見出し画像

26.地球【ショートショート】

 お昼のワイドショー。普段先生と呼ばれる二人が討論を交わしている。
「プラスチックを止めて紙ストローを使うのは必要なことなんです。容器だって直ぐにでもプラスチック製を排除して、海外みたいにマイ容器に量り売りにするとか、化石燃料の使用を少しでも排除しなければ。地球をこれ以上破壊してはいけないでしょう」
「紙ストローの原料は何ですか?木ですよね。何年か前まで森林伐採がどうとか言われてたのはあなただったと記憶してますけども。紙もマイバッグも作るにも処分するにも燃料は使われてますよ。EV車を動かす電気は何から作られてます?代替案も出さずに言うだけなら誰だってできるんですよ」
「太陽光に地熱にバイオマス、人類全体が節電を意識しつつこれらを推進すれば生活に足るはずなんです。もう地球は悲鳴を上げてるんですよ。愛は地球を救うって云うでしょう」
「地球は別に悲鳴を上げてませんよ。たとえ生物が滅びようが、水が完全に干上がろうが、星が爆発したりするわけじゃないんですから。あなた方の言う愛とやらが救いたいのは自分達が快適に過ごせる地球の環境であって、決して地球や他の生物の為じゃない。
 結局、ただの自分可愛さなんですよ」

 後日。学者先生は引っ切り無しにかかってくる電話に辟易しながら、あんなこと言うんじゃなかったと自己嫌悪に陥っていた。
 彼には別に思想とかは何も無い。ただ自己愛の誤魔化しに地球を引き合いに出す言葉が嫌いだっただけだった。
 溜息を吐きながら、電話を取る。
「あ、先生。〇〇党の者です!出馬の件、お考えいただけましたでしょうか?」

いいなと思ったら応援しよう!