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Photo by
noriyukikawanaka
39.重ねる【ショートショート】
また、元カレと重ねてしまった。
いけないと分かってる。でも、忘れられなかった。別れても大好きだった。
新しい彼への罪悪感に苛まれる。でも、重なるたびに更に私の心を支配していく。
「ねえ、離れないでいて。ずっと一緒にいてくれる?」
しっかりと体を重ねながら、彼の気持ちを確かめる。離れてしまうのが怖かった。
「ああ、一緒にいるよ。頼まれたって離れてやらないから」
より一層強く重なった。彼の言葉に甘える自分が嫌になる。やっぱりまだ好きで堪らない。心の中で謝り続けた。
毛布にくるまり沈んでいる私に、彼が声をかけてくれる。
「あいつのこと、忘れられなくてもいいよ。きっと俺が良い思い出にして見せるから」
彼の優しさが嬉しかった。でも、重なってしまう。顔も、雰囲気も、その優しさも。
もういない、元カレに。