職人目線で解説するレシピに載っていないパン作りのポイント〜捏ね方編 その1〜
パンまるです!
家庭でも簡単にパンが作れるようになった今、パン作りを趣味とする方は多いですね。
自分で捏ねたパンが、焼き上がったときの香りと幸福感は、愛着すら湧いてきます!
しかし、こんな経験ありませんか?
「レシピ通り作ったのにうまくできない!」
「うまく膨らまない!」
これはレシピには載ってない、コツとポイントがあるからなんです!
このポイントを意識するだけで、焼き上がりに大きな差ができます。
なぜコツがレシピに載っていないのか?
上手にできるコツがあるならレシピに載せておいて欲しいですよね。
しかし、レシピに載らないのには理由があります。
それは、『パン作りの理論や知識が曖昧だから』です。
レシピ本を作るとき、多くの人はレシピに後から解説を付けていきます。
初心者でも作れるように、ポイントや注意点を書いていきますよね。
しかしそれは、そのレシピが上手にできるように書いた解説であって、パン作りの本質を解説しているわけではありません。
例でいうと、
「材料を全てボウルに入れたら、粉気がなくなるまで捏ねます。」
と書いてあるレシピがよくあります。
これだけでは、ただ作業の説明をするだけなので、レシピの解説にすぎません。
このような解説を見てパンを作っても、このレシピのパンが作れるようになるだけで、自分でパン作りを応用する力が身につかないのです。
また、季節の変化などで気温などの環境が変わり、レシピのパンがうまく作れないくなってしまった時、原因がわからないので改善することができなくなってしまいます。
応用する力を身につける
「レシピのパンしか作れない。」
「レシピを見ながらじゃないと作れない。」
「レシピのようにうまく作れない。」
こうならないために、応用力を身につけましょう!
これから解説する『レシピに載っていないパン作りのポイント』は、レシピの作業の本質を解説するものです。
作業の意味を解説して理解することで、
『レシピのパンを応用して、オリジナルのパンを作れる!』
『レシピを見なくてもパンが焼ける!』
『レシピ以上のクオリティー!』
ということができるようになります!
どんどんパン作りも楽しくなるでしょう(^^)
それでは、解説していきます!
※全5作がまとまったマガジンもありますので、個別に購入された方は、マガジンと重複して購入しないよう注意してください。バラとマガジンは同じ内容になります。
押さえておきたい基礎用語
パン作りの解説を初めていく前に、重要用語を紹介していきます!
これからパン作りをする上で欠かせない重要なキーワードですので、用語の意味をイメージしながら解説を理解していきましょう!
今回の『捏ね方編』で紹介する基礎用語は、
『グルテン』です。
グルテンというのは小麦特有のタンパク質です。
特徴としては『粘性』と『弾性』と言われるものがあります。
簡単に言えば『粘り』と『弾力』です。
この2つが組み合わさって出来たものがパン生地です。
小麦特有の性質なので、他の穀物類(米粉やそば粉など)では、パン生地のようなふんわりとした伸びる生地は出来ません。米粉パンですら小麦粉に何%か米粉を混ぜているものがほとんどです。
ではパン作りにおいて、グルテンはどのような役割を果たしているのでしょうか?
イメージしていただきたいものは2つです。
1つ目のイメージ『複雑に絡んだ網目構造』
くしゃくしゃに丸めた網をイメージしてください。その網自体がグルテンの構造です。
パン生地を構築する骨格の役割を果たしています。この網目の隙間に『デンプン』と呼ばれる糖質などが入り、網目に膜を張ります。
その膜の中にイースト菌などがアルコールなどのガスを出すことによって、パン生地が風船のように膨らむ仕組みになっています!
つまりパン生地は、
グルテン=網目状の骨格(風船)
デンプン=網目に膜を貼る糖質(風船)
イースト=アルコールなどのガスを出す菌(風船の空気)
の、主に3つの役割から膨らむようになっているんですね!
2つ目のイメージ『ゴム』
グルテンの性質で紹介しました『粘り』と『弾力』。
グルテンとはつまり粘りと弾力のある網状の骨格なのです。
ここでイメージしていただきたいのは、弾力はゴムのような性質だということです。
このゴムの伸び縮みを利用して、生地を長く伸ばしたり、大きく膨らませたりするわけですね!
つまりパン生地作りでグルテンを作るというのは、風船の膜のゴムを作るんだという風にイメージしましょう!
それを踏まえて、パン作りの捏ね方を解説していきます。
グルテンをぜひイメージしてご覧ください!
材料の入れる順番
まずは『材料の入れる順番』です。
材料の入れる順番で大事なのは『材料が均一に合わさる』ということです。
副材料の少ないフランスパン生地(リーンな生地)は特に材料の合わさりを、丁寧に行いましょう!
1.イーストは一部の水(ぬるま湯)で溶かす!
市販で売られているドライイーストの多くは、水に溶かさなくても使えるようになっています。
しかし、家庭でパンを作る場合、生地が冷えてしまったり、乾燥してしまったりと、発酵が低下してしまう原因が多くあります。
そのためイーストをあらかじめぬるま湯で溶かしておくことにより、その後イーストたちが元気に働きやすくなります!
2.塩、砂糖は水に溶かす!
塩や砂糖など、顆粒状の副材料は水に溶かしましょう。
結晶は物質の濃度を極度に高めたものです。
この結晶が直にイーストに触れてしまうと、『浸透圧』の作用で、水分が結晶に移動してしまいます。
特に塩というのは、イーストの働きを抑える効果があるため、水に溶かしてイーストと直接触れないようにします。
よくある例で、「粉の中に塩を混ぜておく」というのがあります。
これでは、「粉の中に塩が結晶のまま散りばめられている状態」です。
材料で意識してもらいたいのは『均一に合わさる』ということです!
結晶のままと水に溶けている状態、どちらが均一に混ざるかというと、もちろん『水に溶けている』方ですよね(^^)
3.水の中へ粉を入れよう!
材料を混ぜ合わせる時、大きいボウルの中へ材料を入れていきます。
ここでの順番は、まず『水などの液体』から入れていきます。
もちろん塩も入っている状態です。(※イーストを溶いた水はまだ入れない。)
ここへ粉を入れます。
その上から、イーストを溶いた水を入れましょう。
今、大きいボウルの中は
底から『塩入りの液体・粉・イーストを溶いた水』
という風になっています。
『なぜ水から入れるのか?』
それは、
『粉が水に浮いている状態の方が、均一に混ざりやすく、剥がれやすい!』からです。
この後生地を混ぜる時に、底に粉があると、底の粉と水分が出会う前に粉に水分が吸収されてしまい、均一に材料が混ざり合いにくいのです。
さらに、底が水分である方が生地がボウルから剥がれやすく、生地へのストレスを減らして混ぜ合わせることができます。
イーストを溶いた水を後から入れたのは、塩水を直接触れ合わないように、粉の壁で防ぐためですね!
4.油脂類を入れるタイミングは?
菓子パンやバターロールなどを作る時、『バター』『マーガリン』『ショートニング』などの材料が出てきます。
レシピによってはこれを『水と合わせる』『粉と合わせる』『後から入れる』など様々です。
どのタイミングが正解なのでしょうか?
答えは『求める食感で使い分けよう!』です!
油脂というのは、
『グルテンの繋がりを妨げる効果』と
『グルテンの伸びを良くする効果』があり、
油脂には2つの真逆のような効果が存在します!
しかしこの効果を理屈を知れば、パンの食感を好みに変えることだってできるんです!
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ここまでで、生地を捏ねる前段階の『材料の扱い方』という観点から、解説させていただきました!
どうでしたか?
今までパン作りをされてきた方でも、なんとなくレシピに書いてある材料を入れてるだけだったり、「混ぜれば一緒!」なんて考えでいた方も多いのではないでしょうか?
『パン作りの9割は生地で決まる!』と私は思います。どんなにキレイに形作っても、どんなに良いオーブンで焼いても、生地の出来が良くないと、良いパンは焼けません。ですので、生地作りの手順1つ1つを、しっかり理解してパン作りをしてみてください!
必ず楽しさがわかってきます(^^)
そのためにはまず、材料のことを良く知りましょう!『材料を状況に合わせて適切に扱うこと』が、良い生地作りに繋がります!
この記事を頭に入れて、今までのレシピ本を読んでみてください。必ず感じ方が変わります。この解説を読むことで、どんなレシピを見ても頭で理解できるので、作業全てが意味のある動きになります。
今までは「どのくらい捏ねればいいのかな?」だったのが、
これからは『あと何分捏ねたら完成だ!』と見極められるようになります。
つまり、基本作業の意味とポイントを理解することで、どんなレシピにも対応できるのです!基本を理解してレシピのパンも作れるようになったら、もうオリジナルレシピが作れます(^^)
この記事が解説している内容は、「パンのレシピや作り方」ではなく、『パン作りの本質』を解説しているものです。
・30回捏ねましょう。
・60分寝かせましょう。
ではなく
・なぜ、そのくらい捏ねるのか?
・なぜ、発酵は60分なのか?
などという『パン作りの本質的なこと』を解説しています。
たくさんのレシピを買い漁るより、まずはこの解説を理解していただくと、これからのパン作りが変わります!
ここから本格的な解説が始まります。
それではご覧ください!
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