者へ
目を閉じて見た
当たり前に何も見えないけれど
どこかで音は聞こえる
聞き覚えのある虚しさは
どこにも当たらずに
遠ざかってゆく
過去に生きる者へ
その道は苦しかろう
でもなにも悲しいことはない
花が枯葉になるように
時をなぞってゆけばいい
耳を塞いでみた
でも微かに聞こえてしまう
なんの振動だろうかと
聞き覚えのあるこの音は
私の内にある
鼓動の訴えだった
明日を生きる者へ
その道は険しかろう
でもなにも苦しむことはない
与えられた苦行を喜んで
幸へと変えて挑むのみ
音を立てずに生きることの難しさを
何も見ずに死ぬことの切なさを
分かれば全てが溶け合うように
答えがなくても笑えるように
今を生きる者へ
その道は険しかろう
でもなにも苦しむことはない
花が枯葉になるように
時をなぞってゆけばいい