思っています。
私が今後考えていきたいなと思っているのは、単純にODAやNPOやNGOの中で回っているお金には限界があって、違う形でこの領域にお金が入ってくる仕組みを作っていったらどうなるのかというところです。
大学生が、本来飲み会や遊びに使われるはずだったお金が、今回はツアーという形で、タイの、地域の宿泊施設に流れて現地の人たちのお給料になるとか、ローカルの個人商店にお金が流れていくとか、そういう仕組みが今後拡大していったときに、誰かの雇用が増えるとか、誰かのお給料が上がるとか、そういう部分での関わりができたらなと思っていたりしています。
それがツアーだけじゃなくて、飲食やアパレルや建築や色々な部分で関われたら、貧困からの脱却や、教育・医療水準の向上に繋がり、ゆくゆくは、生まれた時代や環境に関係なく自分らしく生きられる社会の実現に繋がっていくんじゃないかと仮説ですが思っています。
個人的なエゴになってしまうかもしれませんが、ささいな日常の一部にミャンマーを組み込めるような世界線を作りたいと思っています。
(鹿島くん)
アートとかも、「カンボジアの子どもが描いているから買おう」とかではなくて、手に取った商品がたまたまカンボジアの子どもが描いた絵だったみたいな流れを作れたらなと思ってます。
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5.移民難民について
日本は、島国ということもあり、移民難民の存在がどうしても遠い中で、このツアーやツアーの企画、これからの取り組みの中で、より多くの人に今の現状を届けていきたいと思っています。
(田中)
日本には、たくさんの移民難民の人がいます。2年前くらいに、「難民貴族」という言葉がニュースに出回ったのを覚えているでしょうか。
難民の人の置かれている状況を知っていたり、出会っていたりすれば、そんな言葉を簡単に発することができないんじゃないかと思います。
孤児になってでも他国へ逃れてきている人々や、避難した後に仕事がなくて貧しい生活をしているような人々も世界にはたくさんいます。
そんな状況に色んな意味で立ち会える人を増やすそんな活動を続けていきたいなと思っています。
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